SSブログ

自宅、錯乱のニューヨーク [マイハーベスト]

また面白い本に出会ってしまった。
IMG_7456.JPG

本は溜まっていくので、買わないで借りるという賢い選択をする人も沢山いる中、私はどうしても本の中に読みながら自分が考えたこと、大げさにいえば人生のかけらを残したいから、必ず買って「いいぞ!」と思うところに付箋という足跡を残す。
IMG_7449.jpg

そんな感じで1週間に1〜2冊は読んでいると思うので、本棚はいくつあっても足りず、15~6年前に自宅を鉄筋コンクリート造りにしたのは正解だって気がする。
でなきゃ、とっくに床が抜けてたわ・・・
IMG_7459.JPG

夫が当直なら、夜通しひとりフェスティバル。
IMG_7436.jpg

部屋とYシャツとなんとかと私、なんていうファンシーな夢芝居じゃない。

ソファと酒と本と音楽と私。
男前な真剣勝負だよ。
IMG_7446.jpg

人生はなんて楽しいんだろう、と、こんな時思う。

60年近くもでこぼこ道を歩いてきたのも、こんなご褒美を貰うためだったんだよね。
世間知らずの狭い道だったけど、それが本の中にこんなに多くの見知らぬ世界を今のために残してくれたんだと思うと、心底幸せだ。
IMG_7419.jpg



その夜、山中千尋のSyncopation Hazardに心を乗せてNYへ飛ぶ。

51KJ8YF06BL._SX334_BO1,204,203,200_.jpg
「錯乱のニューヨーク」(レム・コールハース著/鈴木圭介訳/ちくま学芸文庫)


多分今や世界で最も多くの芸術や政治、経済の根拠となり、世界で最も知名度の高い島であり、多くの表現者達が、筆で、画像で、音楽で描いてきたマンハッタン島。
まやかしの世紀の取引からおよそ400年経ってなお、その島の特異性は世界中の目を惹付けてやまない。

全く相反する我々夫婦の旅の趣向の唯一の共通項であるニューヨークを(旅ガイドではなく)解析した本としては、2年前読んだ「ニューヨーク」(亀井俊介著/岩波書店)が秀逸だった。
http://patchouli.blog.so-net.ne.jp/2013-03-04

最南端のバッテリーパークから開拓の歴史と共に北上していく、その町並みの解説がたまらなく新鮮でのめり込んだ。

今度は前述の「S, M, L, XL」の著者、コールハースがその前段階として、この複雑なメトロポリスを都市計画の視点から解析している。
こっちを先に読むべきだったわ。

マンハッタン島はなぜあのように高層ビルが立ち並ぶようになったのか。
この原点を今まで自分が考えたことが無かったっていう事実が、まず驚愕だ。

1626年、オランダ総督ペーテル・ミニュイが24ドルでそこに住んでもいなかった「インディアン」と称する原住民からマンハッタン島を買い取ってから180年後の1807年、ようやくマンハッタン開発デザイン委員会のようなものが発足する。
委員達は、南北に走る12本のアヴェニュー(街)と155本のストリート(丁目)で街を直角に区切り、市内を13×156=2028個の単純なブロックに分割してしまう。

このマトリックスは、その後開発の段階で予想される島の将来の活動をすべて絡めとり、このグリッドによってマンハッタンの発展は方向性を決定づけられたのである。

つまり一区画が、明確にすべて同じ底面積を決められている以上、「発展」は上へ伸びるしか方向が無かったのである。

この方向性にある時は従い、ある時は何とか抗おうとしながら、世界中の建築家や都市構想家がマンハッタンのオペレーションに耽溺していく。

一定の制限を設けられた条件下のデザインが、まったく自由に創作するものより研ぎ澄まされて鋭い光を放つように、マンハッタンのグリッドはそのどうしようもない固定性で、建築家たちの感性と冒険心を磨き上げたようだ。

神にも届こうかという直立の摩天楼はビルディングと呼ばれるようになり、外壁を隔てて、外の世界と隔絶された施設内の活動を複数内包するようになり、相互に排他的な関係になる立場間の折り合いのつかないくいちがいを宙づりにする都市論、マンハッタニズムを生み出す。

2年前、ひとり自分の脚で島を縦走して「付箋を貼って」きたシンボリックなビルディングのそれぞれの難産ぶりを、このマンハッタニズムの目を通して考えるのは、とても楽しい。

これを読んでしまうと、新国立競技場問題などは(それはそれで深刻ではあるが)私のグラスの中のピノ・ノワールの量くらいかも知れないなあ、なんて。

IMG_7444.jpg









nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。