巴里日記、最終章 [セルフィッシュ・ジャーニー]
今日の天気は・・・・う〜ん、こんなもんだろ。
パリに快晴を要求するのは無理だと判ってきた。
もう3回めで、運んでくれるメイドさんも無音のTVニュースもくたくたになったガイドブックも、見慣れたベッド上の朝食風景。
今夜は帰国だ。
コルビュジュ財団が見られなくて、半日スケジュールが繰り上がってしまったので、チェックアウトを済ませてから、ほぼ7時間、どこへ行くか練り直す。
地下鉄に乗ってサクレクール寺院のあるモンマルトルまで行ってみようかと思ったけど、地下に潜って地図上から自分がいなくなるのが怖い。
やっぱり自分の足で歩こうと決心する。
ベタなパリの顔は、後、凱旋門を残すのみだ。
歩いて行けるかどうかは最初のオルセーからポンピドゥー・センターまでの距離が自分の基本になっているので、地図上の縮尺でそれを確かめる。
行けそう、と判断して荷物を整理し、チェックアウトする。
SEZZ。
スタッフもフレンドリーだし、部屋はスタイリッシュだし、食事も簡素ながら行き届いていたので(SUSHIを除いては)いいホテルだと思うが、難点がただ一つ。
壁が異常に薄いんだな。
最初の晩は隣に誰もいなかったのか静かで気付かなかったが、翌日からはしゃべっている言葉が一言一句全部聞き取れるほどで、うるさくて仕方なかった。
まあ、フランス語のリスニングには最適だ。
パッシーの街はセーヌ川岸からせり上がる丘の上にあるので、6号線の駅はこんな高架にある。
トロカデロ庭園のメリーゴーランド。
おじいちゃんたちが孫を乗せに来ている風景は、のんびり平和だ。
その後ろに構えるシャイヨ宮。
エッフェル塔とはセーヌを挟んで対面にある、かっきり左右対称の1937年パリ万博の会場だ。
今はちょっとくたびれている。
イエナ通りを凱旋門目指して歩く途中に、ギメ東洋美術館がある。
光の効果と斬新なディスプレイが、東洋への神秘を際立たせる。
2階の床にはスリットが入っていて、レリーフを上からも眺められる。
一昨年、アンコールワットを訪ねた時、芸術性の高い部分はみんな海外に運び出されてしまったと聞いたが、ギメさん、あなただったんですね。
清時代の衣装は天井に広げられ、テントのようだ。
下では先生の講義を熱心に聞く美術学校の生徒達。
マルモッタンはモネに惹かれた日本人ばかりだったが、ここは東洋に憧れた西欧人ばかりが目につくのが面白い。
写真可、入場無料という開放的な美術館。
地下でのレストランはオリエンタルなメニュー。
ポークのオレンジソースにご飯。
「ブタ、オイシイ?」と片言の日本語で尋ねてくれた店のマダムは中国人かな?
オイシかったです。
イエナ通りの始点に凱旋門が見える。
これはシャンゼリゼ通りから見た凱旋門。
凱旋門の周囲はラウンドアバウトの最上級編みたいなものなので、門へ近づくにはシャンゼリセ通りからの地下道から入る。
そこで塔の上へ登るチケットも買う。
いや〜、ありえない。
272段の螺旋階段は、1回も休むところが無い。
マジで息が切れた。
シャンゼリゼ方向。
反対側のグランダルメ通り方向の正面には新凱旋門。
新しいパリの顔がその向こうの高層ビル群に見て取れる。
エッフェル塔からの眺めに比べると、思ったより平坦な感じだなあ。
降りて石の上に座って休みながら、次男に写メを送る。
「凱旋門だよ」
すぐ返事が来る。
「指、写ってるし」
あら、どうも。
「♪オ〜、シャンゼリ〜ゼ〜」
ジョルジュサンク通りに曲がり、ちっちゃな靴屋?と思いきや、天下のエルメス。
こ、これ、タクシーっすか?!
フランソワ・プルミエ通りからブランド街モンテーニュ通りへ。
プラザ・アテネ。
旦那とだったらここに泊まりたいね。
モンテーニュ通りがセーヌにぶつかるアルマ橋の真ん前のカフェでひと休み。
ここのショコラ・ショゥ(熱いココア)は本格的。
熱いミルクと熱いショコラが別々のポットにサーブされて、好みの濃さで飲む。
歩き疲れた身体に、熱いショコラが染み通っていくようだ。
目の前のアルマ橋は1997年、世界中の注目を浴びた橋だ。
この下を走るレンヌ通りバイパスのカーヴで、レディ・ダイアナと恋人のドディ・アルファイドが事故死。
そのトンネルの上のナポレオン3世の「自由の炎」像は、今やダイアナを惜しむ人々のモニュメントとなっている。
さあ、もうあと30分でホテルを出る時間だ。
アルマ橋から大好きなセーヌ沿いに帰路を辿る。
エッフェル塔が、また来なさい、と言ってくれているような気がする。(言ってません。)
パリに着いた日より、また一段と秋の色が濃くなったような気がする。
6号線が見えて来た。
夕方の家路を急ぐ人々でいっぱいだ。
SEZZのスタッフに別れを告げ、タクシーで夕刻の渋滞に巻き込まれつつ、シャルル・ドゴール空港へ。
ラウンジでメールをチェックしつつ、眠りこけそうになる。
23時半ちょうど、エールフランス機は離陸。
さようなら、パリ。
さようなら、私の一人旅。
7、8時間機内でぐっすり寝て、ふと外を見ると夕焼けをバックに富士山。
明日からは仕事である。
2008-10-10 12:41
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本当にmanaさんと一緒に旅をしていたみたい。
楽しませていただきました。
写真もバッチリかっこよく撮っていらっしゃるし
文章も引き込まれます。
パリの旅行事情に、まったく疎い私でも
これは、かなりコアなパリの旅なのだろうな、と
察しますので。。。
私がもしも出版関連の仕事をしていたら
書籍化のオファー出しますよ、絶対!
by 朋子 (2008-10-10 21:10)
朋子さん、本当にありがとうございました!
(いえ、今後ともよろしく、ですが。)
好きなホテルに泊まって、好きな時間に出かけて、息子達がやっているシビアな一人旅よりかなり甘いですが、旅先ではやはり寂しさがこみ上げてくることもありました。
朋子さんがちょこちょこと顔をのぞかせてくれることがどんなに嬉しかったか。「一人ではない」ことを実感させてくれました。
パリは素敵な街です。
朋子さんも是非出かけてみてください。
私もきっとまた行きます!
by mana (2008-10-10 22:29)
おかえりなさい!!
私もパリの街を堪能させていただきました。
凱旋門のうずまきグルグル階段、眼が回りそう・・・
本当に写真の撮り方がお上手です。
センスグ~です!ってセンス無い私が言うのもなんですが・・・
早速お仕事との事、時差ぼけに負けず頑張って下さいね。
by 日和ママ (2008-10-10 23:47)
日和ママさんも滞在中の暖かいコメント、本当にありがとうございました。
普段仕事に追われていると忘れそうですが、一人になると自分が多くの方々に支えられて生活していることに気付きます。
そんな意味でも一人旅は私にとって大きな意味があったと思います。
時差ボケは前回のプロヴァンスほどではないようです。
新しいトリートメント棟もすぐオープンです。
また仕事がんばります!
お会いできるのを楽しみにしています。
by mana (2008-10-11 08:42)
お疲れ様でした。
素敵と思いながら拝見しつつ
家族から開放されて一人になりたーいと叫んでいる私は
実際には一人で表に立てるだろうか・・・
なんて考えてしまったりして
家族の存在に甘えている自分を実感しました。
真奈さんくらいになった時に堂々としていられるような
母になりたいなーと思いました。
また伺えるのを楽しみに私も仕事頑張ります
by KURE (2008-10-15 14:34)
KURE様、コメントありがとうございました。
一人で勝手に出かけていって、一人で感激感動して、いったいなんなんだよ?ですが、10年前は50mですら一人で出歩くことができなかった私には、大きな意味があったように思います。
一人になると家族の有り難さが身に染みます。
KURE様もいつかきっと素敵な一人旅をなさることでしょうね。
またお会いできるのを楽しみにしております。
by mana (2008-10-16 22:57)