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嵐山、わんわんコンペ(ゲンさんコンペ改め) [ウッド]

見事な五月晴れの日、ヘタクソで遠離りがちなゴルフに出かけることになった。
ミナサンがお世話になっているプードル・トリミングの第一人者と言われてる方から「ゲンさんを偲ぶコンペをするから是非参加して」と言われ、それなら、と重い腰を上げたのだ。

「ゲンさん」は家の近くの小さな商店街の中のスナックの店主だった。
人当たりがよくて世話好きなゲンさんは、ふた月に1回地元商店街の人たちを中心にした「ゲンさんコンペ」を主催し、集まった参加費の一部をチャリティーに寄付したりしていた。
私はゴルフが下手なのと、ゲンさんのちょっぴり怪しげ(?)な雰囲気に溶け込めないのと、商店街の方たちの話にうまく加われないのとで、1回しか参加したことがなかったのだが、夫はだいたい参加していて地元との交流にとても意味が有るコンペだった。
クリニックで事務をしていると、近くに住むゲンさんがいつも犬を連れて散歩をしているのが見え、ゲンさんは私を見つけると笑いながらコンペから遠ざかっているのに手を振ってくれた。

そのゲンさんからかなり進んだ脳腫瘍が見つかったと夫の携帯に連絡があって、その後ごく親しい人たちで開かれた「ゲンさんを励ます会」にも所用で参加が叶わぬうち、わずか半年でゲンさんは逝ってしまった。
主催者を失い、ゲンさんコンペも自然消滅したように見えた。

四十九日が過ぎ、残された奥様から丁寧なお手紙をいただいたりして一段落がついた昨今、先ほどのトリミングの大御所が世話人となり、追悼コンペを企画した。

地元商店街のある社長さんが10人乗りのワゴンを出してくれ、もう行きの車中から缶ビールの栓がぽんぽん開けられて、久しぶりに集うみんなが浮き浮きしているのが伺えた。
顔なじみのトリマーさんが発起人だったので私もすんなりその中に入ることができ、何となく敬遠していた商店街のおじさんたちは話してみればみんなとても世話好きで苦労を厭わない人たちで、車を出して自分で運転してくれたくだんの社長さんをはじめ、重いゴルフバッグをさっさと出し入れしてくれたり、会とゴルフ場側の連絡に走り回ったり、ほんとにそれぞれがコンペを維持するために率先して働いているという感じだった。
ゲンさんが作ったコミュニティーってこういうものなんだ、と、今更ながら気がついた。

滅多に行かないゴルフだが、5月だけは新緑のコースを歩きたくて出かける。
この日もまさにそんな日であった。
踏みしめるラフの上に白いジャスミンのような小花が一面に散っているところが数カ所あり、見上げると大きな木にいっぱいそのかわいらしい花が垂れ下がっていて、甘い香りを漂わせていた。
キャディさんに聞くと「エゴノキです」との返事。
エゴノキ科のEOがあったなあと、クライアントさんに人気のベンゾイン(Benzoin:Styrax benzoin)を思い出した。

運動不足の毎日ゆえ、ゴルフをやった次の日には必ず筋肉痛である。
それを緩和するには当日の夜に、ラヴェンダーをたっぷり溶かし込んだお風呂にじっくり入る。
筋肉の緊張がじわじわとほぐれていくのが分かり、次の日にっちもさっちもいかないような筋肉痛からは逃れられる。
その晩はゴルフコースのエゴノキを思い出してラヴェンダーにベンゾインをプラス、少しぬるめのお風呂にゆっくりと浸かってぐっすりと寝た。

ゲンさん、見てますか。
あなたが作ったコミュニティーはこうして維持されています。
ゲンさんがいる間に、自分の偏見を捨てることができたら、私はきっともっと楽しむことができたんですね。
でもそんな私にゲンさんは散歩道から手を振ってくれていました。

ゲンさんコンペは、その日の発起人を記念して「わんわんコンペ」と改名された。
ゲンさんが作り上げたこの集いは、こうしてこの先も引き継がれることになった。


















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