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自宅、八十四歳。英語、イギリス、ひとり旅 [マイハーベスト]

一冊の本との出会いが、あまりにも劇的で、自分とつながった赤い糸が見える気がすることがある。

イギリスへ発つ2日前、「買い物しようと町まで出かけたが、財布を忘れて愉快なサザエさん」状態下の本屋で、この本の糸のしっぽを捕まえる。

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「八十四歳。英語、イギリス、ひとり旅」(清川妙/小学館)

ぱらぱら立ち読みしているうちに、55歳でベルリッツに通い始めたことや、イギリスへのひとり旅がどんなに彼女の人生を豊かにしたかの記述を見つけて、もう他人事とは到底思えず、即座にレジに持って行こうとしたが、ランチ食べるお金も無いサバイバルな状況を思い出し、泣く泣く手ブラで帰宅してAmazon経由で手に入れる。

イギリスで飲んだ紅茶の味が消えないうちに、時差ボケで眠れない夜を利用して一気読みする。

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太陽が顔を見せないこの時期にヨーロッパから帰ると、ジェットラグが長引いてツライ。

筆者は53歳でふと思い立って英語の勉強を始め、自分の進歩のスピードに疑問を感じて55歳でベルリッツのマンツーマンレッスンを受け始める。

「レッスンは愉しかった。今から思えば五十五歳という歳は、なんと若く、未来をたっぷりはらんだ年齢だったことだろう」
というセンテンスに、真夜中の燈火の下で思わず涙ぐむ。

2年前にベルリッツに通い始めてから、特に英語必須の仕事や試験という目的も無く、決して安くはない学費と勉強に費やす時間が、浪費だと言われても仕方が無いというビハインドな気持ちがいつも私には付きまとっていた。
この先、この英語を私は何に使うのだろうか。
ただ、旅行がちょっと便利になるだけでいいのだろうか、と。

あとせめて10年若ければ、と何度後ろを振り返ったことだろう。

でも、筆者に言わせれば、55歳は「未来をたっぷりはらんだ年齢」なんである!
そんなこと言ってくれる人が今までいなかったのだ。

現実的な目的があるか無いかなんて、英語を勉強する資質には何の関係も無い。

「ていねいに、ひたすら、書くこと、読むこと、その間に旅することもはさんで生きてきたら、いつのまにかこの年になっていた」

そう!私はそういうふうに歳を取りたいの!

最初は目を合わせるのも厭だった外国の人と、少しずつ意思疎通ができるようになるおもしろさ。
その人たちの目を通して知る、新しい日本と外国の感じ方。
中、高、大学とさぼりまくった英文法の絡まった糸がほどける快感。
書いた文章を褒めてもらえる時の、学生時代にあったような得意な気持ち。

そんな他愛のない喜びを、私とこの筆者は共有している。
そして図らずも、今の私をこの本は肯定してくれている。

この本を、「英語学習方法を知るにはあまり役に立たなかった」と実践的に批評する向きもあるが、これはハウツー本ではない。
これは、何かを勉強することの楽しさに年齢は何の邪魔もしないこと、その勉強がどんなに日々を豊かにするものかを知った人が謙虚に語る人生の歩き方である。


がんばるぞー。








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