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ふじみ野、脇役 [クリニック・シンドローム]

結局、脇役なんだなあと思う。

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サラリーマンの娘が医者になるかどうかもわからない学生と結婚し、その医学生が紆余曲折を経て20年後、東京のベッドタウンに小さく4床の産科診療所を、ビルを間借りして開業する。
最初は人手を雇う経済力も無く、掃除や食事の配膳も私がやったなあ、としみじみ懐かしい。

そこから17年。
HPを改訂するために、自分でクリニック・アラウンドを撮影して廻る。

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普段、見ているようで見えていない自分の職場。
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多くのスタッフと患者様たち。
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少し古びてきてはいるが、白い小さな産科クリニックは夫の理想の形でもあり、歩みを未だ止めないでいられる。
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雇用機会均等法が無かった1970年代、4年制大学卒女子の正式採用は無く、父から「メシの種にならない学問をすることこそが女子の特権」と叩き込まれ、うかうかと児童文学なぞにのめり込み、特権と言われたからには頑張って勉強して、卒論は各科から一論文だけ掲載される卒論集に載せて頂いたような気がする。

その卒論の題材が、「宮沢賢治作品のリズムと韻」だったことを昨夜はたと思い出し、え、リズム? それが今のドラムに繋がっているのかという(そこか!)想像に行き着いて、眠れなかったりもする。

閑話休題。
逸れたね。

最近、文系を大学教育から外す議論が喧しいが、それもよかろう。
文系と理系を分別するのは日本だけだというエッセイも読んだが、それも本当だろう。

特に文学部については、大学での修業がなかなか特化したスキルになり得ないのも、私が証明できる。

でも父が言ったように、メシの種にならない学問ほど、本当はスゴく楽しいものかも知れない。
何の駆け引きも無く、打算も、目標すらも無く、自分が面白いと思ったことをとことん勉強して追いかけていく。
大学時代に、その醍醐味にほんの少し触れたことは、私の人生の無駄にはならなかったような気がする。

役に立たないからと言って文系を追放するのは、なんかちょっと効率重視の打算がすぎる気がするんだけど。

文学というフィールドを知ったおかげで、カンペキ理系医学部卒の夫とはまた違った、多様で面白い人生を享受できていると思うのは、毎日毎日完全燃焼、趣味を語るヒマなど無い夫への負け惜しみ、そして、彼が開いた診療所のサポートに追われる自分への無理矢理な自己満足なんだろうけれども。
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脇役ならサイコーの脇役を楽しんでやりますよ。

余裕があってこそ感じられる実りの芳醇さ。
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心に吹き抜ける風の軽やかさ。
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ドラムなら、曲のニュアンスを決めるハイハットってとこかな。

叩き出す老夫婦の2ビート、あともう少し聞いてください。







ふじみ野、クリスマスライブ [クリニック・シンドローム]

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折れたよ。

スティックの先が飛んだ途端、心の中でも何かがふっと折れた気がする。

ああ、ちょっと休めってことなんだろう。

5回の海外渡航を含め、走りに走った1年の終わり。
スティックでなく、心のアキレス腱が切れる前に。

今年最後のドラムレッスンは、山下達郎の「クリスマス・イブ」。
名曲である。

多感な大学生時代の私たち(♪そんな時代もあったねとぉ〜〜♪)のバックに流れていた達郎や竹内まりやの曲は、豊かな国の象徴だったアメリカの陽気でトラッドなテイストを、日本の風景にうまく当てはめて輝いていたと思う。

めちゃめちゃ憧れましたとも。

「クリスマス・イブ」は、遠距離恋愛の恋人たちの別れの切なさや、若者の社交場だったスキー場への高揚感が交差する駅の情景を描いたJR東海のCFにぴたりとはまって流れていた。
間奏にパッヘルベルのカノンを挟んだクラシックテイストが、ホーリーで特別な空気を熟成させて。

きっと君は来ない、一人きりのクリスマスイブ。

来るか来ないか、メールやLINEで一発で分かる今日では決して味わえない、不安と期待に押し潰されそうな長い待ち時間って、人生にコクと深みを出すためには絶対必要だって思うんですけど、若者諸君、いかがでしょうか?



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クリニックでは、NCでお嬢様二人を出産された飯田翔子さんとギタリストの溜修一さんのデュオ、「88」のクリスマスライブ。

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ドラムレッスンから駈け戻って、クリニックのスタッフと出入りの業者さんたち総動員で、手作りの会場作りに追われる。

「クリスマス・イブ」の感傷に浸ってるヒマ無し。
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有能な女性の出産前後のブランク活用とその後の活動の応援、核家族時代における母子の孤立化対策(っていうと堅苦しいんですが・・)を掲げてスタートした、NCカルチャークラブ。
翔子さんのライブは、このクリニックの活動のいわゆる旗振り役である。
去年は、屋上ウッドデッキで真夏の野外ライブとなり、盛り上がった。

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ギターにのる透明な歌声は凛として、ご主人様の理解に支えられて、小さなお嬢さんたちを育てながら自分の活動を続ける彼女の生き方を投影している。

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オーディエンスは患者様や音楽仲間。

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團紀彦設計は、まさにこのイヴェントを予感していたかのような高い天井に跳ね返る音響効果である。

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厨房スタッフの尽力でセッティングされた打ち上げも、超楽しく。
裏方もものすごい充実感だ。

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翔子さん、溜さん、これからもご活躍を!

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自宅、決算書徹底理解講座 [クリニック・シンドローム]

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締め切り前日に投函し終えてようやくこの笑顔である。

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決算書徹底理解講座。

本来は銀行の新入社員が仕事上の研修のために受ける講座らしいのだが、クリニックのメインバンクから紹介してもらった4ヶ月完結のスパルタな通信講座である。
1ヶ月ごとにレポートと作成したなんちゃって決算書なんかを提出して添削を受けるんである。

法人設立以来会計処理をしてきた事務所の不適切な決算書作成を長期間見抜くことが出来ず、昨年の税務調査で散々な目に遭ったことはラオスへ行く前に書いたかと思う。

家計簿も碌々つけたことの無い平凡な専業主婦がいきなり開業した夫のクリニックの財布を預かることになり、ありがたいことに無理な節税や資金繰りを心配する事態にもならないできたので、ごく一般的な通常の決算書が出来ているものと疑いもせず、そのとおりに納税し、日々を暮らしてきた。

不適切な決算書なんていうと、真っ先に粉飾決算のような悪意の脱税方法のように聞こえるが、ウチのは単なる会計処理者の怠慢の結果である事実とかけ離れ過ぎた決算書を、私が読み解けなかっただけであった。
夫は経営にノータッチなので、本当に私一人の責任であった。
(だからすごく孤独だった、と書いたと思う)

決算書が作り手(=処理する会計事務所)によっていかようにでもなるってことを知らなかったし、ましてやそれが事実と違ったものに出来上がるなんて思いもよらなかった。

少し前、◯渕優子サンが、「不適切な会計処理をしていたことを知りませんでした」と言っていたが、あれは本当であろうし、あちらは法に触れるかも知れないことであるから「でも知らなかったでは済まされない」と言っていたことも、可哀想だけどそのとおりだと思う。

法には触れないけれど、私も「知らなかったでは済まされない」という思いで胸をいっぱいにし、単独ラオスに旅だって自分の馬鹿さ加減を埋めてきたことは前述のとおりである。

・・・でそれでおしまいかよ、と笑われたくないので、一念発起である。

決算書くらい読めるようになってやる。

新しい会計事務所に、専門用語でバンバン指摘してやるわ!
だって、商業高校の生徒さんだって簿記学校のオニイサンだって読めるんでしょう?




・・・私、舐めてました。

商業高校と簿記学校はエラいです!

まず、単語が難解すぎる。

そして毎月見てはいたはずの貸借対照表と損益計算表、だいたいこの二つの呼応性がすんなり頭に入らない。

資産か負債かの違いは重要としても、科目別の短期か長期か、流動か固定か、有形か無形か、ってそんなに重要?

クリコシヘッジソンエキて、カシダオレヒキアテキンて、テガタヲワリビクてどういうこと?

あ”=====

どんだけ英単語の方がすっと頭に入るかってハナシである。

これは日本語ですかああああ〜〜

のたうち回るってこういうことだな。

夜、一人で机に向かってやろうとすると5行くらい読んだだけで疲労感と徒労感に襲われて進めなくなるので、なるべく昼間スタバや電車の中の人目があるところで、実際のクリニックの貸借対照表と損益計算表を見ながらテキストを読み進めるようにした。

・・・でようやく第1回目の「貸借対照表を理解する」課題提出に漕ぎ着けたんである。

資料の金額を見ながら自分でバランスシートの科目名や数字を穴埋めしていく課題で、ようやく実感が掴めてくる。

大企業の経済学部出身のオーナーたちはさておくとして、ウチと同じような規模の中小企業のしゃちょーさんたちは、ホントにみんなこの決算書読んでるんだろうか?

本当は決算書って単純な利益と損失だけの対比のはずなのに、何とか節税しようとするのか、会社の信用を守ろうとするのか、費用を「あっちにいれてもよい」とか「こうやって少しずつ分けて計上する」とかいろんな工夫というか小細工をOKとしてきた結果、現状の複雑なエクスキューズだらけの決算書になったんじゃないか。
そのエクスキューズがそれぞれの会計事務所の裁量に委ねられているようである。
(それを事務所の腕の見せ所、というところもあるが)

これが素人が決算書を読み解くことを必要以上に難しくし、結果、主(あるじ)不在の、会計事務所と税務署だけの専任業務のようになっているんだと思う。

腕なんか見せなくていいから、節税も無理にしなくていいから、単純に明解に私に分かるように、ただ処理してくれればよかったんである。

しかし、ワタクシ、あの一件後に読んだ元日本マイクロソフト社長のコラムを切り抜いて、座右の銘として手帳に貼ってあるんである。
その成毛眞氏いわく、
「日本人の9割に英語は要らない。(ってマイクロソフトの社長が言うんだから・・・中略)英語やMBAよりも、ほとんどの日本人に必要なのは、簿記の知識であろう。簿記は経理部員だけのものではない。経営のための根幹技術なのだ。」

日商簿記2級レベルのうち、商業簿記の知識があれば決算書が読めるし、財務状況もよく分かるという。

彼は自社の、というよりは取引先の財務状況を知らなければならないビジネスマンや投資する人のために言っているのだが、自社の経営状況をがっつり知る必要のある私のような素人経営者にこそ最も必要なことだろうと、これを読んだ時に反省したんである。

普通にモノを売って利益を得る企業なら、決算書が仮に読めなかったとしても、モノの売れ行き具合と元手とのバランスでだいたいの経営状態の想像がつくってもんだが、医療行為が診療報酬という決まった利益に還元される医療法人はその辺が直接的に跳ね返って来ず、ビミョーである。

新しいことを始めるのはいつも心が躍るものだが、この勉強は正直言って踊らないわ。

でも、悔しさをバネに、自分の馬鹿さ加減を踏み台に、決算書、是非完璧読解へ漕ぎ着けたいと思っております。
皆様、どうぞ暖かく見守ってくださいませ。

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主人に成り代わりまして心より。


ふじみ野、負けてしまいそうです [クリニック・シンドローム]

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桜は散ってしまった。

でも、ご存知か。

水面に散った桜の花びらが一ヶ所に吹寄せられて集まったものを、花筏(はないかだ)と呼んで古の人々が愛おしんだことを。
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なんと雅な感覚か。

お濠に散った花びらが翌朝にはすっかりすくい取られているのを見て、清掃費は千代田区民税から捻出されているんだろうなあ(千代田区民です)などと下世話なことを考えた自分が恥ずかしい。

区民税、どうぞ!

そう、去年まで一緒に花見をしたクロも窓辺で楽しんだはず。
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1年に一度の桜の風景がじんと胸に来るのは、人間界のつらいことも悲しいことも静かに超越して、美しい花を必ず開かせる自然の大きな力に私たちが打たれるからだと思う。

桜の風景に重ねた思い出のアルバムがまた1ページ。

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(注:千鳥ヶ淵の桜ではありません)

さて、花見が終わるまで考えないことにしていた問題山積。
片っ端からやっつける今週である。

大問題の辞令は突然に。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0800G_Y4A300C1CR0000/

「(まだなってないけど)そういうことになったら補助金要りますか(要らないっていう機関があるんだろうかと思う)。要るんならFAXで意思表示せよ」というアンケートが突然県から送られてきたのが今年1月。

だって火災警報機ペタと天井に貼るだけじゃない。
既存の建物にスプリンクラーを後づけするって言ったら、天井剥がして水道管通すってハナシです。

防災会社に見積もらせた3600万て費用もとんでもないけど、その工事期間、入院患者さんはどうすんのってことですよ。

補助金出せば(審査によっては出ないかもしれませんとご丁寧に県からエクスキューズの電話有り)いいってもんじゃないくらい分かりますよね。

ウチなんて病室は全部1階なんだから、スプリンクラー作動する前に全員自分の足で窓から庭へ逃げますって。

そんな個別事情など完全無視、十把一絡げであれよあれよと予定は閣議決定に。

今週末までに設置事業計画書を提出しなければ、補助金出たとしてもあげないよってことである。
防災会社追い立てて計画書作成し、速達で郵送する。

いくらなんでも躁急すぎないか、お上。
これでやむなく閉院に追い込まれる有床診療所もきっとあるだろう。

なにか大きな力に負けてしまいそうです。

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ついに割烹着(おばあちゃんの割烹着ってそんなに何枚もあるもんなのかと思いました)を脱ぎ捨てて国民の前に現れたOB方さんみたいに、乙女な涙を流してみたいよ、ワタシだって!

すみません。

感情が先行してしまった。
入院患者様の安全度が増すことはいいことだとは思う。

でも日経によれば、建設する時は設置義務が無かったのに今回新基準の対象となって設置義務を負わされる有床診療所(19床以下の入院施設を持つ診療所)は全国で168施設しかないんだから、その工事や費用の大変さを考えれば、もっと個別に調査して準備期間を長く設けるなど、きめ細かな実施要綱にして欲しかったと思う。




クリニック、税務調査 [クリニック・シンドローム]

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薄紙を剥ぐように、という例えが病気が少しずつ癒えていく様子を表すなら、クロの容態は薄紙を重ねるように、本当にかすかな下降線を辿りつつ来るべき日に近づいているようだ。

先天性の糖尿病を発病して2年半、毎日インスリンを打ちながらよくここまで頑張ってきたと思う。
もう、他の2匹のいるソファにも上がれなくなり、夜私のベッドにも上がるのには手助けがいる。
何よりラテン系の陽気な鳴き声をほとんど発しなくなり、寒さの訪れと共に重苦しさが募る。

そんな中で、今週クリニックは税務調査。
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開業していると、こんな小さな有床診療所でも、保健所の検査だ、消防署の検査だとひっきりなしの検査漬け。
お役所にがんじがらめである。

その度に上から目線で重箱の隅をつつかれるので、受ける側にとっては決していい気持ちのものではないけれど、日本で業を営んでいくんであるから義務化されているものは受けなきゃ仕方ない。

そんなオブリゲイトリーな検査・調査の中で、素人ながら15年クリニックの経営を預かってきた私が当事者となるのが税務調査。
医療法人になってからは初めてタックス・オフィスと相見えるのである。

言ってみれば、財布の中身や家計簿を隅から隅まで他人に点検されるような感じだから、まあとっても気持ちがいいもんかと言うと、絶対そんなことはないのである。

夫は「納税は国民の義務。しっかり納税して残りを堂々と遣う」と言い放つ、税務署のスローガンのような人だから、大した節税もしていない(・・というか経営には無頓着)このクリニックにはもう差し出すものは無いはずなんである。

なのに、である。

何かは見つけてやるという税務署魂がひしひしとこちらに伝わってくる。
ちくちく言われて、当事者たる私はもう吐きそうである。

毒キノコを食べて食中毒になったという会計事務所長のバカ話(アイスブレーカーでもあるし、これで調査の時間を削るのが受け手の応戦体制の常らしい)にも、税務署員の目は決して笑ってないんである。

2日目にはむしろこの真剣勝負っていうか、腹の探り合いを第三者的に見物しようって気にもなる。

中絶手術に使う麻酔薬と手術数を徹底的に調べ上げるという最もトラディショナルな産婦人科対応調査(麻酔薬の方が多ければ手術数を過少申告しているという今どきあり得ない嫌疑を大前提としている。資料を差し出す職員たちも大憤慨)に4分の3の時間を割いて、調査終了。

逆に鋭利な税務署員になって、気づかないところにびしびしメスを入れ、さらなる税金を召し上げる達成感も味わってみたくもあるけれど、私の在任中にはもう二度と来ないでね。

今夜はドロ酔いしてやります。
・・・・って前園か?







ふじみ野、夏の夜のライブ [クリニック・シンドローム]

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あたりまえなんだけど、やっぱりプロってすごい。

飯田翔子さんはにしじまクリニックで二人のお嬢様を出産された「NC卒業生」の中のお一人だ。
妊娠中、私のトリートメントにも足繁く通って頂き、彼女が音楽の活動をしていることも知っていた。

彼女の、若いのに地道で真っ当な思考は妊娠通院中からキラリと輝いていたが、それが、妊娠、出産、育児中でも身の丈にあった活動を積極的に続けている姿勢から来るものであることを、私は徐々に知ることとなり、今回彼女のピアノ弾き語りライブを、クリニックの屋上デッキで企画した。

彼女の音楽はもちろんだが、NC在校生(?)や同じ年頃のママ達に、彼女の姿勢を知ってもらえたらなあという思いが強かった。

彼女の弟さんでギターでバンド活動をしている啓介さんも、サポートで出演してくださることになった。
愚息と同じ年だとおっしゃるが、ウェンツ似のイケメンである。

彼女のご厚意で、ピアノを習い始めたばかりの夫も1曲出演させていただけることになり、まあ、ただひたすら練習すればいいものを、何だかやたらにいろんなカンペを作ったり裏準備ばかり周到にして、コトを大ごとにする彼。

そして、炎天下でリハーサルを始めた飯田姉弟の中に、診療の合間に白衣で乱入して無理矢理自分のリハを行う(・・・・・。)


本番2時間前にして、この完成度って・・・もう翔子さんに申し訳なくて、私は穴があったら入りたいくらいである。

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日が暮れ始め、お客様が集まり始める。

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屋外ライブということで、急遽我がセラピストチームがラヴェンダーの虫除けスプレーを作り、受付で皆さんに吹きかける。
これがまた「わあー、いいにおい!」と好評だ。

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空にまたほんの少し夕暮れの名残が見える頃、東の空に月が昇り、ライブがスタート。

ああ。
思い描いた通りのシチュエーションだ、と、私はすごく興奮する。

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ご自分のオリジナル曲やカバー曲を、しっかり者のお姉ちゃんが繊細な弟を引っ張る形で演奏していく。
間に挟まれるMCが関西弁(姉弟は奈良県出身)なので、ノリに拍車がかかって笑いを誘う。

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ドリンク片手にお客様もとてもリラックスしたムード。

シャンパンが配られた休憩を挟んで、問題の院長の「真夏の果実」。
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翔子さんと啓介さんにサポートしてもらってようやく歌い切る。
もう私はその場に崩れ落ちそうである。

ゲリラ豪雨も無く、心配された暑さもさすがに夜ともなればお盆を過ぎて身を潜め、心地よい風がデッキの上に始終吹き渡る。

竣工後8年。

NC卒業生の皆さんや、入院中の患者様、クリニックご近所のおばあちゃまたち、スタッフ、クリニック出入りの業者さんたちがみんな一緒に音楽を楽しむ。
建築家團紀彦氏がこのデッキを作った意図を、初めて形に出来たように思う。

企画実行委員長としては感無量である。
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クライマックスは、彼女の代表作「カスミソウ」。

マジ、じんと来る。

閉演後、ラウンジで打ち上げ。
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翔子さん、啓介さん。
すばらしい音楽をありがとう!

裏方に回って汗だくで準備をしてくれたクリニック医事課スタッフ、出入りの業者の皆さんにも、心から感謝。

今夜はクリニックの真夏の果実が実を結んだ日。


赤坂、メディカルアロマセラピストの周辺 [クリニック・シンドローム]

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さあ、これから出掛けようというツメ。

電車の時間まで残り30分。
身支度・化粧と、ミナサンの世話と、戸締まり・・・と。
その「ここが勝負!」っていう時に、毎朝このヒト(イヌ)がこうなのである。
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ちょっとぉ。
この抱き癖つけたヒト、出てきなさい!

いつもお気軽ブログを書いてるんで、どうせ有閑マダム(何だか懐かしい言葉だ。一条ゆかりサンの「有閑倶楽部」思い出すなあ)のお出掛けでしょ・・・って感じもちょっと悔しいので、今日はちょっと自分の仕事について語ろうかと思う。

昨日、仕事の打ち合わせをした。

私の仕事は、ブログのサブタイトルから推測すれば「メディカルアロマセラピスト」ということになろうが、いったいメディカルアロマセラピストってなに、と自分でも思う。

このタイトルをつける時は、「(サロンやスパではなく)医療機関で働いているアロマセラピスト」という意味で気軽にその辺に落ちていた言葉を拾ってつけてしまったが、最近雨後のタケノコのように開校しているお手軽アロマセラピスト養成機関のHPなぞを開いてみると、この言葉が氾濫しているではないか。

このことについては以前も書いたかも知れないが、アロマセラピストは民間資格である。

ゆえに養成機関が認めれば、究極養成機関になんか行かなくても、そこのけそこのけの勇気さえあればアロマセラピストと名乗って仕事することだってできちゃったりする。

私はIFA(International Federation of Aromatherapists)というイギリスの資格を取ったのだが、当時はアロマセラピストという言葉もまだ完全に浸透していなくて、日本におけるIFA資格取得認定校も少なく、九州や北海道から来ている生徒もおり、知識と実技両方を学びながら試験やアサイメントにに追いまくられる”充実した”時間を過ごしたと記憶している。

しかし今や、IFA認定校も日本で42校と増え、別にイギリスの資格じゃなくても、通信教育でだってアロマブレンダーやらアロマコーディネーターやらアロマアドバイザーやらという意味不明の資格が乱発されるものだから、なんか日本のこの業界は完全に混沌としてしまい、「アロマ」と冠詞をつけさえすれば業界参入、即収入可、みたいになってしまった。

もともとアロマテラピーは、ヨーロッパで現在の西洋医学が発達する以前に、エッセンシャルオイルの薬効成分を使って医療の分野で多く使われていたものだから、ルーツからすればそれは医療機関で使われることが正統な気がするのは、学ぶ側からすれば自然なことだ。

しかし、これだけ西洋医学が発達した現在では、アロマテラピーの医学的役割は完全に終了しているはずで、医療機関においてのアロマセラピストの需要は、特にアロマテラピーの歴史的使用例がない日本では残念ながら限りなく低い。

医療分野でのアロマテラピーの出番は、医学がすでに及ばないところまで進行した一部のターミナルケアや予防医学の分野、そして医療の指の隙間からこぼれ落ちた(この表現を私はよく使う。完全な医療を受けても満たされない、主に精神的な部分を指す)部分だろう。

産科医療においては、アロマテラピーは完全に後者の一部分と付加価値を担っているに過ぎない。
6年間、クリニックでアロマテラピーを実践してきて、そう思う。

だから基本的には医療機関でのアロマテラピーは対価を求めずに行われるボランティア的な活動に徹するのが自然だろうと思う。
メディカルアロマセラピストなんていう職業はそもそも無いし、少なくとも日本ではほとんど成立しないのだ。
(一部の医療機関において、サービスの一環として取り入れたアロマテラピーが集患数をアップすると見込んでセラピストを雇い、給与を支払う例はあると思う)

アロマテラピーは、実際に自分の生活の中に取り入れてみれば、習慣的・予防的な健康法としては本当に価値があるものだと実感する。
また産科クリニックでアロマテラピーを実践してきた6年間は、職業として実際に成立するかという意味では敗北感を味わい続けたが、施術をしてきた患者様との接点は、人の役に立ちたいという人間の基本的な欲求の琴線に十分触れるものであったことは間違いが無い。

その目的のために、これからも私はクリニックでこの仕事を続けていくだろうし、その目的のために、広告や流行に踊らされず真摯にアロマテラピーを学び、世に出て行く人たちが増えることを願ってやまない。



ふじみ野、手作り石けん教室 [クリニック・シンドローム]

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ひょっとして何かヤバいもの作ってるふうなのである。

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理科実験のようでもあり、

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クッキングスクールのようでもあるが、タイトルでバレバレのとおり、CCC(Clinic Culture Club)吉田翔子さんの手作り石けん教室 in にしじまクリニックである。

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作ってるのはオリーブオイル72%(これが純粋な石けんである目安のパーセンテージだそうである)のマルセイユ石けんである。

オイルを固める強アルカリの苛性ソーダが目や肌に飛び散ると大変なことになるので、この出で立ちである。

翔子さんはクリニックで二人のお嬢様を出産され、プロのミュージシャンというスキルを、子ども向けの音楽教室を開いたり(Music Together Rekareka in Nishijima Clinic、春のコレクション4月開講。こちらもよろしく)、地域で小さなコンサートを催したり、子育て期間の中に上手に生かしているところが見事だと思う。

石けん作りは、そんな彼女の、お子さん達を純粋なもので洗ってあげたいという母性の原点のような思いから始まったものだ。
今では市販のハンドウォッシュやボディソープやシャンプー剤を全く使わない生活になったというのだから、すごいんである。

彼女のうちの冷蔵庫には、食物以外に、寝かせている石けんがぎっしり入っているそうなんである。
(石けんて、チーズみたいに寝かせて熟成させるものだと初めて知った)

石けん作りの合間合間に語られる、そんなご自分の生活のエピソードがまた楽しい。

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何より素晴らしいのは、やさしそうなご主人まで(実は彼女以上に熱心な石けん作りのアルチザンらしい・・・)サポートにいらしてくださり、おおらかな翔子さんの手順を慎重に制する場面もあったりし、私はよりにもよって、夫婦の睦まじさを撮った昔の合成洗剤のCMを思い出したりしてしまったのであった。

何事にも前向きで一生懸命な翔子さんの姿勢が、石けん作りに至った動機と共に、これからママになる妊婦さん達に確かに伝わったのを確信した、ほのぼのワークショップ。

牛乳パックに型入れした石けん液の重みと、半日消えない痛恨の頬ゴーグル痕を持ち帰る。



ふじみ野、CCC春の講座 [クリニック・シンドローム]

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お疲れモードである。

ダンナも、イヌも、そして父親もである。

父がついに経理管理を自分でするのが難しくなり、一日休みを取って代理人の申請をしに行こうと思っていた日は、大雪、大雪と天気予報に脅かされて朝4時から外を伺っていたが、出発時刻の8時に埼玉はけっこうな降雪量だったので、水戸行きを断念する。

訪問を来週に延期する旨を電話すると、父は眠そうな声で「それ、(忘れてしまうから)お母さんに言っといてくれ」などと言う。
お母さんはもういないじゃないの!と心の中で喚き立てる。

なのに、さっぱり降り積もる様子も無い雪。
いい加減にしてと、心萎える。

しかし、立春を過ぎたのである。
毎年同じことを書いているように思うが、厳しい寒さの中で聞く立春という文字の響きは、なんと清々しく、前向きで、希望にあふれていることだろうか。
特に、5センチの積雪で狂ったように騒ぐ東京ではなく、重い雪の中の生活をじっと耐えて暮らしている雪国の人々には。

さて、CCC(Clinic Culture Club)にも春の講座が出揃いました。(◯ーキャンみたいだ)
クリニックも春に向かって始動です。

CCCのご紹介はこちら。
http://nishijima-clinic.or.jp/03ccc_concept.html

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「はじめて作る手作り石けん」(Rekareka:吉田翔子)
(写真は既製品です)
オリーブオイルを主原料とするマルセイユ石けんのレシピで型入れまで行い、お持ち帰りいただきます。
市販のものではなかなか味わえない、最高の使い心地の石けんを、お子様や忙しいお母様に是非使って頂きたいと思います。
日時:2月26日(火)14:00〜
場所:にしじまクリニック講義室
費用:1500円
お申し込み:http://form1.fc2.com/form/?id=826609 こちらのフォームにて

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「親子で作るひな祭りフラワーアレンジ教室」(スタイルモダン)
鶴瀬のお花屋さんスタイルモダンが主宰する、大好評”親子で作る”シリーズ第2弾です。
今回はお子様には折り紙でオリジナル雛人形を、お母様には桃の花を使って素敵なアレンジを作って頂きます。
日時:3月2日(土)14:00〜
場所:にしじまクリニック講義室
費用:2000円
お申し込み:049-251-8214 スタイルモダン(木曜定休)

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「さいしん春休みキッズスクール at にしじまクリニック」(埼玉縣信用金庫)
浦和レッズレディースのお姉さん達と遊びながら、クイズや模擬銀行でお金や銀行の知識を学びます。
日時:3月28日(木)10:00〜
場所:にしじまクリニック講義室および前庭駐車場
お申し込み:クリニック受付の申込用紙にて

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「仏料理の美味しさの秘密」(ボン・ヴィヴァン)
老舗フレンチ銀座レカンを経てふじみ野に開業して15年、フレンチレストラン”ボン・ヴィヴァン”のシェフが3回のレクチャーとお食事会を主宰します。
1回のみ受講、シリーズ受講共にOKです。
お料理の腕がぐんと上がること間違いなしのプレミアム講座です。
日時:第1回「お出汁の不思議」4月13日(土)15:00〜
   第2回「野菜の火入れ方」6月8日(土)15:00〜
   第3回「不思議な野菜の正体」8月10日(土)15:00〜
   第4回 シェフとのお食事会 10月10日(木)14:00〜
場所:第1回〜3回・にしじまクリニック講義室
   第4回・レストラン”ボン・ヴィヴァン” ふじみ野市旭1-14-26
費用:第1回〜3回・500円/第4回・3000円(ワイン、ドリンク付き)
お申し込み:049-256-0603 ボン・ヴィヴァン(火曜定休)

にしじまクリニックの患者様ならどなたでも受講できます。現在通院中でない「卒業生」の皆様も、是非同窓会のつもりでご参加ください!

ふじみ野、ホームページ完成 [クリニック・シンドローム]

構想から3ヶ月。
ようやくリニューアルされたクリニックのHPが公開された。

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クリニックのリノベーションが始まった7月に、既にHPを刷新するという発案はあったのに、母の突然の他界。
プライベートなものを仕事に持ち込むつもりは全く無かったが、どちらも私が当事者で動かなければならなかったので、時間がなにしろ不足だった。

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母の遺骨を山荘に持ち込み、長い付き合いのウェブデザイナーさんと最初のコンタクトをとったのが、8月の軽井沢である。

HP作りは、夫が14年前開業したクリニックのアイデンティティを絞り込むことから始まった。

毎晩のフレンチディナーや大量のプレゼントが供されるメガ・ホスピタルに無くて、18床の小さな産科クリニックにあるもの。

それは、医師やスタッフがすぐ傍に居る近さ(緊急時対応のスピードと親近感)、アットホームな居心地の良さ、画一的でないきめ細やかなサービスだ。

それをワンフレーズで英語で言い表すために、英会話を習っているJohnnyまで引っ張り出し、練りに練って「Always with You」(意外にフツー)が固定される。

デザインは女史に、リアリティーを出すために現場の写真や文章は私が、と分担して、オンボロ一眼レフを持ち歩いて私が撮り貯めたクリニック風景は500枚を超え、その中でもこれぞ、というものをデザイナー女史に送り続けた。

そのレンズを通して見たのは、前述もしたが、普段見逃していたスタッフ達の真摯な働き。

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丁寧で温かいドクターの手。

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診察の進行のさりげない補助。

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産後のひとときを癒す会話。

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新生児を注意深く見守る視線。

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フレンチシェフはいないけれど、食器一つからひとつひとつ吟味と工夫を重ねた食事。

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決して表に出ることの無い庶務。

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勤勉で信頼厚い助産師達。

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最後まで写真撮影に抵抗したこの方には、なぜか(女房にはわからん)「今度こそ院長に!」とラブコールしきり。

最後の仕上げ時には、孫の誕生と入院、直属スタッフの病気や移動と、イレギュラーな出来事も重なり、ほぼ毎晩他の仕事を終えた真夜中に、デザイナー女史とHPをいじり倒した。

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夜の静寂に包まれた待合室に、

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朝の訪れと共に患者様が来院して、クリニックが動き出す。

この生き生きとした雰囲気やみなぎる意欲を、今度のHPで何とか表現したかった。
そのため、写真はできるだけ人物が映り込んでいるものを使用した。

ファシリティー作りやとHP、FBでしか私の出番は限られているのだけれど、やってみて改めて見直すと、(本当に手前味噌でごめんなさい!!)なかなかいいぞ、ウチ!、と思ったりするのである。

「これは削って」「あれを入れて」という午前1時の矢継ぎ早のリクエストに、根気よく付き合い、一貫して丁寧な制作に徹してくれたデザイナー女史に心から感謝。

そんなウチのHP、どうぞご覧ください。
http://nishijima-clinic.or.jp/index.html



ふじみ野、RDS [クリニック・シンドローム]

その日は何だか朝からそわそわして、カメラのバッテリーにも抜かりなく充電してクリニックへ行く。
その日私はクリニックの人間ではなく、患者の義母で、生まれてくる新生児の祖母になるはずだったからだ。

・・・・で確かにそうなったのである。

12:00。

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執刀する長男と補助の夫がオペ室に入室し、「よろしくお願いします」ってな感じで。

長男と夫がおヨメさんの帝王切開を行い、孫を取り上げる。
身内でワイワイな感じのリラックスムードあふれるOPE風景が想像できた。

妻であり、母であり、祖母である私には、孫の生まれ出てくる瞬間はもちろん、普段見ることの無い夫のメスさばきや、5年間で不肖の息子が培ったはずの技量を確認する希少な機会だった。

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すっと一筋、長男のメスが走り、ヨードの黄色の上に赤く細い糸を描いた。

計測器のサイン音を凌駕するジョキジョキというハサミのあまりにも現実的な音に、人体のオペというのはもっと繊細なものだと思っていた私はビビりまくった。
振り払っても、振り払っても、私の頭の中は、お母さんヤギがオオカミのお腹をハサミでざくざく切って、7匹の子ヤギを助け出すシーンでいっぱいになった。

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私の躊躇には無関係に(当たり前だが)、あっという間にベビーが出て、大きな産声をあげた。
オペ開始からものの10分と経っていなかったように思う。

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自分のお産の時もそうだったように思うが、ささっと視線の端で手足の指の数なんかを確認する。
あとになって、そんなことは無意味なことだと分かるのだが。

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胎脂を拭いてもらったベビーはママのもとへ。

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その間、テントのこちら側では、後産の処理が続く。

出血も少なく、それほどスプラッターな光景でもなく、安心なお産のように思えた。

長男が我が子を抱っこしたのは、ようやく術衣を脱いでから。
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おヨメさんがストレッチャーで運ばれていき、クリニックの中で最も緊張を強いられる空間であるOPE室に、ほっとした和やかな空気が満ちた。

何だか外の空気が吸いたくてスタバに行き、ラテとクロックマダムを緊張で硬くなった胃に流し込んでクリニックに戻ると、新生児用の大きな救急車が入退院入口に横付けになっていた。

「まさか、うち?!」

まぎれもなく、うちであった。
長男のベビーはRDS(呼吸窮迫症候群)と診断され、一度もママの腕に抱かれずに、遠い岩槻の小児医療センターに搬送されていった。

肺サーファクタントという肺界面活性物質の分泌が未熟で欠乏し肺が呼吸で十分に膨らまない症状で、さまざまな呼吸障害がおこるのだそうだ。

未熟性であり、特に奇形は見られないとのことなので、とりあえず呼吸器を付けて、正常な呼吸ができるまでのNICU暮らしとなった。

一人目の碧ちゃんがヒルシュスプルングを持って生まれてきた4年前、私たち家族は、「無事なお産は決してあたりまえにはやってこない」ことをしっかりと自分の身に刻んだはずだったし、その確率が産科医療従事者の家に振り分けられた意味を何度も考え直したはずだった。

でも、2番目のあかりちゃんが普通に健康に生まれ育ち、碧ちゃんも元気に生活している今、その意味や確率や下りたステージを忘れてしまっていたように思う。

救急車を見た時、私が「うちじゃないよね?」と一瞬でも思ったことは、他の新生児への該当を思ってしまったということだ。

4年前、一度自分の気持ちを涙で洗い流し、真っ新にして前を向こうと思ったあの気持ちをもう一度取り戻して、ベビーの回復を待ちたいと思う。




ふじみ野、クリスマスツリー [クリニック・シンドローム]

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連休の渋滞に巻き込まれながら、山荘にたどり着くと、一面錦絵の世界である。

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例年はクリニックの開院記念行事で忙殺され、この一番いい時期は見逃してばかりだった。
今年は少し冷静に状況を見つめたくて、行事を行わず夫と二人、夏の喧噪を洗い落とした軽井沢にやって来たのである。

金曜日は連休前で診療・トリートメントが炎上状態。
加えて午後遅くから「若い衆たち」とのクリニック内のクリスマスの飾り付けが始まった。
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3mのクリスマスツリーは、ほとんど大工仕事である。
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外構部のツリーのイルミネーション付けは、寒風吹きすさぶ中でのほとんど渓谷の電線工事状態である。
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今年は寂しげな印象の白いオーナメントを除いて、私が青山のフランフランで大量に買い込んだ「赤いオーナメント」をプラスした。
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それを2階のソファラウンジに配置。
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内外ダブルツリーが楽しめるという趣向だ。
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去年は、震災後の節電要求と自粛ムードがまだ世間には沈鬱に存在しており、「若い衆たち」とツリーのイルミネーションを実施するかどうか直前まで頭を悩ませたものだ。

でも、闇に灯をともす習わしは、こういう時こそ必要でしょうと、ご近所からのクレームがあったら全部私が引き受けるつもりで点灯に踏み切った。
クレームは一件も無かった。

今年、またクリスマスの準備ができることを幸せに思う。


ふじみ野、院内情景 [クリニック・シンドローム]

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HP改訂のために、仕事の合間を縫って院内風景を撮り貯める。

キャパとテクニックの限界はあれど、レンズを通すために注視して情景を切り取ると、普段見えなかったものが見えてくるものだ。

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日曜の待合室の白のボリューム。

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廊下に落ちる影の角度。

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整列した精密持続点滴機の秩序。

そして、患者様を支える笑顔たち。

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私の新しい試みもスタートした。
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外来でのハンドマッサージで、初日は3時間で12名の患者様の手に香りを届ける。
マッサージをしながら患者様たちのクリニックとの関わりを伺っていると、私の方が癒される思いである。

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私がたどり着いた医療機関におけるアロマテラピーの、小さな小さな始めの一歩である。


ふじみ野、改装後 [クリニック・シンドローム]

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夫が珍しく、知人と軽井沢へ行ってくれたので、土曜の夜は存分に遅くまでHP改作に頭を悩ませる。

明けて日曜は、午後到来予定の台風と競争するように、晴れ間を縫ってクリニックの改装後の写真撮影に追われる。
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外来は以前より無彩色のグラデーションが家具に反映されたことにより、建物の白と、カラフルなドアがより引き立って見えるように。

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一方、カフェテーブルしかなかった2階のラウンジには、ソファが入って寛ぎのスペースに。
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天気の良い日には、広いウッドデッキでティータイム・・・・ができるようにしたい。
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2階ラウンジの一角にあったキッチンセットを取り払い、フリーハンド&フットマッサージコーナーに。
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入院ラウンジはトップライトの光が降り注ぐ大テーブルをセッティング。
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竹林をバックにした2階の大開口の前のソファには、(外来スペースなので)夜訪れる人がいないのが残念。
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ファシリティーは整い、患者様をお待ちしている。


ふじみ野、クリニック夜景 [クリニック・シンドローム]

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3ヶ月を要した改装工事が終わりに近づいた。

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本日は朝から家具の入れ替え作業である。
カラフルな診察室や内診室の扉が引き立つように、モノトーンのチェアが並ぶ。

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待合室の新しい顔は、コルビュジェのLC7である。

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ホールに張り出したカフェが、空中の空間に浮き上がる。

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屋上ウッドデッキから室内へのアプローチ。

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入れ替え作業だけで、日がとっぷり暮れてしまった。

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明日の診療を待つ佇まい。

コンセプトは・・・・

Always With You.......




ふじみ野、アンダー・コンストラクション [クリニック・シンドローム]

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今、ようやくこの平和な光景の意味が分かる。

9.11。

日本のTVは朝から震災後1.5年の特集で埋め尽くされ、それらをひととおり眺めてエイヤっと立ち上がり、取りかかった身支度の間パウダールームで聞き流すAFN(American Force Network)は9.11追悼インタビューオンリーである。

それぞれに負った傷跡を無にすまいという覚悟がそれぞれの国土を覆う日は、思いを焼け尽くそうとするかのような厳しい残暑である。

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クリニックが、やや大掛かりなリノベーションに乗り出してはや3ヶ月。
クリニックの白壁はバイオ塗料とやらで再塗装され、エーゲ海に浮かぶミコノスの家々のように、陽光を反射する眩しさに生まれ変わる。

拝啓、團先生。白い建物って、白さを維持する意地(とお金)が必要なんですね。
(遠い目)

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出発点のウッドデッキ(腐りかけていた)も、着々と到着地点に向かって進行中。
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ちょっと職人技っぽい光景。
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反射熱で50℃以上はあろうかと思えるフライパンの上のような作業場である。
本当にご苦労様です。

入院、通院されている皆様には何かとご不便をおかけしているが、このリノベーションは震災前に企画して、その後の余震と節電規制で昨年は断念したものである。

新しい目標に向かって粛々と建築や作業を重ねていけるというのも、平穏であることのひとつの象徴であるように思う。

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新しいコンセプトのもと、リスタートを切るのはもうすぐ。

よろしくお願いします。



クリニック、こちらクリニック企画部 [クリニック・シンドローム]

20年前の悪夢がよみがえった朝である。

軽井沢から帰ってしばらく顔がかさつくような、過敏になったような気がし、シミも増えた感じがしていたのだが、月曜の朝、顔全体が痛痒く腫れ上がっているのに絶句する。

20年ほど前、テニスにのめり込み過ぎて、自分としては致死量の紫外線を吸収してしまったらしく、同じようなアレルギー症状が出た事がある。
ひと夏を棒に振り、目出し帽をかぶる勢いで日なたは決して歩かず、夜になると町に出没したあの経験をまた繰り返さなければならないのかと思うと気が滅入る。

お約束通りステロイド剤を処方され、塗った結果のムーンフェイスで人前に出るのは辛くて仕方がないが、このトシで無防備に軽井沢の日光にさらされた罰である。

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仕方がない。
1ヶ月、せめて心の美しい日陰の女でいよう。
(なんのこっちゃ)

ひらひらと尻軽ぶりを発揮できないこんな時こそ、10月に改装を終えてリスタートするクリニックやオフィキナリスの運営プランニングを本腰据えてじっくり練る絶好のチャンスと考えよう。

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松阪相談室、9月1日開設!

この道40年の総師長が、妊娠・出産・育児のご心配、ご不安のご相談を個別にお受けいたします。
現在通院中の方ならどなたでも無料、予約不要です。
お気軽にドアを叩いてくださいね。
(タグはDon't Disturbですが、きっと使用中なんですね)
詳しくはHP、院内掲示にてご確認ください。

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CCC, coming soon!

What's CCC?(ECCじゃないですよ)

ご期待ください。

こちら、クリニック企画部でした。
(部員は今のところ私一人。内外問わず部員募集中)


ふじみ野、アロマテラピー講座を終えて [クリニック・シンドローム]

自身で行うのは1年数ヶ月ぶりのアロマテラピー講座が終了する。

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ジエチルトルアミドを使わない、エッセンシャルオイルの昆虫忌避作用を利用した虫除けスプレー作りは、「沈黙の春」後のささやかな主張でもある。


母が亡くなった後の処理手続きや片付けに追われ、講座の準備が進まなくて気持ちが重かったが、延期や中止にせずにこれは絶対に実施すると決めていた。
多岐にわたる出席者のバックグラウンドを鑑みて、「イギリスの医療現場のアロマテラピー」の報告よりもベーシックなアロマテラピーの紹介に時間が割かれ、曖昧な講座になってしまったことを、まずはお詫びしたい。

当初講座を「医療現場のアロマテラピー」としたのは、やはり自分がそれを運営する当事者で、セラピストの報酬や運営コストを賄うには、「必要性」という収入の大前提が日本の医療現場ではあまりに低いと痛感していたからだ。

私はこれまで、それが日本のアロマテラピーの歴史の浅さから来る、医療従事者や受け手のニーズの低さによるものと考え、運営円滑化のために、講座や両親学級での10分講義のようなもので裾野を広げようと試みて来たが、今回イギリスの医療現場のアロマテラピーの視察で、その運営が100%ボランティアと寄付で賄われている、つまりビジネスとして(多分あえて)成立させない実情を目の当たりにし、認識違いを自覚した。

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(St. Luke's cancer centre, Fountain centreのHPより)

アロマテラピーが生活に深く根ざしたイギリスでさえ、こういう形態で運営されているということは、そもそも医療現場でのアロマテラピーには対価(=利益)の発生がそぐわないということではないだろうか。

医療現場でのアロマテラピーの受け手(患者)は、医療という大きな第一義としてのトリートメントを既に受けている人たちだから、アロマテラピーは医療の手の隙間からこぼれ落ちたもの(多くは精神的なダメージ)を拭うことしかできない。

しかし、Fountain centreに寄せられた、どれだけ多くの人々が対価を目的としないセラピスト達の行為に勇気づけられ、救われたかというメールを読めば、これはむしろ対価を要求しない方が自然で、利益を追求しない行為自体がまさしくセラピーともなるのだと気付かされる。

イギリスほど、アロマテラピーもボランティアシステムも普及していない日本で、これをそのまま取り入れることは難しいが、ジョアンナが当初4人のセラピストで始めたというこのシステムは、医療現場でこの先もアロマテラピーを続けていくであろう私に一つの方向性を与えてくれた。

アロマテラピーをまじめに勉強する人ほど、医療現場というシリアスな場面に憧れて、そこに職場を求める。
しかし日本ではその多くが、その地味さと報酬の低さから、他業種やエステ系、物販系に軸足を移す。
結果、日本の医療現場でのアロマテラピーは停滞する。

今日の講義では、本当は、そんなマニアックな話がしたかったけど、それは無理。

出席された皆さんが、私の本当に拙い講義でも「楽しかった」と言ってくださったことを励みにして、また明日からこの問題に取り組んでいこうと思う。







クリニック、ロンドンワークショップ報告会 [クリニック・シンドローム]

第6回オフィキナリス講座のお知らせ。

英国アロマテラピー事情報告会
「医療現場でのアロマテラピー」

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ロンドンでのワークショップにおける、アロマテラピーの本場イギリスならではの医療現場視察を、スライドを交えてご報告します。同時に夏に役立つ精油をご紹介、虫除けスプレー作りを実習していただきます。

2012年7月19日(木)10:00~12:00 にしじまクリニック
参加費:1500円
お申し込みは049-262-0600またはクリニック受付まで。

どうぞご参加ください。



ふじみ野、建物探訪 [クリニック・シンドローム]

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フィリップ、ふじみ野へようこそ。

竣工後7年を経たクリニックの建物の改装を考え始めた矢先の3.11。
その後の余震と節電で、足場を組む真夏の工事などもってのほかと一旦はあっさり断念したが、さてどこかではメンテナンスを入れて良好な状態をキープしなければならないのが自前ビル持つ辛さではある。

震災後1年が経過したのを見極めてから改装費を3社に見積もらせたら、その額が思うより大きいのと、あまりにもばらばらなので、考え込んでしまう。

いったい、いつ、どんなメンテナンスを入れるべきなのか。
今、それは必要なのか。

施行会社や銀行は自己利益にリンクする意見しか言わないのは分かっているので、ここはひとつ、専門家の目で見ていただこうではないか。

・・・というわけで、英語を習っている次男の友人フィリップに、ふじみ野までお出まし頂くことになる。

震災後、日本のボスの混乱で香港のプロジェクトをキャンセルされ、帰国間際の今は英会話講師で糊口を凌いでいるが、もともとはカナダのハーバードと言われるMcGill大学http://www.mcgill.ca/出の優秀な建築家志望の青年である。

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竣工時に近隣の夫の友人たちが共同で植えてくれた枝垂桜が今年はこんなに見事に咲き、古びてきた建物に頑張れとエールを送ってくれているようだ。

本当なら建築に携わっている次男の意見を聞くべきところ、べトナムにいる彼はほぼ音信不通。
No news is good news.とあきらめている現状を見かねてか、フィリップはその代役を務めんと、図面と照らし合わせつつ現場を見回り、施行会社の見積もりを付き合わせていろいろなアドバイスをくれる。

日本の担当者と話すようには意思の疎通が出来ていない気がするが、なるほどなーと思える観点がいくつかあり、やっぱり餅は餅屋だなと思う。

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クリニックを愛してくださる方がこんなふうに居る限り、メンテナンスをしっかりやって、上質な環境を維持していきたい。

Thank you, Philippe.

夜は上福岡の割烹「よし川」で、ご主人渾身の日本料理を。
http://r.gnavi.co.jp/a733900/

たった一人ですべての料理をクッキングするご主人の姿を、建築家を選ばなかったらシェフになりたかったフィリップは、amazing、amazingと写真撮りまくり。

最大34人分の料理を一人で操るコツは、すべて下ごしらえにありとおっしゃるご主人。
人の見えないところでの労力が結果を制するという意味では、建築と料理は似ていると思う。



朝霞、大腸検査 [クリニック・シンドローム]

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なんとシュールな。

At the end of every summer.
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なぜかなし崩し的に体調が悪くなる私である。

去年は老廃物溜め込み過ぎで2キロ体重が増えたのだけれど(冬の間に現状復帰済み)、今年はお腹の調子が大変悪い。

『困ってるひと』の後でこんなことで騒ぐのは大変憚られるのだけれど、年も年だし、ここらで一丁ちゃんと検査してみるかということになる。

胃の内視鏡は何度か経験が有り、傍が騒ぐような苦痛をあまり感じない方だ。
普段人に褒められることはあまり無いけど、オエオエもせず騒がずおとなしいので、毎回これだけは「上手ですね」と賛辞を頂く。(上手なのは私でなくドクターなのだけれど)

この際だからやっちまえと先生がおっしゃり(夫の同窓)、マルチスライスCT(被曝するやつ)で肝臓、膵臓もぶった切る。

結果、食道炎、胃炎、肝臓血腫が見つかる。
「ストレス溜めないでね。背中から強いマッサージ受けないでね」で終わりである。

最後の難関は大腸検査である。
聞く話によるとかなり屈辱的なポーズを強いられるらしいので、避けまくってきた検査である。

しかし今一番気になるのがお腹の張りで、先月あまりの苦しさに過呼吸になりひどい目に会ったので、もうアナボイダブルである。

まず腸を空っぽにする準備が検査の4日前から始まるのだが、ある種の食物だけが摂取禁止となるだけで、アルコールはその中に入っていないと勝手に解釈してワインなんぞも摂取してしまう。

しかーし!

前日はレトルトの限定食しか食べられず、かつ午後服用指定の下剤を飲むとトイレのドアの前で仕事しようかと思うくらいである。
夕食はレトルトのポテトスープのみで、その後フラの練習をしていたらさすがにお腹が空いて倒れそうになる。
夜中1時頃、誰かに「シャンパン飲みてー」とメールしたくなる(されたほうは絶対迷惑である)。
本当にお腹が空いた時って、ご飯じゃなくてシャンパンが飲みたくなるって初めて知る。

なのに朝起きたらまた大量の水摂取と今度は座薬を某所に突っ込まねばならず、もう究極のデトックス状態である。
もう私の大腸には何も残っていない。
絶対的な確信が生まれる。

自然療法でもデトックスが完了するとかなり精神的なリフトアップがあると言われるが、そんな感じである。
空腹も感じず、妙にハイである。

指定された朝一番に受付を済ますと、てきぱきナースが術衣と紙製のパンツを渡してくれ、「穴が空いている方を後ろにして履いてください」と言われる。
この時点で私のプライドは木っ端みじんに砕け散る。

検査はものの10分であった。
人体において、普通は上からモノが下っていく道を逆走させるのは、あまりにもシュールな情景である。

「なんにもないねー」というドクターの言葉が、その超現実さへの代償である。

9月17日。
55年の人生で培ったプライドをすべて検査室の床に埋める。










東京病院、起死回生 [クリニック・シンドローム]

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GWのバンコクからトランクに詰めて持ち帰ったものは、カレン族の民芸品やセント・レジスの豪華なブロウショウより、大きくて重い不安だった。

まず、それを今日ここに記せることの幸運を喜ぼう。

世の中にご自分の癌という病をカミングアウトして闘病記を綴るブログは多くあるが、その勇気と冷静さに自分は遠く及ばない。

夫の左肺に影がある、とPETの画像を見たバンコク病院の医師の診断を、この1ヶ月、私はどうしてもここに書くことができなかった。

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バンコク病院の診断を受けて帰国後すぐ紹介先の病院を訪れ、まずレントゲンを撮る。
無情にもやはり影は存在し、あらゆる検査の中で一番苦しいと言われる気管支鏡検査に進むこととなる。

バンコクでの結果に対しては、まだ多少楽観していた夫も私も、この時点でほぼ覚悟を決める。

実際の問題として、気管支鏡検査に要する3日の入院だけでも、その間のクリニックを任せる医師の手配に奔走しなければならないのに、もしその後に治療が続いていくとしたら、いったいクリニックはどうなるのか。
肺の影は本当に偶然に見つかっただけだったので夫の体調はいつもと変わらず、それだけに今後のクリニックの運営のほうが心に重かった。

毎日の憂鬱に白い布を被せるように、本や英会話レッスンへの没頭を装ったブログを書き綴ったり、新潟で産科医をしている長男とも今後を巡って葛藤があったりし、そんな毎日に疲れ果てる。

この病気を経験しながらも今を健康に生きている人をたくさん知っており、癌が不治の病でなくなって久しい現代医療の側で働いている身なのに、あまりにも心がざわつく自分が情けなかった。

検査入院の日程が決まって大学からの応援で留守中の医師の手配も完了し、休診の掲示を院内のインフォメーションとHPにアップする手はずを整えて、昨日再度CTを撮るという夫に付き添い、清瀬市の東京病院へ赴く。

CT を撮った後、長く沈鬱な待ち時間を経て、我々と同じくらいの年格好の担当の女医の前に呼ばれ、私はこれから自分たちの人生を変えていくであろう夫の肺の影を直視するつもりで、目の前の画像に目を凝らした。

「無いんですよ」

女医は夫の肺をあらゆる角度から、マウスでスライスさせながらそう言った。

「先々週まであった影が、どこにもありません。炎症だったのでしょうか。これでは異常なしと診断せざるをえないということになります」

足元から崩れ落ちそうな安堵感と、でも心のどこかではこうであるはずだと信じたがっていた根拠の無い確信がわき上がって来る。

起死回生という四字熟語はあまりにもポピュラーに使われすぎて安っぽくなっており、これくらいのことで使ってはいけないと思うけれど(本当に文字通り死に直面して戻って来た人だっているはずだから)、ツーアウト満塁逆転ホームランを打ったような気がした。

明日からまた、バンコク病院での診断の前と同じ時間が流れ出すと思うと、素直にうれしかった。














ふじみ野、回帰する夏 [クリニック・シンドローム]

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扇風機、初めてON。

西日の当たる、院長室とは名ばかりの倉庫然とした小部屋で、やって来たクールビズでない保険屋さんがあまりに汗を流すので。

小学校低学年の頃まで、実家にはクーラーが無く扇風機が回っていたような気がする。

暑さも今ほどではなかったのかも知れないが、それでも30℃を超す夏の日はあったように思う。
私達は帽子を被せられ、ホースで水を掛け合い、汗をかきかき飽きもせずに外で遊び、縁側でスイカを食べる時だけ側で扇風機が首を振って風を送ってくれていたものだ。

いつから扇風機が無くなったのだろう?

エアコンの台頭で室内の気密性が高まり、子どもは盛夏に外で遊ばなくなる。
汗をかきにくい体質が問題視されるようになる。

この夏、東日本でエアコンをがんがんつけようという人は皆無だろう。
クリニックでもまず6台の扇風機を購入し、職員から使い始めることとなった。

使ってみると、なんとその風の優しいことよ。

足先を冷やすことも無く、身体がだるくなることも無く。

風が起れば手元の書類は吹っ飛ぶものだという当たり前のことさえ忘れていたけど、背中を摩るような風が運んで来たのは、40数年前、真っ黒に日焼けして故郷の庭で笑い転げていた私。

こうして、あの震災は、いろんな人の時計を巻き戻していくのかも知れない。

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断熱材の入っていないコンクリート打ち放しで、反エコの権化のような我が家には、ダイソンのタワーファンを買ってみる。

パワフルな風体だが、意外に穏やかで、確かにムラの無い風が送られて来る。
消費電力40W、音も静かではあるが、1台がクリニックの扇風機7台分という値段に釣り合う機能かどうかは疑問。
あっさりとミナサンのマーキングの標的になったのが悲しい。

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エアコンが珍しかった時代へ回帰するのだろうか、夏。





ふじみ野、毎日がアロマテラピー! [クリニック・シンドローム]

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春の日射しがいっぱいに入るクリニック2階のラウンジで、患者様対象のアロマテラピー講座『毎日がアロマテラピー!』を開催する。

お伝えしたいことが有り過ぎて、何だかごちゃごちゃした内容になってしまって猛反省中である。
こんな時だからこそ、自分のブレーカーを落とさないために使ったアロマテラピーを、本当は今日お伝えすべきだったと思う。

震災後は押し寄せる問題が多過ぎて精神や感覚がものすごく尖ってしまい、私自身がブラックアウトしそうで(実際の停電も含め)、震災後の一週間は、緊張でがちがちになった身体をとにかくほぐすために、毎日ラヴェンダー(Lavender:Lavandula officinalis)とローマンカモミール(Chamomile:Anthemis nobilis)をどぼどぼ入れたお風呂に入ったし(2瓶が無くなりそうだった)、ラヴェンダーは寝る前に首筋に直接塗って寝たりもした。

二週間目からは「余震うつ」と「原発うつ」になりそうだったので、ベルガモット(Bergamot:Citrus bergamia)とライム(Lime:Citrus aurantifolia)をブレンドして部屋中に拡散しまくった。
まさに「毎日がアロマテラピー」状態だったのである。

香りは期待を裏切らず、停電で止まることも無い。

今日の私の拙過ぎる講座から、この頃誰もが抱えている憂鬱を拭う端緒を見出して頂ければと思う。
妊娠中にトリートメントに通われ、今は立派に子育て中の「卒業生」の皆様のお顔も沢山見られ、懐かしく嬉しかった。

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義妹がくれた太陽電池内蔵の小さなライト。

階段室に置いておくだけで、夜は勝手に光を放ち出すおりこうさん。

節電のため照明を落とした階段室がぼんやり明るくて、ちょっとほっとする。
(撮影のために後方の照明を点けています)

クリニック、こんな時こそ [クリニック・シンドローム]

「70万、反古にしていい?」
と夫に尋ねた。
「いいよ」
と夫が言った。

実は今週末、私はひとりで香港に旅立つはずだった。
前にも書いたが、ペニンシュラホテルの「ウィンターエスケープ」プランを楽しむために。

香港の古い町並みを訪ねたり、夜のイルミネーション街をオープントップのバスでぶっ飛ばし歩くオプショナルツァーも申し込んだばかりだった。
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早ければ6:20から停電になるかも知れないという情報が飛び交い、5:00から起きて(というか、ほとんど眠れなかった)身支度やミナサン(トイプー3匹)の世話をし、患者様の朝食に穴をあけないように指示を出すために、クリニックがパニックにならないように、対応するため家を出た。

自分たちだけならどんな我慢もするけど、患者様にはそんな思いはさせられない、という思いでいっぱいだった。

計画停電するなら、いっそばっさりして欲しい。
その代わり、あんたのところはこの時間だとはっきり表明して欲しい、と思いながら歩いた。
私の車にはガソリンが無かったから。

着くと、クリニックは第1グループだと医師会から連絡があったと、泊まり込んでいた夫が言った。
でも第1グループで予定されていた6:20からの停電は無かった。
へたり込むような安堵感と疲労感がどっと襲ってきた。

その後午前中は、計画停電への対応策をクリニックのHPにアップする算段や、厨房との今後の給食への予測策、患者様へのインフォメーション作成に追われた。

午後からは東上線がストップして出勤できないセラピストに代わって、入院患者様へのサービスのアロマトリートメントにかかった。
私以外の二人のセラピストは県外から来ているため、交通手段が確保できない現状が続けば出勤が期待できず、停電になれば暖房も水も供給不可能なので、無料のアロマトリートメントサービスは打ち切るしか無いと思っていた。

午後、今日は停電を回避したとのニュースを受け、二人の患者様の施術に踏み切った。

一人の外国人の患者様が少したどたどしい言葉で、
「地震のあった日に出産してとても怖かったけれど、夫に、お前はこんな日にクリニックにいられてラッキーだった。クリニックは絶対安全なのだから、と言われた」
とおっしゃり、
「トリートメントはとても気持ちよかった。生き返ったような気がした。退院後もまた来たい」
ともおっしゃった。

クリニックは絶対安全。
その言葉は重い。

そしてこんな時だからこそアロマテラピーは必要なのだ、と思う。

地震そのものの恐怖が収まっても、その後にやって来る物資不足、ライフライン切断への不安。
そんな中で出産し、赤ちゃんを抱えて被災後の社会へ出て行かれる患者様が、ほんのひとときでも安らぐ時間を自分たちが作り出すことが出来るなら、アロマテラピーは最後の最後まで続けるべきだ。

セラピスト二人に「泊まりがけの覚悟で」出勤するようメールを打ち、彼女たちが来るまでは自分の手だけでもアロマテラピーを続けようと思った。

旅費を払い込み、すでにキャンセル可能な期間が過ぎている香港旅行を設定してくれたエージェントに、権利放棄のメールを打つ。
日本がこんな思いをしている時に、自分だけのうのうとペニンシュラのスイートに泊まるなんてことが、許されるはずが無い。

明日の停電が気にかかる。







クリニック、計画停電 [クリニック・シンドローム]

被災後からうわさでは流れていた「輪番停電」「計画停電」がついに実施されそうだ、ということで、昨日日曜から、クリニックではその準備、対応に追われた。

日頃、こんなにも我々の生活は電力に支えられており、電気が無いとできないことがこんなに沢山あるのかと愕然とした。

昨日は職員全員に電話連絡網を使って、需要不可欠となる電池や水を始めとする物資を購入してクリニックに集める指示を出し、停電時の緊急マニュアルを再確認した。
休み中にも関わらず、多くの職員がそれぞれ混乱の中、物資を確保に走ってくれたり、家にあった様々な緊急物資を持ち寄ってくれた。

設備の整った大規模な中核病院と異なり、個人病院はこのような場合、あくまでアナログで人力に頼るしか無い。
職員の中には、近辺では手に入りにくい物資を、九州の実家に依頼して大量に送ってもらうよう手配してくれた者もいた。
ありがたくて涙が出そうになった。

もっと早く、もっと詳しく、このような事態に突入する前に情報と準備期間をもらいたかった。
いったい何時から停電するのか、一晩ほとんど寝ずに情報を収集しようとしたが、東京電力のHPにもアクセスできず、TVの情報も錯綜した。

停電の中でお産をしなければならない妊婦さんを思うと、心が崩れ落ちそうだった。

しかし、東北で被災した人々を思えば、我々も何らかの不便や苦しみを少しでも背負い分けなければと思う。

ここは頑張るしか無い。
状況の中で自分たちが出来る最大のことを患者様たちにするのだ、と夜中クリニックに詰めていた夫が陣頭指揮を執る。

私もこれから出勤して対応にあたる。


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計画停電実施対応について (患者様へ)       平成23年3月14日

先週の巨大地震につき、計画停電が実施されることになりました。
医療機関も例外ではありません。
つきましては以下の要領で、クリニックの運営につき、皆様のご理解ご協力を心よりお願いいたします。

1.にしじまクリニックのグループは「1グループ」です。TV、東京電力のHP等で1グループの停電時間をご確認ください。
なお、今後にしじまクリニックのHPにおいても朝8:30までに、当日の停電時間をできる限りお知らせいたします。
2.停電時間中は緊急の患者様以外の外来患者様の受け入れを一時的に中断いたします。
上記の情報であらかじめ1グループの停電時間がお分かりになりましたら、その時間の外来への受診はお控えください。緊急事態を除いては受け入れができなくなります。
3.入院、分娩、手術は停電であっても問題なく行うことができます。むやみにご不安になることなく、クリニックにお越しください。
4.停電の間、電話が通じにくくなることが予想されます。緊急の電話以外はできるだけクリニックへの電話をお控えください。電話が通じず、緊急の場合に限り以下のメールアドレスへメールをお送りくださるか、直接クリニックへお越しください。
mana-n0821@softbank.ne.jp

入院中の生活全般、サービスについては、通常より若干低下し、ご不便をおかけすることもございます。職員一丸となってできるだけご不便が少なくなるよう鋭意努力してまいりますが、被災地への皆様への思いも込めて、皆様のご理解をお願い申し上げます。

東京電力よりの情報が錯綜しており、上記のインフォメーションも今後変わることも予想されます。その都度クリニックのHPに、新しい情報をアップいたしますので、患者様におかれましては常にHP情報にご留意いただきますようお願い申し上げます。

                                       にしじまクリニック 院長


 

クリニック、毎日がアロマテラピー! [クリニック・シンドローム]

こりゃー!

ヘアアクセサリーだ、クロムハーツだって、オマエは仕事しとんのか!

ごもっともです。
人生のネタっぽいところだけを抜き出しているのがこのブログですから。

しかし!
仕事あってのこのワタシ。

行政指導にも行ってきたし。
28日までしかない2月の月末処理に汗もかいたし。

春は学びのスタートライン、というわけで、こんな講座も予定しています。

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第3回 オフィキナリス・アロマテラピー講座

毎日がアロマテラピー!

               
           
            講師:西島眞奈
           (英国IFA認定アロマセラピスト、同アシスタントテューター)
            日時:平成23年4月14日(木)10:00〜
            場所:にしじまクリニック2階ラウンジ
            費用:1500円


 にしじまクリニックの患者様を対象としたアロマテラピー講座も3回目となり、昨年2回の講座を受講された方々から、日々香りを楽しみながら健康的な生活を維持していく習慣が広まりつつあることをうれしく思っています。
 今回は妊婦さんに限らず、にしじまクリニックにカルテのある方全てを対象に、日常生活への楽しいアロマテラピーの取り入れ方を分かりやすくご紹介いたします。講座の後半では、実際にご自分のレシピでオイルをブレンドし、お持ち帰りいただく実習も取り入れています。
 皆さまのご参加を、心よりお待ち申し上げております。

お申込みは049-262-0600またはクリニック受付まで。

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こらーっ!

竹内まりや、パクったろう!
『毎日がスペシャル』。

はい。
申し訳ございません・・・・

ワタシめが毎日取り入れて、年間熱も出さず365日フル稼働して、仕事、英会話、フラダンスetc.にいそしむことが出来る原点を皆様に知って頂きたく、企画しました。

今回は、妊婦さんに限らず、にしじまクリニックに一度でもかかったことのある方ならどなたでも参加できる内容にしてみました。

春は学び始めるチャンスです。

ご参加、お待ちしています。




上福岡、熱く必死に [クリニック・シンドローム]

さあ、年末恒例、NC名物大忘年会。

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今回はボク、アキバ系オタク代表がレポートしますよ。
だって、AKBもKARAもモー娘。もっていう豪華出演陣って聞いたんで、はるばる秋葉原から電車乗り継いで、埼玉のとあるこの町に来たんですが、う〜ん、なんかね、ボク、ちょっと戸惑い系?

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えーっと。
出席者だいぶ少ないですねー。

あ、そういうことなんですね。
皆さん楽屋にいるみたいです。

何でもこの忘年会、出席者は全員出演者でもある、と。
初めの方は、席に座って飲んだり食ったりしている人なんかほとんどいないわけです。
自分の出番が終わると、ようやく皆さん席に着かれてくる。

11月初旬からグループごとに企画練って練習したんだということですね。
でも、ここ産婦人科クリニックですよね。
太田プロダクションじゃないですよね?

「仕事も遊びも必死でやれ」っていうのが、ここのリーダーのモットーみたいだけど、オタクは「必死」って言葉とシチュエーションを回避しながら世の中渡ってますからね。

あ、リーダーじゃなく院長でした?
ま、どっちでも大して変わんないでしょ。
ボクたちとは対極にある人格だと思いますよ。

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例えば、こういう純体育会系も、ボクたちとは180度目指すところが違いますよね。
なんか、こう熱いのがウザイかもしんないです。

AKBは可愛かったですよ。
ちょっと育ち過ぎた感じの人もいたみたいですけど、ボク、年上嫌いじゃないです。

だけど、ウソだろーっていうのがおニャン子クラブでしたね。
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年上嫌いじゃないって言っても、オジサンとマッチョと50過ぎのオバハンはイタかったですね。

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遠目だと判りにくいんですけどねー。
この3人、年齢は右から31、31、54(!)だそうです。
チケット代(あるなら)返せって話しですよね。

モー娘。って、曲だけかい!がこれでした。
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あの麺類のCMバージョンだったんですね。
ほんとのモー娘。出せって叫びたかったですけどね。
リーダーが着ても着なくてもあまり変わんない関取の着ぐるみ着て踊ってました。

リーダーはエンディングでもう1回登場。
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2人のフラダンサーを従えて、ウクレレ弾きながら『My Little Grass Shack in Kealakekua Hawai'i』を英語で歌い上げました。
ほんとに熱いオッサンだなと思いました。

なんかこういうの見ていると、さっきは熱いのがウザイって言いましたけど、年1回くらい必死にバカ騒ぎしたいっていうのは、普段熱く必死に人の命に向き合っているからなんだろうなあって、ちょっと判った気がしますね、ボク。

この演し物の一部始終は専属の宣伝マンが撮影してて、YouTubeに投稿しようかって話しもあるらしいんだけど、皆さんこのノリ、どう思います?



自宅、2分の1 [クリニック・シンドローム]

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てぶくろを片方失くしてしまった。

二つで一揃いの片方を失くすことは、一つで成り立っているものを失うより、より喪失感が大きい。
それは二つあってセットとして完成されるものだから、何の役にも立たない片割れが残っているのが、より寂しさを掻き立てるんだと思う。

「夫婦」というのはもちろん夫と妻両方を指す、日本ではごくポピュラーな言葉だけど、英語でこの言葉と同じ意味のワンワードはいくら探しても見つからない。
married coupleとかwife and husbandとかは言うけれど、一つで言いきる言葉が無い。

この日の〇ルリッツのインストラクターCrisにそれを問い、彼も必死に自分のiphoneで探していたがやはりそんな言葉は無さそうである。

日本より夫婦単位の社会が発達しているお国柄だが、日本のようにセットで1(つまり2分の1が二つ)と考えるのではなく、1+1で2という考えなんだろうと思う。

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今年12回目を迎える恒例夫プロデュースの大エンターテイメント『開院記念ゴルフコンペ』は、大騒ぎのうちに幕を下ろし、年間最大の肩の荷を私も下ろすことになる。
翌日、フラと〇ルリッツへ行くのも、もう気持ちとしては這いつくばって電車に乗るくらいの疲労感である。

縮小、後退、遠慮という言葉は大嫌い、努力、ゴージャス、突進がモットーの超肉食系夫の派手な演出は、このご時世にはおおよそそぐわない。

しかし、以前は見えなかった彼の老いや疲れも2分の1としてははっきりと感じることができる昨今、こうして自分を鼓舞し、自分のプロデュース力と求心力を信じきることで、彼は年間800件以上のお産の責任を一人で負うという途方もないストレスに、打ち勝とうとしているのだと思う。

2分の1としては、いつかぽきりと折れはしないかと案じつつ、またあまり突っ走らぬように後ろで手綱を引きつつ、見守るしかないのである。

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じーっと。

自宅、思い巡る時 [クリニック・シンドローム]

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「おい、はよ床暖入れろや。寒いやないか」

入れます、入れます。

もう晩秋通り越して初冬だねー。

今年のトレンドはファーブーツ!
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南極越冬隊が履いているようなブーツが可愛くて、1ヶ月前にゲット。
ついに履く機会が到来か!

・・・いや、土砂降りじゃダメでしょう。

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こっちはチープなレッグウォーマーだけど、ブーツ要らずの暖かさ。

それなら、これでよかったのじゃ?て話しになると困るけど。

足元を暖かくして、氷雨というにふさわしい冷たい雨の中フラの自主レッスンへ。

ホイケ(発表会)を12月に控え、練習が厳しさを増す中、一人の仲間が戦列を離れていく。

この事実は結構私にとってショックだったのだけど、本当に辛いときに何かを手放すことで気持ちがものすごく楽になることを、私は夏のハワイで思い知った気がする。
自分が一生懸命続けてきたことをリリースするのは勇気が要るが、それが必要な時って絶対ある。
やめる代わりに得るものが大きければ、それはすべきなのだと思う。

私はどこまで頑張れるか。

昨日は、LSAで教育実習をした時の生徒さんが、札幌からわざわざクリニックを訪ねて来てくださる。

「日本にアロマテラピーは、あまりにも曖昧な形で定着してしまった」とは、我がウェブサイトの管理者の名言だが、ゆえにIFAのライセンスの意味を十分理解してセラピストを雇用する、善良博識な企業や医療事業主が少ないことに心が痛む。

若いアロマテラピーの希望の芽を守り育むことは、先に現場に入った我々がすべきもう一つの仕事なのだろう。

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北海道から保存バッグに入れて持ってきてくださったヨーグルトとブルーベリー酢のドリンクを頂きながら、そんなことを思い巡らす夜寒である。

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