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自宅、ズボンの裾 [フレグランス・ストーリー]

そりゃー奮起もするさ、私だって。

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夫の仕事用のズボンの裾がほつれていたのを院長室に放っておいたら、お掃除のタケウチさんに見つかって一言。

「奥さん、縫える?」

あー、やっぱそう見えるんだよなあ、私。

まあ、ある意味当たり。ある意味はずれ。

意を決し、ソーイングセットを発掘する。
クローゼットの積み重なった箱の一番下。
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今どき、半襟だってデパートの呉服売り場でつけてくれるから、次第に針を持つことが少なくなり、家にある裁縫道具は最小限でベイシックでシンプル。

その中のピンクッションは、私が結婚する時、母が自分の髪の毛を中に入れて作ってくれたものだ。
人毛は適度な油分があり、針の通りがよくなるからと母は言ったような気がするが、何かよく考えるとちょっとコワい。

ズボンの裾を縫いながら、刺繍が好きだった母と日当りのよいリビングに座り込んで、他愛も無いおしゃべりをしながら針を動かした、遠い記憶を辿る。
「こうするとからまないのよ」と母は色とりどりの刺繍糸をゆるい三つ編みの束にし、そこから器用に欲しい色をするすると抜き出してみせる。
そのカラフルな美しさと、まるで繭から生糸を取り出すような不思議さにずっと見とれていた私。

女の子を持たなかったので、そういう思い出を紡ぐことも無く、私はいつの間にか針と糸から遠離ってしまったのだと思う。

そして、図らずもそういう時、
「ねえ、この糸を針に通してくれない?」
と老い始めた母に頼まれたのと同じ悲しい現実を、自分の身の上に発見するんである。

明日は老眼鏡作りだわ。。




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