レユニオン島、バニラ香る島 [セルフィッシュ・ジャーニー]
レユニオン島(Reunion)に行ってきた。
と言っても、この島がどこにあるか、首を傾げる人が圧倒多数だろう。
レユニオンを知らなくても、ブルボン(Bourbon)という名前はよく昔のコーヒー店名になっていたから、耳触りとしてはこちらの方がポピュラーかも知れない。
マダガスカル島の東、インド洋に浮かぶ九州ほどの大きさのレユニオン島は、16Cからフランスとイギリスに交互に植民地支配され、その度にルイ13世が名付けたブルボンという名と新名レユニオンを目まぐるしく島名として繰り返した。
気温が年間を通じて21〜28℃という寒暖差の少ない暖かい気候と長い間敷かれていた奴隷制度に基づく労働力を利用して、香りの王国フランスは、様々なエッセンシャルオイルの香料原料をここで歴史的に盛んに栽培し、質の良いエッセンシャルオイルを大量に獲得することに成功した。
よってアロマテラピーを本気モードで勉強する時に、エッセンシャルオイルの原産地として、レユニオン島ほどテキストに頻出する地名は他になく、その度に我々生徒達は「これはどこのことなんだ?」と頭を疑問符でいっぱいにしながら必死で覚え込んだものだ。(原産地はテストに出ます)
一昨年参加したマダガスカル香料視察ツァーの時に、レユニオン島がマダガスカルのすぐ隣にあることに気付き、ああ、ここにいたかレユニオン島とはたと膝を打った参加アロマセラピストは少なくなかったはず。
しかし過酷なマダガスカルツァーの後にそこまで足を延ばそうというツワモノはおらず、どちらかといえばツワモノ系の私も後ろ髪を引かれながらすごすごと帰国した。
今年同視察ツァーがレユニオンだと知り、二つ返事で参加を決めたのは、ベクトルの同じ元マダガスカル隊員がほとんどだ。
トイレットペーパーとカロリーメイトに僅かな緊張感が漂うも、赤い水着と希少ワインというパッキングは、フランス領という現状をふまえ、見知らぬ島へ渡るにしてはどこか楽観ムード。
顔見知りの多い今回のツァーゆえ、僅かな自由時間に想定される酒盛りの準備も入念に(笑)。
最後のモーリシャス航空プロペラ機の23キロ手荷物許容制限は、ワインボトル搭載でも我が家のパウダールームの体重計をクリアー。
やった。
心置きなく飛んでいける。
・・・・しかし、遠い。
時差は5時間だから経度的には真裏というわけでもないのに、羽田を00:30に飛び立ってドバイ、モーリシャスでトランスファー、レユニオンのサンドニ空港着は23:00。
時差5時間をプラスするから実際には28:00、実に27時間半ほぼ半眠程度で辿り着くのである。
そうして行き着く島は、島中に甘い香りの漂う楽園。
ああ、旅ってだから素敵だ。
レユニオンの視察目的香料は二つ。
バニラとゼラニウムだ。
数百種類あるといわれるゼラニウム、その中でも我々が実際に出会い使用するエッセンシャルオイルとしては、ミント調の香りを持つものやスパイシーなものなど5〜6種類、特にローズと同じゲラニオールを多量に含むゼラニウム・ブルボン(Pelargonium x asperum)は、まさにレユニオンの名を抱く最高級品。
その栽培農場と蒸留ファクトリーを見学する。
日本でよく窓下に置く、シトロネラ臭の強い虫除け目的のゼラニウムとは格段の差がある、甘いフルーツのような香しさ。
DISTILLERIE DE GERANIUMによるオイル採取率は、0.001%(300kgの花から300ccのエッセンシャルオイル採取、西島メモ)。
強烈に印象を残すのはバニラ栽培。
研究機関CIRAD(フランス国際農業関連団体)始め、いくつかの農場とファクトリー、農協を見て回るうち、最後にはキュアリング(乾燥熟成法)はおろか、一人の奴隷の若者が編み出した感動の受粉方法まで言えるようになる。
もともとカカオとサトウキビの栽培が盛んだったこの地に、メキシコからバニラを持ち込んで栽培し、まずはチョコレート製造を目論んだのが、レユニオンでのバニラ栽培のスタートと聞く。
原産地のメキシコには、ラン科のバニラの受粉を助ける特殊な蜂が棲息しているが、レユニオンにはその蜂がいないため、受粉はすべて人の手によって行われる。
サボテンの刺で行われる受粉は一つの花に2秒。
細かい仕事が得意な女性の仕事である。
めしべとおしべの間には壁のような仕切りがあるため、それを優しく倒して受粉を行う。
なんとも気の遠くなるような、繊細で膨大な仕事だ。
この受粉方法を考え出したのは一人の奴隷。
その成功を見ないうちに彼は病死、その数年後に奴隷制が廃止されたという逸話は、どの農園、ファクトリーでも語られるエレジーだ。
グルメ王国フランスのスイーツ、料理に欠かせないバニラが、こうして己の夢を採取した名も無い若者の力がスタートだったこと、何時の世も強国の繁栄を支えるのは、レユニオンやマダガスカルのような安価な労働力を持つ熱帯気候の貧国であることは、香料の産地を訪れて毎回唯一気の沈むことである。
ともあれ、Y先生と愉快な仲間達は、今回もよく食べ、よく飲み、よく語ったのである。
両手に紅白ワインなヒト。
九州からは薩摩焼酎を、千葉から地酒を。
ありがとー。
13人、バニラの島を駆け抜ける。
と言っても、この島がどこにあるか、首を傾げる人が圧倒多数だろう。
レユニオンを知らなくても、ブルボン(Bourbon)という名前はよく昔のコーヒー店名になっていたから、耳触りとしてはこちらの方がポピュラーかも知れない。
マダガスカル島の東、インド洋に浮かぶ九州ほどの大きさのレユニオン島は、16Cからフランスとイギリスに交互に植民地支配され、その度にルイ13世が名付けたブルボンという名と新名レユニオンを目まぐるしく島名として繰り返した。
気温が年間を通じて21〜28℃という寒暖差の少ない暖かい気候と長い間敷かれていた奴隷制度に基づく労働力を利用して、香りの王国フランスは、様々なエッセンシャルオイルの香料原料をここで歴史的に盛んに栽培し、質の良いエッセンシャルオイルを大量に獲得することに成功した。
よってアロマテラピーを本気モードで勉強する時に、エッセンシャルオイルの原産地として、レユニオン島ほどテキストに頻出する地名は他になく、その度に我々生徒達は「これはどこのことなんだ?」と頭を疑問符でいっぱいにしながら必死で覚え込んだものだ。(原産地はテストに出ます)
一昨年参加したマダガスカル香料視察ツァーの時に、レユニオン島がマダガスカルのすぐ隣にあることに気付き、ああ、ここにいたかレユニオン島とはたと膝を打った参加アロマセラピストは少なくなかったはず。
しかし過酷なマダガスカルツァーの後にそこまで足を延ばそうというツワモノはおらず、どちらかといえばツワモノ系の私も後ろ髪を引かれながらすごすごと帰国した。
今年同視察ツァーがレユニオンだと知り、二つ返事で参加を決めたのは、ベクトルの同じ元マダガスカル隊員がほとんどだ。
トイレットペーパーとカロリーメイトに僅かな緊張感が漂うも、赤い水着と希少ワインというパッキングは、フランス領という現状をふまえ、見知らぬ島へ渡るにしてはどこか楽観ムード。
顔見知りの多い今回のツァーゆえ、僅かな自由時間に想定される酒盛りの準備も入念に(笑)。
最後のモーリシャス航空プロペラ機の23キロ手荷物許容制限は、ワインボトル搭載でも我が家のパウダールームの体重計をクリアー。
やった。
心置きなく飛んでいける。
・・・・しかし、遠い。
時差は5時間だから経度的には真裏というわけでもないのに、羽田を00:30に飛び立ってドバイ、モーリシャスでトランスファー、レユニオンのサンドニ空港着は23:00。
時差5時間をプラスするから実際には28:00、実に27時間半ほぼ半眠程度で辿り着くのである。
そうして行き着く島は、島中に甘い香りの漂う楽園。
ああ、旅ってだから素敵だ。
レユニオンの視察目的香料は二つ。
バニラとゼラニウムだ。
数百種類あるといわれるゼラニウム、その中でも我々が実際に出会い使用するエッセンシャルオイルとしては、ミント調の香りを持つものやスパイシーなものなど5〜6種類、特にローズと同じゲラニオールを多量に含むゼラニウム・ブルボン(Pelargonium x asperum)は、まさにレユニオンの名を抱く最高級品。
その栽培農場と蒸留ファクトリーを見学する。
日本でよく窓下に置く、シトロネラ臭の強い虫除け目的のゼラニウムとは格段の差がある、甘いフルーツのような香しさ。
DISTILLERIE DE GERANIUMによるオイル採取率は、0.001%(300kgの花から300ccのエッセンシャルオイル採取、西島メモ)。
強烈に印象を残すのはバニラ栽培。
研究機関CIRAD(フランス国際農業関連団体)始め、いくつかの農場とファクトリー、農協を見て回るうち、最後にはキュアリング(乾燥熟成法)はおろか、一人の奴隷の若者が編み出した感動の受粉方法まで言えるようになる。
もともとカカオとサトウキビの栽培が盛んだったこの地に、メキシコからバニラを持ち込んで栽培し、まずはチョコレート製造を目論んだのが、レユニオンでのバニラ栽培のスタートと聞く。
原産地のメキシコには、ラン科のバニラの受粉を助ける特殊な蜂が棲息しているが、レユニオンにはその蜂がいないため、受粉はすべて人の手によって行われる。
サボテンの刺で行われる受粉は一つの花に2秒。
細かい仕事が得意な女性の仕事である。
めしべとおしべの間には壁のような仕切りがあるため、それを優しく倒して受粉を行う。
なんとも気の遠くなるような、繊細で膨大な仕事だ。
この受粉方法を考え出したのは一人の奴隷。
その成功を見ないうちに彼は病死、その数年後に奴隷制が廃止されたという逸話は、どの農園、ファクトリーでも語られるエレジーだ。
グルメ王国フランスのスイーツ、料理に欠かせないバニラが、こうして己の夢を採取した名も無い若者の力がスタートだったこと、何時の世も強国の繁栄を支えるのは、レユニオンやマダガスカルのような安価な労働力を持つ熱帯気候の貧国であることは、香料の産地を訪れて毎回唯一気の沈むことである。
ともあれ、Y先生と愉快な仲間達は、今回もよく食べ、よく飲み、よく語ったのである。
両手に紅白ワインなヒト。
九州からは薩摩焼酎を、千葉から地酒を。
ありがとー。
13人、バニラの島を駆け抜ける。
2016-10-19 11:14
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