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自宅、バンダヂの中は・・ [ウッド]

い〜い天気!

みどりの日、改め昭和の日は、快晴。
ようやくの休日は私に「働け!」と命令しているかのような天気である。

洗濯、布団干し、雑草取り、観葉植物の水やり。
思いついて始めたちょっとした部屋の模様替え。
玄関ホールで客を出迎えるバンダヂ(李朝の衣装入れ)の上のアイフォーカスを、タイの青銅鐘から、英国のストゥ・オン・ザ・ウォルトで一目惚れしたラリックのアンティーク・ガラスボールに変える。

ラリックを置く前に、バンダヂを開けてみようという気になる。
中にはお茶とお花の先生をしていた叔母が老人施設に入る前、たった一人の姪である私に譲ると言って送って来た着物がぎっしりだ。
(もっとも叔母は「辛気くさい」と1年もしないうちに施設を飛び出して自宅に戻ってしまい、長姉である母を激怒させたが)

若い頃結婚に失敗しその後独身を通した叔母に、私は本当にかわいがってもらい、幼稚園の頃から一人でぬいぐるみを抱えてバスに1時間ほど乗って、その叔母の家に泊まりに行っていた。
旦那さんも子供もいない、茶室のある家は、わさわさしている自分の家とは全く違った独特の雰囲気で、それがまた妙に子供の探究心を誘ったものだ。

母が着物を全く着ない人だったので、私も着物を着る習慣が無く、また前にも書いたように洋服の立体感、クチュール感がものすごく好きなので、この年まで着物を着ようと思うことは無かった。
しかし少し前にベリーショートのヘアで、着物のうえにダウンのベストを羽織り、ポルシェのボクスターで颯爽と走る達人が紹介されたグラビアを見て、着物への概念が180度変わった。
あ、こういう着方でもいいんだ、と。

いろんな方から着物が似合う体型なのになぜ着ない、と言われてもいたので、一念発起、GW明けから着付けを習うことにした。
時間が無いので、自宅に教えに来てくれる先生を紹介してもらった。
その準備として、バンダヂを開けようという気になったのである。

重い金具を上げて蓋を開くと、中から樟脳=カンファー(Camphor:Cinnamomum camphora)の強い香りが立ち上る。
カンファーは抗炎症、殺菌作用に優れるが、ケトン類の中でも特に毒性の強いボルネオンを多く含むので、EOとして肌に使用することはほとんど無い。
虫除けとしてこうしてタンスに忍ばせるのが最も一般的な使い方だろう。
叔母がこちらに送ってくれた時にすでに入れてあったもので、小さな匂い袋にいれ、いくつか着物の中に挟んであった。
叔母がこの着物たちをどんなに愛していたか、そして私にどんな気持ちでこれらを託したのか、その丁寧な匂い袋の縫い方で分かるような気がした。

叔母は体格がよかったので多分身幅も丈も詰めなければならないだろうが、仕立て直して着られるようになったら自分なりにアレンジして、大事に着よう。
最初送られて来た時、大量の着物を見てうんざりし、その後何年もバンダヂを開けることはなかったが、叔母の気持ちはひっそりと今日を待っていたような気がする。



クリニック、ベンジャミン・フランクリン曰く・・・ [ウッド]

「ベンジャミン・フランクリン曰く、”今日のことを明日に延ばすな”」

GWが近づき(もう入っている方も・・・)クリニックも、オフィキナリスもフル稼働である。
その合間に何とか動き出した使いにくいVISTAで、月末の振込や決算の処理をする。
ひとつひとつできることからやっていかないと、気を許したら最後、仕事の海に溺れそうである。
・・・・で冒頭の言葉が私の座右の銘である。

小学校の5,6年を担任していただいたキムラ先生は、溌剌とした体育の先生で、動作も言葉もきびきび、私たちが怠けていると一言、「ベンジャミン・フランクリン曰く、”今日のことを明日に延ばすな」。
小学生にはベンジャミン・フランクリンが誰だか、何をした人なのかも分からなかったが、くどくどと叱られるより、その一言で、「今できることを今やっておかなければいけないんだ」と何となく悟ったものである。

夫は反対に「今しなくていいことは明日でもいい」という人なので、私との生活サイクルは大幅に違ってくる。
いつかはやらなければならないことを「今日でなくてもいい」と先延ばしにするので、ぎりぎりになって大慌て、が普通である。
見ていると歯痒いし、キムラ先生に代わって「ベンジャミン・フランクリン曰く・・・」と説教を垂れてもみるのだが、全く意に介する様子も無い。
却って私がなんでそんなにくるくることを進めるのかが分からないらしく、昨日は量販店で立ったままリップバームを塗っている私を見て、
「お前、疲れてんの?」
と気の毒そうな顔をされた。

私がベンゾイン(Benzoin:Styrax benzoin)、サンダルウッド(Sandalwood:Santalum alba)、フランキンセンス(Frankincense:Boswelia carterii)などのウッドや樹脂系、ハーバルの中でもパチュリ(Patchouli:Pogostamon patchouli)やヴェチバー(Vetiver:Vetoveria zizanoides)のように重い香りを多く使ってしまうのは、こんな目紛しい生活サイクルを背景にして、自分の体と精神が舞い上がらぬよう、それを自然に欲しているからだと思う。

かのベンジャミン・フランクリン(100ドル紙幣のお顔です)もウィキペディアを見る限りにおいては、多彩な語録と活動の記録があり(今日のことを明日に延ばすな、という言葉は残念ながら見つからなかったが)、一日一日を忙しく過ごした人のように思える。
そういえばフランキンセンスって「フランクリンのお香(インセンス)」って感じの名前ですよね?(本当は『真正なお香』という意味みたいです)







大曲交差点、ヘルプ・ミー! [ウッド]

レッカー車に乗せられて去っていく愛車から出して運んだエッセンシャルオイル40本が入ったケースはずっしり重く、また2時間以上も首都高高架下の排気ガスの中にハイヒールで突っ立っていたため、足は冷え、浮腫んでいたので、まず自分のためにレモンユーカリ(Eucalyptus lemon:Eucalyptus citriodora)で足をマッサージする。
レモン様の香りが気分をすっきりさせる。

私の人生、なんでこんなオモロイことが起こるねん(使い方、合ってますか)、と思う出来事が時々ある。

場所は新目白通り、飯田橋までもうちょっとのところにある大曲交差点の一つ手前の信号だ。
信号が青になり、右車線のとっ始めにいた私はアクセルを踏んだが、エンジンの回る音がするだけで前へ出ない。
?????
ブレーキを踏んで何度もギアチェンジを試みるが、ギアはNレンジに入ったままだ。

後続車はあきらかにイラついていて、運転手がすごんだ顔でこちらのバックミラーを睨むのを見ないようにして、ハザードを出してディーラーに電話する。
自分の声がパニクって震えているのが判る。
ディーラーの指示でいろいろやってもだめで、ついにエンジンを切り(その後二度とかかることは無かった)、ロックをして安全のため車から離れる。

大通りの真ん中に取り残され、後続車にぶーたれられながら佇んでいる愛車を反対側の歩道から見ているのは切ない。

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大通りのど真ん中に立ち往生したイタリアの貴婦人。


ディーラーがレッカーを手配してくれたが、年度末の週末、道は大渋滞、1時間はかかると言う。
1時間も人々の好奇の目に曝されているのは忍びなく、愛車にはかわいそうだが「私、あの車とは関係ありませんから」というスタンスに移行することにする。
まあ、辺りの印刷会社関係のビジネスマンだらけの昼下がり、ぴらぴらワンピースを着て突っ立っていれば、明らかにハザード・イタ車と私は⇒で結ばれているだろうと想像はつくのだが。

そのうち、なんと自転車に乗ったお巡りさんが2人、愛車の脇にやってきてしきりに中を覗き込み、なにやらピンマイクで報告している。
え?やば。故障で止まっていても道交法違反なの?

仕方ない。
信号を渡って、これ私の車です、と申し出る。

「ああ、故障しちゃったの?いや、不審な車が道路の真ん中に止まってて中に誰も居ないって地元の人から通報があってね。中で倒れていることもあるからね。」
と明らかに交通の邪魔になっている車に迷惑そうな様子のお巡りさん。
不審な車って・・・竹内まりやに歌われているイタリア生まれの貴婦人も形無しだ。

レッカーがなかなか来ないので、年配のお巡りさんは交番に戻り、見張り役に若い方のお巡りさんが残される。

「ここ、よく通るんですか」
と、手持ち無沙汰の若いお巡りさん。
「はい。埼玉から千鳥が淵に通ってるんです。」
と答えると
「へえ、埼玉はどちら?」とたたんで来る。

どうせわかんないでしょうとは思ったが
「富士見市っていうところなんですけど・・」
と言ってみると、彼の声のトーンが急に跳ね上がった。
「ボク、鶴瀬(富士見市内)なんですよぉ!」

そこからは2人で
「市役所の脇ってらら・ぽーとができるんでしょうかねえ」
「いや、だめでしょう」
みたいな地元ネタで大いに盛り上がる。
大東京のど真ん中でマイノリティ二人ががこんなところでこんな形で出会うなんてねえ、と。
すごい確率ですよねえ!

レッカーが来たのは、トラブル発生から結局2時間後だったが、おまわりさんとの会話は市町村合併まで発展し、最後にはちゃっかり
「結婚なさって赤ちゃんを産むときは当クリニックで!」
と宣伝もしてお別れした。

大曲交番の若いお巡りさん、ありがとうございました。
おかげで大凶かと思った出来事も何だかいい思い出になりました。

ただ残念だったのは、女性が一人、車が動かなくて困っていても、それがおばさんだと通りがかりの車は誰も手を貸してくれないという現実を見てしまったことです。

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同郷だったお巡りさん。こっそり後ろから撮らせてもらっちゃいました。自転車のボックスにマジックで「大曲」と書いてあるのが笑えます。








赤坂、ユーカリが欲しい [ウッド]

フロントガラスに当たる雨粒が、高速を下りた頃からシャーベット状になる。
やっぱり・・・天気予報は当たったな、と思いながら、夜になる帰宅時の道路が心配になる。

「魔の日」というのがクリニックにもある。
外来が混んでてんやわんやの最中に難しいハイリスク分娩が2つも3つも重なることがある。
今は副院長がいるので夫がLDR、OPE室、外来診療室をひとりで走り回り進行が遅れたことを患者様にひたすらお詫びしながら100人以上の外来の受診にあたることはあまり無くなったが、医師が増えたこととクリニックの規模が大きくなったことに比例して患者数も多くなっているので、忙しさはあまり変わらない。

昨日もそんな日だった。
ハイリスク分娩に関わる時のスタッフ達の神経の使いようは筆舌に尽くしがたいものがあると思う。
赤ちゃんを一人助けるたびに自分の寿命は10年削られる、と夫はよく言っている。
昨日は何年縮まったのだろうと思うと心中察するに余りある。

「今日は飲みたいんだ・・」
夫の言葉を受け、よーし、それぐらいは付き合おうではないか、多いほうが楽しかろうと、セラピストのマイちゃんと残業していた医事課のマツとアベチャンも誘って、近所のイタリアンに行く。
夫の心境を思いやりすぎたか、いつもよりワインを飲んでしまった。
・・・で、またで恐縮だが二日酔いの本日となった。

水曜はいつもどおり午前中クリニックでアロマの説明をし、その足で赤坂の講義に出かける。
二日酔いのせいで頭が痛いのかとも思ったが、どうも喉も痛い。
すわ!風邪?
エキナセアのタブレットを口に放り込み、車で出かける。

講義は動物へのアロマテラピーと全くタイムリーなことにユーカリオイルについてで、終わると真っ暗で氷雨が降っていた。
道路が凍結しないうちに、と家路を急ぐ。
アクセルを踏みながら、ユーカリ、ユーカリと頭の中で繰り返す。

帰って一番にお風呂に湯をはりながら、スチームバスを準備する。
今日は美容のためではなく、痛い喉にダイレクトにEOを届けるためだ。
ユーカリ・グロブルスは先日あまりに強力で苦しんだので、本日はユーカリ・ラディアタ(Eucalyptus radiata:Eucalyptus radiata)を選ぶ。
ユーカリには亜種が何十種もあり、それぞれに特長があるのだが、呼吸器に一番という輝かしいタイトルは皆同じだ。
ラディアタを洗面器のお湯に落とし、タオルを被って口を大きく開けて何度も深呼吸をする。
肺の隅々にまで成分が染みとおるのが実感できる。喉はひりひりと沁みて「消毒されている」感いっぱい。
やっぱりすごいなあ~とユーカリの効果を今更ながら見直す。

お風呂には呼吸器に加え鎮静効果も期待してサンダルウッドを入れる。
ウッド系は冬場本当に出番が多い。
お風呂上りにサンダルウッドをセントジョンズワート油で希釈し、チェストラブとする。
体温でふわ~っとサンダルウッドの香りが顔に上がってきて、もう寝るしかない。

何とかこれで食い止めたい。
日曜からはチェンマイへ飛ぶ。



バスルーム、雪見風呂にラッコ [ウッド]

日曜に雪が降った。

いつも日曜はクラブ活動(クラブはクラブでもゴルフクラブだ)に勤しむ夫も、さすがに地面が真っ白では活動できない。
私は月初めなのでレセプトがあるが、朝は比較的余裕がある。
1年に1度あるかないかのチャンスだ。
今朝は雪見風呂といきましょう!

我が家のバスルームはスリーフィクスチャーで、二面に中庭(裏庭?)に面した大きな開口がある。
バスタブに浸かりながら外を眺める、という気負いこんだコンセプトが設計時にあったような気がするが、実際には外からの視線遮断と保温のため、ほぼ1年を通してブラインドを下ろして使っている。
雪が降っても平日ならお風呂に入るのは夜なので、外は見えないし、室内の明かりをかなり落とさないと中庭を通しての視線が気になってなかなかブラインドを上げて雪見はできない。

でも、今日は違う。
夫のためにミニサウナのスイッチを入れ、お湯をはり、1面のブラインドを上げて真っ白な景色をバスルームに取り込む。
晴れている日より心にしみじみと染渡るような明るさがバスルームに満ちる。
湯気で目隠しにちょうど良くガラスが曇り、ちょっとした露天雪見風呂気分だ。
今日の香りはしくじれない。
だって年に1度、いや、数年に一度のチャンスだもの!

雪見風呂ならこれしかない。
軽井沢のサワラのお風呂にジャスミン・サンバックという組み合わせも楽しかったが、ジャクソンのバスタブにヒノキの香りもよいでしょう。
・・・というわけで、パイン(Pine:Pinus sylvestris)を一番に選び出す。
週末からのタイ行きを控え、のどが少しひりひりし出したのが気になってもいたので、これ以外考え付かないというくらいの効用と香りのマッチングだ。
そこに冬は出番の多い柑橘系から変わったところでタンジェリンを多めにブレンドする。
結果は「ィエスっ!!」
何だかコタツに入ってミカンを食べつつ、ヒノキ風呂を沸かすような純和風の気分になる。

丹念に選んだブレンドをいざ入れようと振り向くと、バスタブにはぷっかりとラッコのように夫が浮かんでいる。
早すぎる・・・・・
カラスの行水も甚だしい。
夫はざばざば洗ってさっさとサウナに篭ってしまった。

自分ひとりのために贅沢にパインのブレンドを入れる。
これもまたよし。
ヒノキ風呂に入って雪を見ているような不思議な感覚に捕らわれながら温まる。

うん、これはよい。
これはよいなあ・・・・


自宅、フェイシャル・スチームバス [ウッド]

「プロジェクト」はちょうど折り返し地点だ。

結論から言えば顔の肌の調子はすこぶるいい。
額の数本のしわの深さが、幾分浅くなったように思える。

毎日のケアに加え、週2回、日を違えてスチームバスとパックをメニューに入れている。
乾燥が最も気になるこの時期、フェイシャルスチームバスは最高だ。

洗面器に電気ケトルで沸かしたお湯をはり、ローズマリー、サンダルウッド、ローズウッドのEOを数滴ずつ落とす。
洗面器に顔を近づけ、バスタオルなどを頭から被り、洗面器ごと覆って湯気が外に逃げないようにする。
熱い湯気を3分以上顔に当てていると、最後の頃はぽたぽたと汗が洗面器のお湯に落ちるようになる。
3種類のEOの成分を含んだ湯気は、温まり毛穴の開いた顔面に吸収されて、成分と水分を充分に補ってくれる。
やわらかいタオルで軽く水気をふき取って、セージのハイドロソルでパッティングすれば終わり。すっきりすがすがしい。
最初、あまりお湯が熱かったり、EOを入れすぎるとむせ返るので注意。

ローズウッド(Rosewood:Aniba rosaeodora)は、日本で言う紫檀にあたり、ブラジルのレインフォレストで育つ常緑樹である。伐採が進み、入手が次第に困難になっていると聞くが、樹木でありながらフローラルな香りはすばらしい。
穏やかで妊娠中にも使えるので、妊婦さんの施術においては選ばれる確立がかなり高いオイルだ。
皮脂バランスを保ち、しかも香りが素晴らしいので、嗅覚に近い顔のスキンケアには欠かせない。

毎朝のフルーツピュレも最初はそれだけ、というのがこの季節、身体が温まらず辛かったが、今日はこれとこれを入れよう、と果物を選ぶのが楽しみになってきた。
今のところベスト・ブレンドは、バナナ、マンゴー、キウイ、アムスメロン。
果肉の厚い、水気の少ないフルーツのほうがおいしい。
このフルーツピュレと、毎日20分のウォーキング、ハイドロソル入りの水だけで、身体がものすごく軽くなった。
(実際に体重は1キロ減)
身体が軽くなると気持ちが前向きになるのは、自然の論理だろう。
体重を減らすのは目的ではないが、毒素がその分排出されているのだとしたらうれしい。

劇的ビフォー・アフターを足跡に残すため、自分の顔に向けてシャッターを切る。
あと15日、結果が待たれる。
ちなみに夫はあっけなく挫折した。


クリニック、ヴァニラをどうぞ [ウッド]

天気予報は雪だったがはずれた。
しかし車の外気温をさす目盛りは2℃だ。
クリニックのトリートメントルームは朝6時からフル回転で温めているにもかかわらず一向に温度が上がらない。

このところ毎日のように午前中に妊婦さんの施術が入っている。
気が抜けない。
出産後のクライアントさんが気が楽だという訳では決してないが、妊婦さんの場合はお腹の赤ちゃんを含め二人分の体調を気遣いながら施術するという緊迫感があるのだ。
室温が上がらなくて、もうすぐやってくる妊婦さんが寒い思いをすると思うと気が焦る。

「でも今日のお茶はお勧めですよ。
昨日銀座のマリアージュ・フレールで仕入れてきた、ヴァニラの香りがブレンドされたルイボスティ。ティ・リーフが混ぜ込まれたチョコレートもばっちりです。」

妊娠中に使えるオイルはかなり限られる。
妊娠期はお腹の赤ちゃんを守るため、自然の摂理で気持ちが内側に向き(つまり外側に向かってコトをけしかけない)、愛されたいという欲求が強くなる、と聞いたことがある。
もしそれが本当なら香りも自然と甘いものを好むようになるのではないかと思うのだが、残念ながらイランイランやジャスミンに代表される甘い花の香りはほとんど使えない。
あえてその中でも甘いと言えば、花の甘さではないが、お菓子のヴァニラを思わせる樹脂から採れるベンゾイン(Benzoin:Styrax benzoin)だ。
寒い季節、スースー、すっきりのハーバル系よりこっくりとした樹脂系が好まれるのは、自然の摂理と言えよう。

「土曜も今日もご指名(?)がありました。
シトラス系のオイルとのブレンドは、フルーツ・タルトのような香りに仕上がって楽しいですよ。
このところ人気です。かなり。」

雪空の下、何かを、それが何なのかはそれぞれだが、何かを求めてやってくるプレ・ママたち。
「(あなたの)手が温かくて気持ちがよかった」という言葉に、私の気持ちも柔らかに溶ける。

寒い日にはヴァニラの香りのトリートメントとお茶をどうぞ・・・・。


千鳥が淵、風邪にも負けず [ウッド]

朝から寒くて仕方が無い。

夕べはフラの練習で、しかも今年最後ということで舞台衣装(ほとんど半裸)で1時間半、暖房の無い体育館で素足で踊りまくったのだ。
動いているはずなのに足元からしんしんと冷えが上ってくる。
それでも忘年会という初のお披露目にかける10人のフラ・ガール(フラ・マダム?)の熱意は炎上寸前だ。
お披露目曲、「Green Rose Hula」を最初先生が踊って見せてくれたとき、これは絶対無理、と誰もが思い、あちこちから「えー・・・・・」という諦めとも嘆きともつかないため息が漏れた。9月のことである。
練習は月2回なので実質忘年会までには6回ほどしかない。
途中では2フレーズを繰り返し踊るのではだめか、というかなり苦肉の妥協案も挙がった。

1区切りの歌詞にあわせた振り付けを1回ごとに教えてもらい、2週間後の次の練習までにはそれをすべてマスターしてくるという受験勉強並みの復習課題が課せられた。
だが脱落者は一人もいなかった。
当初せっかく履いたパウスカートを脱いで「私には無理なので帰ります」と言ったツワモノも、みんなに押し留められて這い上がってきた。
昨夜の練習では誰一人として通しで踊れない者は無く、我々の「Greeen Rose Hula」は一応の完成を見た。

終わって分厚いコートを着こんでも、どうにも暖まらない。
ぴゅーっという勢いで、フラ仲間のマイちゃんと居酒屋へ直行、「熱燗、熱燗」と連呼する。
お酒が入ってようやく暖まっても話はフラの続きだ。
「あとは笑顔だよねっ!」と一番大事なポイントに念を押して11時過ぎ、解散となる。

しかし悲しいかな、免疫力の無い51歳。
昨日の冷えは堪えた。のどが痛い。
寒気はずっと続いているが、クライアントさんが来るのでどうしても車で都内に出かけなければならない。
湯冷めしそうなので朝の入浴とシャワーは我慢して、厚着をして出かける。
車の中に携帯用のデフューザーでユーカリ・ブルーガム(Eucalyptus,blue gum:Eucalyptus globurus)を、スピーカーからは「Green Rose Hula」を流す。
狭い車内、のどにひりひり沁みるような香りがすぐに充満して30分ほど走ったところでギブアップし、デフューザーを止め、窓を開ける。
新目白通りと環七との交差点はいつもどおり渋滞だ。

効果抜群なのは肌で感じる。
私の車に染み付いていたわんこたちの匂いまで消毒されて消えている。
しかし、香りはキツイ。

都内のサロンにしているマンションに着き、エキナセアのサプリとハーブティを一緒に飲む。
ユーカリのせいか、のどの痛みはだいぶおさまる。
部屋を暖め、スイートマジョラムを落としたお湯のボウルに手を浸していると、気持ちが落ち着いてくる。
クライアントさんが来るまでにまだたっぷり1時間ある。
ゆっくりとカホロのステップを踏み始める。カオ、ヘラ・・・次々に習ったステップを踏む。
気持ちが盛り上がって来るのと、がちがちだった身体がいつの間にかほぐれているのを感じる。

さあ来い、クライアントさん!
おおらかなフラの振り付けのように、クライアントさんを迎え入れるため心の両腕を広げる。
始動である。


千波湖畔、今宵屋根裏部屋で [ウッド]

12月。  
小さな私はその月に入るとすぐごそごそと屋根裏の物置にもぐりこんで、去年までのクリスマス・デコレーションやオーナメントを点検し始める。
1年に1度しか会えないトナカイやサンタ、きらきらしたキャンドルや星型のオーナメントは、私が箱を開けるのをじっと待っていてくれる。

楽しみは毎年少しずつ父にねだって新しい飾りを買ってもらうことだ。
「トナカイの角が折れた。」
「雪の結晶の飾りが2つ無い。」
と申告してデパートに連れて行ってもらうのだが、もちろん壊れたものだって大事にしまってある。はじけてしまったクラッカーの中身や、ケーキに乗っていたヒイラギの葉まで。

リビングのクリスマスの飾りつけは、小学生の私に一任されている。
たいして広くないリビングだがひとりで小学生が飾り付けるのは大仕事だ。
屋根裏から2階の部屋へ、それから1階のリビングへ、ずるずると引き摺るように箱を下ろす。
「りぼん」の付録まで入っている、大人から見ればガラクタにしか見えないそのダンボールの中にはいつの間にか母が樟脳を放り込んでいる。
箱を開けるとつんとくるその匂いは、いい匂いではなかったけれど、私にとっては一気に去年の楽しさが蘇る大切なツールだ。
カンファー(Camphor:Cinnamomum camphora)を嗅ぐと、今もあの古いダンボールを思い出してときめく。
IFAの規格では使用が禁止されているオイルなのでEOとして手にすることは無いが、私にとってクリスマスの香りはまずカンファーだ。

子供たちが育ち盛りの頃は息子から、
「今年は作らないの?」とせかされてリースを作ったり、マンション用のささやかなツリーを飾ったりしてクリスマスは一大イベントだったが、息子たちが独立してからはイギリス製のガーラントを玄関ホールの階段手すりにたらすだけになってしまった。
このガーラントにはさまざまな花々や果実やつる草に混じって沢山の豆電球が点る。
クリスマスに豆電球を点すのは、三人の賢者が御子の誕生を祝いに夜道を行くとき、その行く先を照らしたろうそくの象徴だと聞いたことがある。
我が家では人生の行く先を探すさまざまな人が迷わぬようにという願いを込めて、自分たちが寝静まった後も夜通しこのガーラントの明かりを点している。





銀座、クリスマス・ティー・トゥリー [ウッド]

クリスマスのイルミネーションがきらめく銀座を歩く。
断然夜が楽しい。
冷たい風に襟を立てながら急ぎ足で横断する人も、佇んで携帯を片手におしゃべりしている人も、みんな待ち合わせをする誰かがいるのだろうとこちらまで楽しくなるようだ。

銀座4丁目の交差点近くに通っている歯医者さんがあるので、予約の時間までソニプラを覗く。フラの舞台のために髪に花を止めるラージピンなるものを探そうか、と。
ソニプラはいろいろなクリスマス・グッズであふれ、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかさだ。
ラージピンは見つからなかったが、もっとすごいものを見つける。
髪のエクステンション。
20年ほどずっとショートカットがトレードマークのようだった私は、鏡の中で流行の巻き髪の”熟女”に変わっている。
フラはロングヘアがお約束。

販売員に装着してもらってそのまま歯医者さんへ。
ドクターもスタッフもは気付いているのかいないのか何も言わない。
治療が終わってご飯を食べるため、さっきの人待ち顔の群集に混じり日産のショールームで友達を待つ。ショールームのガラスに何度も己の髪を映してみる。絶対びっくりするだろうなあ。

おーい、と手を上げてやってきた友達はテニス仲間だった中年男性。
どこで何を食べるかという話にあっさり移行し、え?え?と私はたじろぐ。
気がつかないってあるんだろうか。

パバロッティのような支配人がなぜか伝票を口に咥えて歩き回る、昭和のなごりを濃く残した洋食屋に向かい合って座って初めて私から切り出す。
「ねえ?何か気付かない?」
「うん、鼻が赤いよ。」

食事の合間にトイレに立ち、自分の顔を鏡に映す。
巻き髪よりも大変なことになっているのに初めて気付く。
クリスマスだからというわけでもないのだろうが、以前から左の鼻腔が痛いと思っていたところ、鼻先全体が赤鼻のトナカイのように腫れて発赤している。
中からの細菌感染が表面まで出てしまっているのだ。

受診すべきだろうか、と自宅へ戻り、洗面所で悩む。時計は深夜11時。
家にあるありったけのオイルを出してみる。
原因がわからない感染だとすればやはりティートゥリー(Tea Tree:Melaleuca alternifolia)だろう。バクテリア、ウィルス、真菌と、すべての細菌感染をカヴァーできる。
しかしこれを嗅覚へ直結している鼻腔の粘膜に塗布するのは勇気が要る。粘膜に入り込んだらどうなるのだろうと思うと怖い。
しかし、ええい!と少量のセントジョンズワートオイルで稀釈し、殺菌・鎮痛強化と刺激緩和にラヴェンダーをブレンドし、染ませたコットンを左の鼻腔に突っ込む。
ラヴェンダーが幸いしたのか刺激臭はそれほどでもないが、ぴりぴりと痛みが走る。

EOでさまざまな感染治療に立ち向かったガットフォセとジャン・バルネ博士が夢枕に立ちそう、と思いつつ、しかしその後の寛解状態に満足して眠りにつく。
エクステは洗面所の棚に眠っている。



埼玉、挙式は目前 [ウッド]

もちろん、私のではない。

長男は夫と同じ産婦人科医の道を選んだ。
昼夜を問わない仕事で訴訟の多いこの科は今の若い研修医には本当に人気が無い。産婦人科医不足は社会の大きな問題となっているが、対策は一向に練られていないのが現状だ。

長男は我が家が一番難しい時期に思春期を迎え、自分がうまくいかないのは私たち親の都合で転校を余儀なくされたからだと、私たち夫婦に牙を剥いた。
迷走する長男の生活に毎日涙をこぼした時期もあった。
長男は今もって次の勤務先を決めるのに夫のアドバイスを蹴飛ばしたり、反抗期を未だ引きずっているようにも思える。

その長男が夫と同じ産婦人科を選ぶと言う。
誰もが敬遠するハードなこの科を、だ。
そして結婚する。
それを聞いた時、少なくとも夫のしてきたことは長男に否定されなかったのだ、と思った。

挙式まで数日。仕事も何日か穴を開けることになる。
気持ちも身体もハイになって深夜まで働いてしまう。
深夜2時、ベッドに横たわってファー(Sapin:abies alba)をセントジョンズワート・オイルで希釈してチェストラブ。
当日留袖ではなくソワレを着るので、デコルテの保湿と深い森林浴のような鎮静効果を期待して。
針葉樹の多い軽井沢の森を彷彿とさせて、慌しい気持ちが凪いでいくのを感じる。



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