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鶴瀬、卒業写真 [シトラス]

帰ってきたのは深夜2時、寝付いたのは今朝方だ。

昨夜10時に終わったクリニックの忘年会は、例年通り歌あり、踊りありの大盛り上がりで幕を閉じた。
その後の二次会はこれまた例年通りカラオケで、それが延々深夜まで続いたのだ。

声の幅が極端に狭く、カラオケが、というより歌うことは嫌いなのだが、このところ1年を締めくくる忘年会の二次会だけは参加することにしている。

4床という小さな個人事業で開業した当初は、宴会後の二次会も全員でなだれ込み、大騒ぎをしたものだったが、土地と建物を得て医療法人となり職員数も当初の5倍に膨れ上がった現在では、歌が好きな院長がいくら誘っても皆個人の嗜好が優先して、二次会に参加するのは数えるほどの職員と出入りの営業マンだけになってしまった。
事業を拡大することが強いては職場の安定という究極の福利厚生に繋がると信じて、一人でクリニックを引っ張ってきた夫には、これは結構寂しいことなのだと思う。

狭い音域でも何とか歌える荒井由実の「卒業写真」は、この年になると深い思いが行きかう歌だ。
大学1年の時に知り合ってそのまま結婚した私たちの背景には、いつもユーミンとサザンが流れていた。
医師を目指し、テニス部のキャプテンも務めながらがんばっていた夫、そしてそのテニスコートに声援を送っていたお気楽な女子大生が私。
「あの頃の生き方を、あなたは忘れないで」というフレーズを歌う私の脳裏に、コートを駆け回る夫の姿が大写しになる。

喉も、頭も痛い。
飲みすぎと言うより騒ぎすぎだろう。
仕事は休みだが押し詰まって家庭の仕事が溜まっている。来客もある。
ようやく起き出したが、喉の痛みと胃の重みで朝食を食べる元気が無い。

バスタブに熱いお湯を張って、グレープフルーツ(Grapefruit:Citrus paradisi)をたっぷりと、喉のためにパインを1滴、スピリタスに溶かし込んでバスタブに入れる。
こういう朝は効果がはっきり出る過激なものより、穏やかなオイルを多めに使うほうが好きだ。
香りのブレンドとしては少しすっきりしすぎだが、この二日酔いのどろどろ気分には爽快そのもので、消化と浄化の作用を持つグレープフルーツはこんな日に最も助けにしたいオイルの一つだ。
熱い湯気の中に溶け込んだ香りを思い切り吸い込むと、胃の重みがすっと楽になる気がする。
風呂上りにデトックスのMINを身体の5箇所に擦り込んで、「卒業写真」を口ずさみながら休日の遅いスタートを切る。








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