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ブルノ、国境モノクローム [セルフィッシュ・ジャーニー]

ブルノ(Brno)は雪であった。


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ウィーンでニューイヤーコンサートを楽しんだ後、帰国までの短い時間を使って、建築家の次男と国境を越えて、ミース・ファンデルローエの名作、トゥーゲントハット邸(Villa Tugendhat: http://www.tugendhat.eu)を観に行く。
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華やかなウィーンからプライベートカーを雇って僅か2時間のドライブで、新年の人通りのほとんど無いモノクロームな街に着く。
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オーストリア、チェコ共和国両国ともシェンゲン条約の加盟国なので、国境はパスポートコントロール無しに通過できる。
事前に、念のため50000ドル以上の旅行保険の証明書を携えるようにとの指示があったが、今回はその提示も必要なし。
高速に乗れば、凍てついた荒野を車窓に眺めているうちに、知らぬ間にボーダーをまたいでいる。


静寂に包まれたブルノの街を見下ろす緩やかなダウンヒルに、端正な3層を溶け込ませた世界遺産の館はある。
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うっすらと降った雪が、どこか物悲しいクラシカルな街に風情を添える。
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前日の黄金のホールでのコンサートや観光客で賑わうウィーンのきらびやかさとは、なんと対照的な光景だろうか。

道路に面しているエントランスが最上階。
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あたりは鎌倉山に似た地形と風情の高級邸宅街。
地上レベルにはシンプルな単層のエントランスしか無いため、その南面の広大な傾斜地にこれほどのスケールの住宅が存在していることに意表を突かれる。


しかし世に豪邸は数あれど、90年前の仕事として、ここまでデザインを追求し、ディティールにこだわり抜いて、約1000㎡(!)の総床面積に現代並みの機能性を備えた完璧な個人住宅を私は他に知らない。
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建具はすべてブラジルや南アメリカの高価なローズウッドやゼブラウッドで、4m近い天井高と同じサイズである。
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ゲストルームにはサニタリースペースを見せない配慮も。

家具はもちろん、水栓、照明のスイッチまでミースのオリジナルデザイン。
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ミースの代名詞のような十字断面のクロームメッキ柱。
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建築を志す者なら誰でも知っているその断面のデザイン。
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特筆すべきはまるで007の邸宅のようなサプライズのファシリティーである。

ダウンヒルが見渡せるリビング全面の大窓は、スイッチ一つで巨大なガラスが下降し、床のレベルに吸い込まれる。
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300㎡という大空間が一気にアウトドアと一体化する。

この仕掛けや空調、給水システムはすべて最下層の機械室でコントロールされる。

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次男たっての希望に従って、素晴らしい建築を見たと思う。
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元旦まで母親のイヴェントに付き合わされた次男は、この最終日自分の領域を最後まで貪欲に主張して、ディナーはフランスの巨匠ジャン・ヌーヴェルデザインのソフィテル・ヴィエナへ。
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リングの北側の川沿いにそびえるブッ飛んだデザインは、ウィーンの新しい顔を象徴するかのようだ。
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わずか数時間前にいた無彩色のブルノから一転して、極彩色のテキスタイルの幻想に包まれる。
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バスルーム。
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ウィーンの建築散歩は楽しい。

夜のウィーンは凍てつく氷点下10℃。
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散歩したいのはやまやまだが、30分以上歩いていると凍死しそうだ。
温かい食べ物を売る露店の前で足が止まる。
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ウィーン分離派のオットー・ワーグナー作の郵便局。
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威風堂々。

今回、3度目の訪ウィーンにてようやく出会えたベートーベン・フリーズ擁するゼセッションの、ヨーゼフ・オルブリヒと同派。
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連綿と続く歴史の埃の中に燦然と輝く、建築という足跡。

コンパクトな国境越えの移動で、ヨーロッパという文化の感触を音楽ではなく、今度は建築という糸口から手探る。
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