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軽井沢、ターミナルから荒れ地へ [マイハーベスト]

アウトドア用ソファというアイテムの「あり得なさ」に惹かれる。


本来の雨風と戦うべき環境とは相容れないはずの、ゆったりと身を沈めることのできるクッション性。
ベンチやデッキチェアなど防水の構造体だけの最小限の屋外家具と違って、なんて言ったって居住性がアウトドアに出てきたのだ。
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高温多湿の日本ではなかなかお目にかかれなかったこのアイテムは、最近ホテルのデッキバーなどで見かけるようになり、欲しい欲しいと思っておりましたので・・

時期、まさに戸外で飲むアイス・シャンパンの季節。
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この夏、我が猫の額的ベランダにもデッキソファを。
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都会の真ん中のマンションながら、一部屋増えた気分。

主に東南アジアでビニールを編んで制作され、数万円という見た目にしては断然なお手頃価格も魅力だ。



夏本番を目前に軽井沢山荘の改装が急ピッチで進んでいる。
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40畳近いリビングを防音壁にリノベートし、木製の窓枠に変える。
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心の中ではここでドラムを叩きたいという密かな企みがある。

改装というよりはほぼ作り直しである。
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夏休みに入った孫達が完成を待ちわびている。

竣工を急いで、軽井沢詣でが続いている。
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GO WEST。




アメリカの歴史はひたすら西を目指す旅そのものでもあり、アメリカ文学もまたそれを汲んだロードナラティヴを核としてきた。
やがてその移動は大陸西端のロスアンゼルスでどん詰まり、潮流が変わった。

・・・ということを文学面から面白解析しようじゃないか、という本である。

久しぶりにどストライクの一冊、読んでいる間中極楽であった。

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「ターミナルから荒れ地へ ー「アメリカ」なき時代のアメリカ文学ー」(藤井光/中央公論社)


著者は精鋭の若いアメリカ文学の翻訳者。
大学で教鞭もとる。

古色蒼然とした欧州の国々をさておき、若いアメリカという国とそこに蠢く新しい文学に、著者はみずみずしいカジュアルな感性で切り込んでいく。
しかも新しいアメリカ文学のナビゲートも買って出る。
新聞でも週刊誌でも真っ先に書籍紹介という宝の山に飛びつく私には、面白くなかろうはずがない。


著書は大きく3部に分かれている。

初めに、強いアメリカの象徴たる個人主義や開拓思想を根底に発達した従来のアメリカ文学の近年の変化傾向を、グローバル化というトレンドの下に無国籍、多国籍化するボーダレスな人の「移動」に重ね合わせて解説する。
不特定多数の異国の人々が世界共通語とされた英語を媒体としながら行き交うターミナル。
アメリカ人によって個人対社会のアメリカを描いてきたアメリカ文学は今、英語で表現する作家の国籍を問わないターミナルの時代を疾走している。

さらに英語が母国語でない作家が、英語で自国の思想や社会を表現する時、彼らは英語らしく仕上げることを目標としない。
彼らはアメリカに密着するのではなく、無国籍な混沌をポップな幻想で描いていく。

異国の感覚が加味された英語は、英語の退化だろうか。
否。英語は美しく変化していくのだと。

アメリカ文学に属する(英語でアメリカで書かれたものであるから)これら異端児の文学を、著者は「荒れ地」と呼ぶ。
自分も4年前、そうとは知らずに読んだ一冊もあった。
http://patchouli.blog.so-net.ne.jp/2012-05-12


2部は、著者自身の翻訳や教壇における、言ってみれば抱腹絶倒の苦労話である。
ここはもう著者の本領発揮、様々な近代アメリカ文学を取り上げながら、ユーモアとエスプリの利いた面白解説が繰り広げられる。
特に英語を日本語に訳す時の彼のセンスが秀逸だ。
是非教えを乞いたいと思わせる。



3部はアメリカを語るには決して外すことのできない戦争、テロへの対峙に文学がどう関わるかというややシリアスな断層を、銃を持って彷徨い歩く甥(国家としてのアメリカ)と、その姿を見てどこでヤツは道を誤ったんだろうと心痛める伯父(アメリカ文学)、という構図で分かり易く解析する。

望みさえすればその航空力を持って一つの国を焼け野原にも出来る「奴らを石器時代へ戻せ」という彼の国の傲慢を、文学は苦々しく、しかし冷静に諭してきたのだ。


折しも大統領選ヒートアップ中。
トランプの振り上げた拳の先のアメリカ至上主義は、少なくとも近代アメリカ文学の意中には無い。

いつも文学論を読んで思うのは、文学が先か、時代が先か、という鶏と卵である。
当然時代があって文学が生まれるのだろうが、これからのボーダレスな社会では、そしてこの混沌のエネルギッシュな国では、それが覆るかも知れないとも思える。

アメリカ文化と文学の魅力を十二分に伝えるこの本をもって、2016年上半期ベストブック極楽賞を授与したい(拍手)


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