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成城、キフィ [ブレンド・プロダクツ]

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フラを辞めたら、それまで練習に当てていた夜の時間がぽっかり空いて、久々にインテリジェンス小説なんぞを一気読みしてしまう。

手嶋龍一氏は9.11時のNHKワシントン支局長。
前作『ウルトラ・ダラー』もびっくらこいたが、今度は、ナチスの迫害下で、杉原千畝に査証印を与えられて命を救われたユダヤ人の子孫が、世界金融市場をインテリジェンス(諜報)によって動かすという、遠くて近いような、どこまでが事実でどこからがフィクションなのか、ボーダーラインを彷徨っているうちに読み終わってしまうようなストーリーである。

逃避行の最終目的地をアメリカとするなら、なぜ杉原は(あるいはユダヤ人は)ソ連のウラジオストックから日本を経由する、いかにも大変な行程を選んだのだろうか。
逆に回って大西洋を横断したほうが手っとり早いんじゃないの?

・・・・というのはむろん歴史の事情を知らないド素人が、読んでいる間中、手放すことができなかった疑問である。

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次に手をつけたのは、『香料文化誌―香りの謎と魅力―』(C.J.Sトンプソン著/八坂書房)。

めくるめく香りの歴史に埋もれているさなかに、タイムリーなワークショップがあり、成城のLSA(London School of Aromtherapy Japan)に出かける。

テーマはまさにその『香料の歴史と合成香料』。

香料は紀元前3000年の頃から、主に宗教、美容、医療の分野で、人の生活と深くかかわってきた。
エジプトでミイラを保存するのに使われたというミルラ(Myrhh:Commiphora myrrha)をはじめとして、香料使用の痕跡はさまざまな壁画や文献に見ることができる。

香料は珍重され、金や宝石のように錬金術の対象にもなり、権力の象徴ともなる。
香粧品に入れ込み過ぎて、香木を積んだ上に横たわり、その香煙で窒息死してしまった王様までいるんだから、まさにどんだけぇ?である。

香料の歴史を紐解いた時に、いつもすごいなあと思うのは、クレオパトラと私たちが同じ香料を手にすることができるという事実である。

現代医学の医薬は、発売されて10年もたてば新薬が生まれ、古い薬はあっという間に姿を消してしまう。
しかし、香料はずっとずっと姿を変えずに、人間の歴史の底に横たわっているのだ。

今我々が手にしている小ビンの中のもので、クレオパトラはあの独特のアイラインを描き、ハンガリー王女エリザベートは若返り水を作り、英国王室は黒死病の感染を食い止めたのだ。

なんかすごくないですか?

まあ、何千年も形を変えないことが、医療の分野では西洋医学に追い抜かれた所以ではあるんだが。

さらにすごいのは、人間が19世紀になって、人工で香りをつくりだしてしまったことだ。
これによって、人類は自然界に存在しない香りをも手に入れ、さまざまな名作といわれる香水を生み、現代では日常生活のあらゆるものに好みの香りをつけることができる。

そこにヒット商品というものが生産され、それはまた新しい錬金術を生んでいるんである。

なんかすごくないですか?

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帰り際にバーグ校長がご自分で作ったキフィのボールをくださる。
(見た目、びみょー)

キフィ(Kyphi)とは、古代エジプトで燻蒸や屍体防腐処理に用いられた有名な香料である。

そのレシピはいくつか見つかっており、エジプトのみならず、ディオスコリデスやガレノスなどのギリシア・ローマ時代の賢人らがそれぞれの処方を残している。

バーグ校長の記載のレシピは、フランキンセンス(Frankincense:Boswellia carterii)、ミルラ、オリスルート(Orris root:Iris germanica var.florentina)、クローブ(Clove:Eugenia aromatica)、シナモン(Cinnamon:Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント(Peppermint:Mentha piperita)、シダーウッド(Cederwood:Cedrus atlantica)、カルダモン(Cardamon:Elettaria cardamomum)、レモングラス(Lemongrass:Cymbopogon citratus)、ジュニパーベリー(Juniper berry:Juniperus communis)。
これらの香料を細かく砕き、ローズウッドオイルか、赤ワインに浸したレーズンと蜂蜜を加えて混ぜ、まとめて乾燥させる。
祭典の時に焚かれたり、虫除け、入眠に用いられる。

なんて、贅沢な!!

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チュニジアを旅した知人からもらったサハラ砂漠の砂。

キフィを一粒握りしめれば、北アフリカと地中海をめぐる国々の古の文化に、思いは旅立つ。

バーグ校長のブログに、キフィ作りの様子が書かれているので、是非。
http://lsajapan.exblog.jp/






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ゆずぽんママ

こんばんは~♫
行ったのね? 香料セミナー。
私も行きたかったのですが、この日は何ヶ月も前から
エントリーしていた湘南国際マラソン当日だったのです。
って、私は10キロ参加でしたが…。

キフィーはクリスマスパーティのときにいただきました。
もったいなくて…まだ焚いてないのですが、どんな感じ?
心にゆとりのあるときに、古代にタイムトリップしたいと思います♫
by ゆずぽんママ (2011-01-27 00:20) 

mana

ゆずぽんママさん

行ってきましたよー、セミナー。
ものすごく面白かったですよ。
キフィ、私ももったいなくてまだ焚いていません。

それから今日、例の取材が終わりました。
何だか、ライターさんの意図に沿うような受け答えが出来なくて申し訳なかったです。

使えなかったら遠慮なくボツにしてくださいとお伝え下さい。

それから湘南マラソンでの惨事も聞きましたけど・・・大丈夫ですか?
by mana (2011-01-27 21:16) 

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