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バンコク、ポーワンマラーイ [セルフィッシュ・ジャーニー]

2月のバンコクはきらめいている。
夕刻ともなれば、涼しい風が渡るチャオプラヤーを行き交う渡し舟はイルミネーションを点し、水面にその光を映しながら両岸のホテルのドレスアップした欧米のゲスト達を運ぶ。
川に突き出たレストランではシャンパンがはじけ、無数の提灯が揺れ、談笑する声とバンドの演奏が部屋へ流れ込んでくる。
ホテルのこの部屋からそんなチャオプラヤーの風景を楽しむのが、ここ数年の2月の恒例となっている。

毎回ホテルのチェックイン時にスタッフから渡されるジャスミンのガーランドは、まるで大粒の真珠を編み込んだように緻密な細工で、サンバック(Arabian Jasmine:Jasminum sambac)の陽気で華やかな香りを振りまき、「香りを形にする」という意味ではこんなに完成されたものは他にないだろうと思わせる。
去年サムイ島に渡る機内誌に、その伝統的なガーランドの製作レッスンをホテルで受けられることが紹介されており、今度来る時は絶対そのレッスンを受けようと決めていた。
夫の従兄がタイの個人旅行会社の社長さんなので、散々無理を言って何とか手はずを整えてもらった。
最初は市場に花を買いに行くところから始まると聞いてかなり心が浮き立ったのだが、何しろ希望者は私一人らしく、紆余曲折の末、無難なところからのスタートとなった。

渡し舟で対岸に渡ると、黒いスーツ姿の穏やかなホテルのスタッフににこやかに出迎えられる。
案内されたのはトラディショナル・クッキング・スクールの木陰のテラス。
先生はこの人です、と髪の長い若いタイ人の女性を紹介される。
先生はタイ語しか話せないため、先程のホテルのスタッフが英語に通訳してくれる、と言うわけだ。

名前がわからなかったそのガーランドはタイ語で「ポーワンマラーイ」といい、丸い少し大きめのドーナツくらいの花輪(ポーワン=丸い)の下に、数本の花の房(マラーイ)が下がるという形状だ。
ゲストを迎える時、仏陀にお供えする時(タイ人は熱心な仏教徒だ)、結婚式の時、つまりあらゆる場面で歓迎や祝福の気持ちを表すために用いられる伝統的、かつ一般的なアイテムらしい。
「日本では仏陀にお供えする時、花はどういう風にするのか」と聞かれたが、仏教関係に無知な私は「根元をカットして水の入っている花瓶に入れるだけ」と大変アバウトな答えしかできなかった。
もし違っていたらすみません。

すべては1本の30~40センチほどの長い針にゆだねられる。
その針にジャスミンの花一粒一粒を、前列の花と花の間に埋め込むように通していき、40センチを埋め尽くしたらそれを下の糸に慎重に移す。
何しろ支えている手と花を刺す先端が40センチも離れているので、5センチの縫い針にビーズを通すのとは訳が違う。ちょっとしたコツがいる。
最初はこれを40センチ(通す花粒は3000粒くらいか)も続けるのかと思うと気が遠くなりそうだったが、だんだんコツを覚えてくるとスピードも増す。
1粒通すたびに、通訳の年配スタッフがいちいちしたり顔で「right!」と念を押す。
彼女は私の作業をじ~っと見ているだけなので、暇なのだろう、やれ、紅茶を飲め、お菓子を食べろとサービスしてくれるが、こちらは鼻の頭に大粒の汗をかいて必死なのだ。お願いだからほっといてくれ、と言いたいが、手を動かす方に気を取られてナイスな英単語も思い浮かばず、仕方なく形だけ紅茶に口をつける。

1時間ほどでポーワンを、その後の1時間でマラーイを何とか作り上げ、最後に両方を組み立てる。
今はジャスミンの季節ではないので冷凍保存してあったものを解凍して使ったと言うが、その香りは十分に持つ者を魅了する。
バナナリーフの上に「作品」を置いて記念撮影、根気良く教えてくれた25歳のオイル先生とも記念撮影。
2時間半、必死だったけど本当に楽しかった。
日本でも是非作ってみたいので、と言ってオイル先生の長い針を1本譲ってもらう。
日本にはこんなにゴージャスで香り高い小粒の花がてんこ盛りにあるなんてことはないだろうが、もうすぐ咲く沈丁花なんかどうだろう?秋の金木犀はいけるんじゃないか、と心で楽しいアレンジを思い浮かべる。

縁あって何度も行ける場所なら、観光はさておいてこんなふうな現地の体験は本当に楽しい。
ポーワン・マラーイにご興味のある方、是非従兄の(株)新海外にご相談ください。



ポーワンマラーイをつけたブリーダーさんちのぷー。うちのワンコ達の頭は入りませんでした。残念!


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