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水戸、おふくろさんよ、おふくろさん [フレグランス・ストーリー]

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日曜。
本日は「おばあちゃんたちの作品展」である。

朝からの冷たい雨は、沈んだ心にぐっしょりと染み通っていく。

雨の日には傘となり、雪の日にも傘となって(あれ?)自分を守ってくれた親という大きな存在が、人生の終焉に向かって退化していくのを見なければならない日は、やはり心が重いものである。

前回の訪問時、入浴を拒否し続ける母に◯ムラの入浴剤とバスバブルを持って行ったら、大ウケして、
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「今日は登別にしましょう、などと、ヘルパーさんと話し合って、楽しんでいるわよ」
なんぞとうれしそうに☎がかかってきたんである。

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なんか色つけなきゃお風呂に入らないなんて、まるでもう、彼女はちっちゃな駄々っ子に戻ってしまったんだなあと、ちょっぴり悲しかったんである。

それなのに、今度はケアレジデンス入居者の作品展だという話しである。
幼稚園生の息子たちが、私に見てもらい、褒めてもらうために、必死でお絵描きしたように、母も、この日私に見てもらうために、得意のクレパス画を描き貯めたんである。

その前に実家で一人暮らしの父を訪問して、2時間も愚痴をたっぷり聞かされてきた我が身は、さらにずっしりと重くなっていたんであるが、展示会場の前で気が気でない様子で私を待っていた母にはもちろん言えないんである。


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クレパス画を4枚と、20年間続けた俳句を10句と、毎週習っているフラワーアレンジメントを出品した母は、本当にがんばったんだと思う。
それが「我ここにあり」という、彼女の必死の存在表示なのだと思うと、何だか切なくて、今度は私が世の中と(コレは無理)母親の傘になるのだと心に刻み込む。

他の皆さんも、お習字だの、編み物だの、玄人はだしの墨絵だのを出品されており、いつも閑散としている駐車場もいっぱいだったことを思えば、この冷たい雨の中、おじいちゃんおばあちゃんを入居させている家族たちが、レジデンスが作った作品観覧という名目のもとに、今日は集合したのだとじんとくる。

「加齢せし己の身体もてあます 無事に果つるを祈る日々かな」

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どこかのおばあちゃんの短歌に、はっと胸を突かれる。

我々が抱く、自分がどんな形でこの世に別れを告げるのかという漠然とした怖れは、老人施設にあってはすぐそこにある現実である。

おふくろさんたちの作品展は、どこか稚拙で、でもどこか必死で、やはり想像したとおり、非常に重く物悲しかったんである。

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KURE

こんばんは

老人ホーム訪問てホント重いですよね。
私の場合、義父母なのでずっと気楽なのだと思うのですが
それでもキツいなぁと感じる時があるので
お母様だと辛いだろうなぁと思います。

でもお母様、90過ぎてらして
シャッキリされてて凄いですね。


by KURE (2010-03-08 01:59) 

mana

KUREさま、おはようございます。

いろいろ考えましたが、母は施設でお世話になるようになって、とても安定しました。
「友達を30人作る」と目標を立てて、認知症の方とも積極的に接しています。

そんな姿に私も学ぶ思いです。
by mana (2010-03-08 08:24) 

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