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軽井沢、98° [フローラル]

▼晩秋、落ち葉に埋もれた山荘


晩秋の軽井沢の楽しみは、犬たちと共に大量の本とCDを持って山荘にこもる事だ。
夫には山荘の冬を越す準備、と断って一人で3匹を車に乗せる。

3匹のうちのクロだけは、自宅を出てからずっと後部座席で「前に行きたい!」と吠え続けている。私の横の助手席が彼らにとってはプラチナシートなのだ。
埼玉から1時間半、軽井沢のインターを下りると紅葉はとっくに終わり、木々が白い骨のように累々と続く碓井峠を超えて、旧軽の街中に入る。真っ先に立ち寄るのは3日分の食糧調達のためにスーパーだ。
いつもは素通りするスーパー横の酒屋さんにこっくりしたワインを調達しようと入ったが、見つけたのはアルコール度数98°というポーランド産のウォッカだった。
2本で3200円。
これこれ、とばかりに買い込む。

山荘は冷え切っていて、ダウンを着たままストーブに薪をくべ、部屋という部屋の床暖房のスイッチをつけまくる。
ひととおり過ごせる室温になると、今度はお風呂の準備だ。
湯船のふたの裏側に、夏の終わりにかわいいコーラスを聞かせてくれていたコオロギたちの死骸がびっしり。
うわあ~と声を上げそうになりながら掃除機でがしがし吸い取ってお湯をはる。
外はもう夕闇が濃い。

お風呂が沸く。
先程の98°のウォッカの出番だ。
ウォッカにジャスミン・サンバック(Arabian Jasmine:Jasminum sambac)のエッセンシャルオイル数滴を溶かし、お湯に入れる。
なんとも陽気でゴージャスな香りがお風呂場いっぱいに満ち、外気は零下の軽井沢が一瞬にして常夏のバンコクのオリエンタルホテルのレセプションになる。
オリエンタルは夫婦でこよなくいとおしんでいる定宿で、到着すると黄金のタイの衣装をまとったボーイが恭しく差し出すガーラントがその香りなのである。
お風呂場に一緒に入ってきた3匹の毛が、ふんわりとジャスミンの香りの湯気でふくらんでいる。

濡れても惜しくない雑誌を湯船に浸かって読みながら、遠いバンコクに思いを馳せ、軽井沢の夜は更けていく。







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