軽井沢、S, M, L, XL+ 〜現代都市をめぐるエッセイ〜 [マイハーベスト]
エアコン要らずの一日。
ソファに身体を横たえたまま、読書とDVD鑑賞に時間をただただ費やす。
夏は基礎代謝が落ちるうえ、エアコンの人工的な冷却で自律神経と食欲中枢も鈍化し、体重が毎年2kg増となるワタクシ。
緊急避難的に、夫より一足先にワンコ達と碓氷峠を越えてきたんである。
あ〜〜、夏休み!
性分として5日以上の休みがあれば列島脱出を図るのだが、前述のとおり、今年は長男のナイジェリア派遣騒動で出鼻をくじかれ、軽井沢山荘ライフに甘んじる。
夫も仕事が終わり次第、新幹線で合流予定である。
夫合流前に、別荘友達と極上赤ワイン&赤身肉ディナー。
究極の食べるエイジングと心得る。
コールハースを読破。
なかなか煩雑な日常では向き合えない相手である。
「S,M,L,XL+ 〜現代都市をめぐるエッセイ〜」
(レム・コールハース著/太田佳代子・渡辺佐智江訳/筑摩書房)
1995年出版の1300ページの同題現代都市論の巨作(全編邦訳は未出版)からエッセイを抽出し、その後の問題作10篇を加えた、この道の研究者達には期待の邦訳版である。
一般素人の私がこの本に挑んだのは、ベトナムで建築に携わっている次男の直属の日本人上司であったI 氏の原著(英文)分析論をネットで読んだことがきっかけだった。
現在はベトナムを離れられたが、以前ホーチミン市でご飯をご一緒した氏の穏やかで真摯な建築への姿勢にうたれ、息子もこの人についているなら大丈夫、と確信したことを思い出す。
個々のアイデンティティを抹殺する犠牲を払って成立する、現代の均一化された都市、特にアジア諸国において顕著なジェネリック・シティという発想。
我が国の一般市民には医薬品の装飾語としてしか馴染みの無いジェネリックという言葉を、特許や知的所有権の関わらない領域に移動するというそのままの意味で都市論に位置づけ、それぞれの都市に関わる所感を綴りながらこのエッセイ集は展開する。
技術の進歩に従って垂直に際限なく積み上げられていく建築物の集積たる都市の均質化の功罪は、我々が今後一度は我が身に問うてみるべき課題だろう。
タイトルの「S, M, L, XL」は言うまでもなく、建築物の物理的サイズへの言及である。
超高層ビルに代表される巨大建築「ビッグネス」。
周囲を睥睨する自己本位なビッグネスが集積されたジェネリック・シティは、これまでの摩天楼街と何が違うか。
そして著者が懸念する現代のこの都市化が建築に与えるネガティブな衝動とは。
雨のそぼ降る軽井沢の白いソファの上で、ひがな一日、建築論と格闘するのも、またよしとする。
2015-08-14 21:36
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