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巣鴨、フラを止める日 [フレグランス・ストーリー]

7年間踊ってきたフラを止める日、東京は季節外れの土砂降りだった。

いつからだろう。
フラを踊ることに心が向かわなくなったのは。

去年はホイケがあったけど、それが終わってからはゴールが見えなくなっていたと思う。

この年で勤しむ習い事は、明確な目標が無くてもいいんだと思っていた。
これからプロになるわけでも、華やかなステージに立つわけでもない。

一人で技を磨くこと、それに専念するだけでいいと思っていた。
でも・・・

84歳になる先生が大好きで、母が亡くなってからは特に母親を慕うような気持ちで、毎週先生と二人で巣鴨の古びたスタジオに立つことが楽しかった。
踊るよりも世間話をしている時間の方が長いこともあった。
それも楽しかった。
私がフラを止めるのは、先生がフラを止めるとおっしゃる時。
そう信じて疑わなかった。

しかし、その時間は楽しくても、そこへ向かうためには毎日練習のために踊らなければならない。
他にやることが増えるに連れて、その時間を捻出すること、先生の期待を裏切らないために踊りを仕上げていくことが徐々に重荷になり始めた。

そこに何かモチベーションを保つためのゴールが見えていたなら乗り切れたのかも知れない。
先生と深く関われて他人との擦れ合いが無くてすごく私にとっては合っていると思ったマンツーマンのレッスンは、他の生徒さんとの切磋琢磨も無いので、自分がどの辺りの位置にいるのかが分かりにくく、完全に立ち位置を失ってしまった。

先月1ヶ月レッスンを休ませてもらい考えたが、またどうしても踊りたいという気持ちが湧いてくることは無く、犬が大好きな先生にプードルの飾りの付いたヘアアクセサリーを買い、ご挨拶に伺う。

先生に出会えて私のフラは幸せだったと思う。

IMG_1742.jpg




IMG_0310.jpg
ラオスはモン族のビンテージスカート、額装に成功。

10月に持ち帰って以来、これをどう保存するか迷ったけど、圧倒的な仕事量がこれはアートの域に達していると思ったので、額装しようと決める。

「あ、そういうの、できません」
お茶の水駅前の有名な額屋は、電話で事情を説明しただけで実物を見もせずけんもほろろの扱い。

結局知り合いのつてを辿った額装屋さんNewton http://newton-frames.comに相談すると、即座に引き受けてくれた。

何しろ、がっしりした原始的な麻布数メートルを藍染めにし、プリーツを畳み、さらに別布をアプリケしたり刺繍をしたりしたもので、重さ5キロはあろうかというシロモノである。

これを広げた状態で垂直に見せるためには、台座にひたすら細かく縫い留めていく作業が必要になる。
その作業に数ヶ月、ようやく額が出来上がってきた。
台座に縫い付ける役目を果たした若い女の子のスタッフも付いてきて、壁にかけられた額を見て写真を撮り、満足そうである。

IMG_0327.jpg
共に海を渡ってきた同じモン族のウサギたちと。

私の中でフラは完結してしまったけれど、旅は発展途上。

ここからは、自分の人生をどう仕上げていくかの最後のdecade。
体力と経済力を考えたらそう思う。

何を選び、何を整理するか。
リセットの時かも知れない。






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naoko

私がこのブログに辿り着いたきっかけはフラでした。
五十を目前にフラガールの映画を見て一難発起でフラを始めたばかりの頃、フラのレッスン用にリボンレイを作ろうと検索をかけたら、manaさんが夜鍋してレイを編んだという生地にヒットしたのがきっかけでした。

それ以来隠れ大ファンで愛読させていただいておりました。
宮崎県の片田舎在住の者には想像もつかない上質で洗練された世界をネットの上でも垣間見ることができて、いつも更新を楽しみにしています。
フラをやめてしまわれるのはとても残念ですが、これからもmanaさんの飽くなきチャレンジに同世代のものとして勇気をいただきたいと思っています。



by naoko (2015-01-23 11:58) 

mana

naokoさん、コメントありがとうございます。

ああ、そうだった、と。
フラの世界が光り輝いているような、リボンレイを一晩中編んだのは、そんな時でもありました。
自分でも忘れていた愛おしい日々を、思いがけずnaokoさんのコメントで思い出すことが出来ました。ありがとうございます。

最初オフィシャルブログで体裁を気にして書いていたこのブログも8年目に入り、今では人生を脳裏に焼き付けるような気持ちでアップロードするようになりました。
naokoさんのような遠くにお住まいの何人かの方とも、このブログを通じて知り合い、素敵なお付き合いをさせて頂いています。

図らずも訪れるこのような素晴らしい出会いを大切に、これからも出来る限り書き綴っていきたいと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by mana (2015-01-23 20:33) 

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