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軽井沢、待っていてくれるもの [スパイス]

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久しぶりに夫がハンドルを握る。
きゃー!
リタイア層向けの車のCFみたい。

フロントガラスの向こうに、大きな大きな夕陽が浮かんでいる。
土曜の診療を終え、ミナサン(トイプー3匹)とセーターをがーっと積んで、高速の北西への流れに合流する。

またあそこへ行けるという気持ちは、あったかい紅茶を冷えた身体に流し込む感覚に似ている。
毎年山荘を開ける日はその感覚を楽しむ。

「山荘があって本当によかったと思うよ」
夫がハンドルを握りながらつぶやく。

命に向き合う張りつめた毎日である。
私たちには贅沢だと思いながらも、7年前、高速を使って1時間で行ける軽井沢に小さな山荘を建てたのは、そんな緊張の糸を緩める場所が必要になる日が必ず来る予感がしたからだ。

その夫は夏のゴルフに使うくらいで、私の方が犬や友達と過ごしたり、一人でリフレッシュするのにもっぱら使っていたが、ここ1年ほど彼がゴルフもせずこうしてただそこにいる時間を楽しむだけに訪れる日が増えた。

山荘は厳しい冬を一人で耐え、静かに我々を迎えてくれる。
ようやく自分が本来の目的を果たす時期が来たことを悟っている。

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去年の燃え残りのアロマキャンドルに灯を入れると、カンファー(Camphor:Cinumomum camphora)とクローブ(Clove:Engenia caryophyllata)の心地よい刺激が、たちまち山荘中に満ちる。

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山荘で待っていてくれるものたちは、静かに降り積もったほこりを馴染ませて、深みのある味を醸し出している。

着いてすぐ馴染みの店に食事に行く。
白ワインの杯を重ね、饒舌。
ここへ来るとこうして息子達の将来や思い出を話して飽きることが無い。

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息子達が育つ過程でここへ回帰する体験をさせたかったね、とか。
あおちゃん(お孫ちゃん)はここで夏の思い出を作れるかな、とか。

他愛のない会話が続く。

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