パロ、虎の巣(事件その10〜11) [セルフィッシュ・ジャーニー]
若さを羨むことは最近無くなった。
古い蛇ほど柄がいい。
名言だと思う。
しかし一旦旅に出ると、体力面はともかく、その国の懐にぐんぐん入っていこうとする息子達の好奇心と順応性には舌を巻く。
そこは羨ましいと心底思う。
遭難一歩手前の山越えを終えたばかりというのに、次クニは立ち寄ったホテルのロビーでエスニックインスツルメントバンドHAPPINESS(仮称)結成中である。
やけに楽しそうである。
早く酒飲んで休みたいなんて思っている古い蛇は置いていかれるのである。
今回最後のAmankora、国際空港のあるパロのそれは部屋数27、the largest of all of Amankora。
針葉樹林の中に石畳を配し、ひと際洗練された高原のリゾート感を盛り上げる。
個室の間取りはプナカとほぼ一緒の、ケリー・ヒルデザイン。
メインダイニングもどこかイタリアンレストラン風である。
そこで食べる、だし汁をかけたBhutanese Inaniwa Noodles。
私だったらせめてホタテじゃなく鯛をのせタイ。
勉強になりました。
薪と松ぼっくりを美しく組み合わせたシグネチャー的ストーブが再び登場。
ああ、高地ブータンにまた抱かれるのだなあと思う。
パロではこの旅最大の目玉、Tiger's Nest、タクツァン僧院へのトレッキングが持ち受ける。
人間の足で近づける道があるとは到底思えない屏風のように垂直に切り立った崖に、まるで空から舞い降りて来たように建つこの僧院を見て、比較的歩くのが好きで丈夫な自分の足に、初めて不安を覚える。
しかし、為せばなる、為さねばならぬ何事も。
そう言い聞かせて育ててきた息子の前で弱音は吐けない。
僧院は標高3200m、登山口は2100m。
途中、標高2800mの唯一のレストハウスが、高所への体調を整える場所でもあり、登山リタイア組の待ちぼうけ場所でもある。
おふくろ、そこで待っててもいいよ、と息子は予め労り(=憐れみ)の言葉をかけてくれるも、憐れまれれば憐れまれるほど、古い蛇の柄は鮮やかさを増すのを知らないな。
行くぞ。
元ガールスカウトの底力を見せてやる。
(何十年前の話だか・・)
登山口から見上げる僧院は雲の上である。
雲上への階(きざはし)を登れるなら、普段山登りの機会など無い自分にはいい還暦記念になるだろう。
道は整備されておらず、雨季のこの時期は泥だらけでかなり滑り易い。
朝8時に登り始めた時に着込んでいたダウンも、ほどなく脱いでひたすら前へ、前へ。
後ろを振り向いたら心が萎えそうである。
2時間近く登って、一面赤土と針葉樹の緑の中に、タルチョ(5色旗。経文が版木で印刷され、5種類の色はそれぞれに天、風、火、水、地を表す。天に近い高所まで持っていき、張り巡らすと願いが叶うとされている)が見え出し、唯一のレストハウスに到着。
日本なら救護所でも設けられるところだろう。
結構な標高なので、軽装で登る観光客の中には体調を崩す人もいるだろうに、そういうサポート体制はほとんど整っておらず、自己責任となる可能性が大。
まだ3人余裕の表情である。
ここで甘い紅茶(ガシャ)を飲み、さらに上へ。
レースのように垂れ下がる羊歯(?)が美しい。
ようやく仰ぎ見るだけであった僧院が目線よりやや上までくる高度まで登ってくる。
嬉しがってるけど、此処からがキツい。
岩肌に張り付くように儲けられた階段を登り下る。
(せっかく登ってきたのに下るって・・・・)
ただのスロープより階段の分、足を数10センチ上げなきゃならない。
その数10センチがもう出来ない。
3000m超の標高で身体能力もかなり奪われていると感じる。
ここで…
事件その10:カラン、カラーン…
ダショーが3000mの谷底にカメラのキャップを落っことす。
「いい音がしました」
さすがダショー。
精彩放つコメントである。
この谷底に落っこちてるカメラのキャップやiPhoneの類い、きっと数知れず。
何千というFind iPhoneのアイコンが奈落の底を指すであろう。
しかし、遂にコンプリーテッド!!
……
(下りるのはさらに辛かった…)
下り道で、我々もタルチョを張り巡らし、それぞれの願いを唱える。
次クニの願いは、そして私の思いとは。
最後の夜、ディナーにはナショナルコスチュームを着てダイニングへ、とのホテルのお計らいで、衣装が部屋に用意される。
分からないのでテキトーに着てダイニングへ行くと、スタッフがわらわらと寄ってきてお色直しを。
次クニはまるでお内裏様とお雛様。
(……笑えよ…)
ブータン&Amankora、素晴らしい。
出立の朝にはご祈祷まで授けてくださった。
事件その11:サングラスかけた坊さんのご祈祷(意味は分からない)がツボにはまって笑いを必死に堪えていたら、横でダショーも打ち震えていた…
バチあたりな二人である。
Wonderful Bhutan.
(車のナンバープレートまで唐辛子色)
Wonderful Amankora.
幸せの国。
ひとまずのお別れである。
古い蛇ほど柄がいい。
名言だと思う。
しかし一旦旅に出ると、体力面はともかく、その国の懐にぐんぐん入っていこうとする息子達の好奇心と順応性には舌を巻く。
そこは羨ましいと心底思う。
遭難一歩手前の山越えを終えたばかりというのに、次クニは立ち寄ったホテルのロビーでエスニックインスツルメントバンドHAPPINESS(仮称)結成中である。
やけに楽しそうである。
早く酒飲んで休みたいなんて思っている古い蛇は置いていかれるのである。
今回最後のAmankora、国際空港のあるパロのそれは部屋数27、the largest of all of Amankora。
針葉樹林の中に石畳を配し、ひと際洗練された高原のリゾート感を盛り上げる。
個室の間取りはプナカとほぼ一緒の、ケリー・ヒルデザイン。
メインダイニングもどこかイタリアンレストラン風である。
そこで食べる、だし汁をかけたBhutanese Inaniwa Noodles。
私だったらせめてホタテじゃなく鯛をのせタイ。
勉強になりました。
薪と松ぼっくりを美しく組み合わせたシグネチャー的ストーブが再び登場。
ああ、高地ブータンにまた抱かれるのだなあと思う。
パロではこの旅最大の目玉、Tiger's Nest、タクツァン僧院へのトレッキングが持ち受ける。
人間の足で近づける道があるとは到底思えない屏風のように垂直に切り立った崖に、まるで空から舞い降りて来たように建つこの僧院を見て、比較的歩くのが好きで丈夫な自分の足に、初めて不安を覚える。
しかし、為せばなる、為さねばならぬ何事も。
そう言い聞かせて育ててきた息子の前で弱音は吐けない。
僧院は標高3200m、登山口は2100m。
途中、標高2800mの唯一のレストハウスが、高所への体調を整える場所でもあり、登山リタイア組の待ちぼうけ場所でもある。
おふくろ、そこで待っててもいいよ、と息子は予め労り(=憐れみ)の言葉をかけてくれるも、憐れまれれば憐れまれるほど、古い蛇の柄は鮮やかさを増すのを知らないな。
行くぞ。
元ガールスカウトの底力を見せてやる。
(何十年前の話だか・・)
登山口から見上げる僧院は雲の上である。
雲上への階(きざはし)を登れるなら、普段山登りの機会など無い自分にはいい還暦記念になるだろう。
道は整備されておらず、雨季のこの時期は泥だらけでかなり滑り易い。
朝8時に登り始めた時に着込んでいたダウンも、ほどなく脱いでひたすら前へ、前へ。
後ろを振り向いたら心が萎えそうである。
2時間近く登って、一面赤土と針葉樹の緑の中に、タルチョ(5色旗。経文が版木で印刷され、5種類の色はそれぞれに天、風、火、水、地を表す。天に近い高所まで持っていき、張り巡らすと願いが叶うとされている)が見え出し、唯一のレストハウスに到着。
日本なら救護所でも設けられるところだろう。
結構な標高なので、軽装で登る観光客の中には体調を崩す人もいるだろうに、そういうサポート体制はほとんど整っておらず、自己責任となる可能性が大。
まだ3人余裕の表情である。
ここで甘い紅茶(ガシャ)を飲み、さらに上へ。
レースのように垂れ下がる羊歯(?)が美しい。
ようやく仰ぎ見るだけであった僧院が目線よりやや上までくる高度まで登ってくる。
嬉しがってるけど、此処からがキツい。
岩肌に張り付くように儲けられた階段を登り下る。
(せっかく登ってきたのに下るって・・・・)
ただのスロープより階段の分、足を数10センチ上げなきゃならない。
その数10センチがもう出来ない。
3000m超の標高で身体能力もかなり奪われていると感じる。
ここで…
事件その10:カラン、カラーン…
ダショーが3000mの谷底にカメラのキャップを落っことす。
「いい音がしました」
さすがダショー。
精彩放つコメントである。
この谷底に落っこちてるカメラのキャップやiPhoneの類い、きっと数知れず。
何千というFind iPhoneのアイコンが奈落の底を指すであろう。
しかし、遂にコンプリーテッド!!
……
(下りるのはさらに辛かった…)
下り道で、我々もタルチョを張り巡らし、それぞれの願いを唱える。
次クニの願いは、そして私の思いとは。
最後の夜、ディナーにはナショナルコスチュームを着てダイニングへ、とのホテルのお計らいで、衣装が部屋に用意される。
分からないのでテキトーに着てダイニングへ行くと、スタッフがわらわらと寄ってきてお色直しを。
次クニはまるでお内裏様とお雛様。
(……笑えよ…)
ブータン&Amankora、素晴らしい。
出立の朝にはご祈祷まで授けてくださった。
事件その11:サングラスかけた坊さんのご祈祷(意味は分からない)がツボにはまって笑いを必死に堪えていたら、横でダショーも打ち震えていた…
バチあたりな二人である。
Wonderful Bhutan.
(車のナンバープレートまで唐辛子色)
Wonderful Amankora.
幸せの国。
ひとまずのお別れである。
2016-09-23 11:40
nice!(2)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0