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川越、スタッキング可能 [マイハーベスト]

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銀行の担当クンが婚約し、お相手も同銀行の見知った女の子だったので、お祝いの食事を小江戸川越のY屋でセッティングする。

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日本情緒が観光の目玉の川越でもトップクラスという噂に違わず、春の艶かしい夜の庭に開け放たれた古く広大な日本家屋は圧巻だったが、料理がショボすぎて気が萎える。
あの値段で、小鳥の餌みたいな作り置き可能タイプの皿ばかり出され、デザートも「この時間ではありません」(・・・ってまだ9時前だよ?)。

仕方ないので、ワインと日本酒で若い二人との会話を盛り上げるしか無い。
あー、これから3連チャンにつき、初日は飛ばすまいと思ってたのに。

「A部さん、ここに配属になるのは勝手だけれど、私を困らせないでちょうだいね」
「結婚式?私のことは呼ばないで頂戴ね。関わりたくないから」

この春、銀行きってのお局様が鎮座まします支店に移動になった彼女から聞く現代OL事情は、まるでドラマか漫画のようにティピカルなそれである。
昨日までくすくす笑いながら読んでいた小説を思い出す。

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「スタッキング可能」(松田青子/河出書房新社)

普通、通販やオフィス家具カタログの中でしか出会えない語彙がタイトルについただけで、それはちょっと異様で人目を引く。

さらにチャプターのタイトルはエレベーター内の表示パネルで示され、その内容が巨大ビルの何階で起こっていることなのかが分かるようになっている。

どの階にもA村やB田やC山がおり、A村とA田とA山は同じようなことを言い、同じようなスタンスでいる。

例えば5階ではA田とB田が「世の中の女が一人残らずCちゃんみたいだったらいいのにな」と、ふわふわの茶色の髪をして、男どもにアメちゃんどうぞなんて言いながらお菓子をくれるC田を絶賛している。
4階ではC川がケイトスペードのバッグから化粧ポーチを取り出してふわふわの茶髪で武装した自分を見つめ、11階ではC村が男どもに「ちゃん付けで呼ぶな。お菓子で追い返そうとしてアメちゃん食べますかと言ったのに、可愛いなあとテンション上げられて大迷惑」と毒づいている。

いきなりイマドキのギョーカイに放り込まれたような唐突さとおかしさを感じつつも、会社の階層にはどの階にも同じような人物が同じようにすれ違いながらスタッキングされているという、均一性というか統一性(何て言うんだろう、本人達はそれぞれ個性的なのに全体としてみると没個性っぽくなる感じ)が薄ら寒く感じたりもする。

小説というより漫画に近い。

この評価は的を得ていると思う。



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コメント 2

周嗣

薄ら寒く感じた松田青子の今後。

『スタッキング可能』わたしも読みましたが、
すごい小説でした。
言葉の選び方とか良い感じですね。そもそも
スタッキング可能ですからね~。
スタッキングされているサラリーマンが読んだら、
きっと何回かは頷けるはず。

ネットで松田さんの解説をしているサイトを
見つけたので貼っておきます。
http://www.birthday-energy.co.jp
どうやら参謀タイプ、客観的視点の持ち主とか。

毒つくのは・・・らしいけど、それもふんだんに
含めつつ今後もがんばってほしいかも。
次の作品も楽しみにしてようかな、と思います。

by 周嗣 (2013-03-31 10:54) 

mana

周嗣様。
私も彼女の言葉の選び方のセンスを買いました。
無駄が無い、なのに当たり前じゃない。
自分の30数年前(すごい昔ですね)のOL生活、そう思ってたよなあと思える箇所が沢山ありました。
私も彼女の今後に期待しています。
サイトとコメントありがとうございました。


by mana (2013-03-31 19:51) 

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