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軽井沢、スパ偵察 [ブレンド・プロダクツ]

軽井沢は芽吹きの季節。
柔らかい色と若い芽の繊細さが重なり合う様は、新緑のレースの布がふんわりこの鹿島の森にかかったようだ。

老齢と認知症で話は半分も通じない両親とミナサンを連れて、山荘入りする。
脳がもはやてきぱきと機能しない二人を見ていると、長寿はめでたいなどという幻想はもはや捨てるべきだと思う。
後期高齢者などと呼ばれ、社会でも完全に邪魔者扱い。
戦後の日本を背負い、雑草のようにたくましく働いてきた両親の年代は、精神的にも身体的にも打たれ強く、ちょっとのことでは病気にならないので、結果、脳の方が先に萎縮して周囲の人間を戸惑わせる。

山荘ではフリッツ・ハンセンの揺り椅子が静かに我々を迎え入れてくれる。
何年も前からそこにあったように、ぴったりと部屋の佇まいに同化して。

山荘へ来る途中、国道から森の中へ入る道の角に、「SPA」の文字を見つける。

かねてから富裕層が骨休めに大挙して訪れるこの別荘地に、都会で大流行りの癒しチェーンが入ってこないことが不思議だった。
オフィキナリスの若いセラピストたちが山荘に遊びに来た時、冗談半分で「みんなでやろうか?」などと話し合ったものだ。

でもついに進出してきたな。
・・・で早速偵察に行ってみる。
モダンなマンションの一階、夕食を済ませ、両親たちが休んだのを見届けた後の夜10時。
Energyという120分のアロマ+フェイシャル。21,000円也。(お値段はさすが軽井沢です)

施術は若い子がぐいぐいと肩や背中の凝りを強く押してくるアロマテラピーとは名ばかりの、癒しチェーンにありがちなものだったし、ガウンの石油系のクリーニング洗剤のにおいも、時間を置きすぎてかぴかぴになり、却って肌に負担がかかりそうなフェイシャルパックも、何となく想像していた通りだった。
「何とかを取って参ります」と行って、何だかしょっちゅう施術者が出入りするのも気になったし、オイル・ブレンドもありきたりのゼラニウムとベルガモットで、終わってからも全く吸収されないべとべと感が残る品質のものだった。

それでも・・・
ノーメイク、サンダル履きで山荘から3分、就寝前にちょっと人の手にかかる贅沢気分。
親たちの世話で絶望ばかりが押し寄せてくる1日の最後に、身体を横たえる別の場所が有るという天からおりて来た蜘蛛の糸。

その糸にしがみついて施術を終え、山荘に戻る。
揺り椅子でひとり、普段は滅多に飲まない缶ビールを開ける。
深夜0時。

どんなところにも救いはあるし、たとえレベルが満たないものであっても状況によってはそれになりうる。
ビールが椅子の揺れで気持ちよく身体の中でシャッフルされるのを感じながら、長い時間そこはわたしだけの世界になる。

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山荘の揺り椅子。黒いのは妹島和世のドーナツ・スツール。

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揺り椅子と一緒にやってきた1940年代のスウェーデンの木馬。山荘の玄関ホールで静かに揺れている。残念ながら乗ることはできない。

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怖い・・・ひょうきんなクロはデジカメに大接近










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