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軽井沢、緑石のマドンナ [フレグランス・ストーリー]

なんとも残念なんである。

日々溜まっていく、あちこちに散らばった英会話学習の成果を一本化しようとずっと思っていて出来なかった作業を、この軽井沢でしようと意気込んで来たのに・・・
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・・・眼鏡を忘れたんである。

この頃2、3ヶ月もすると老眼の度が進んで眼鏡が合わなくなる。
何だか思っても見なかったスピードである。

だから、その眼鏡無しで細かいテキスト(◯ルリッツ、シニア用のテキスト作ってくれ)を見るなんて、頭痛に肩こりを貼付けるようなもんである。

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束の間の山荘生活なんだから、ミナサンのように、だらけ切りなさいという暗示なんだろう。

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1年に4ヶ月しか使わない山荘だが、1年ごとにいい味を醸し出すようになったと思う。

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毎年何かしら新しい香りを選んで持ってくるので、このアロマキャンドルの数だけ、夏が過ぎて行ったことになる。
過ぎた夏の香りを記憶に保存するように、燃え尽きたキャンドルのポットもそのままテーブルに置いておく。

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家族で過ごした遠い夏の写真は、夫のデスクに。

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チェンマイの柄杓はシルエットを楽しむ。

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ハワイのABCストアで買ったハエたたき。

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「SWATTAH」は世界最強と言われるアメリカの警察特殊部隊。
ハエもテロリスト扱いされちゃかなわんだろ。

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イタリアの緑石と大理石で掘られたマドンナ像。

ここ数年の父の迷走に翻弄された彼女をこの山荘に置く、その意味。

両親がまだ元気な頃、イタリアに二人で旅行して買い求めた、それほど高価なものではないはずのこの石像に、父はなぜか大変な思い入れがあったらしい。

水戸の自宅の一番良い場所に置いてあった彼女を、父は先ず埼玉のマンションに運んで来た。
推定30キロほどあるこの石像を、彼は自分でリュックサックに入れ、背負って来たらしい。
気が進まないマンションに彼女をまず置き、自らの気持ちをそこに追い立てるような、そんな気持ちであったのかも知れない。

そのうちに、「マンションは空になることが多いから、いつも眺めてくれる人のいるお前の家に飾ってくれ」と言い出し、あまり気が進まなかったが自宅に運んでリビングの隅に置いておいた。

そして私の職員旅行中に母を引き連れてマンションを引き揚げに来た時には、「石像が無い」と大騒ぎになったらしい。
旅行から帰ったばかりの私に「お前は自分たちが疲れきってマンションを整理している時に、のうのうと旅行に行っていたのか。大事な石像まで勝手に持ち出したのか」とわめくように父から電話がかかり、私の心は引っ掻き傷だらけになった。

彼女をすぐに毛布でくるみ、実家へ戻しに行った。
彼女の顔も父の顔も、もう見たくない。
そんな思いであった。

ようやく施設へ入居する決心がついた父の荷物の整理を手伝いに行った時、あちこち動かされ過ぎて半分土台が壊れてしまった石像を指し、
「誰もいなくなる家にこれを置いておいたら盗まれるから、お前が持って行け」
と父は言った。

壊れた30キロもある石像なんて、誰も盗みはしない。
一方的に責め立てられた過去を思えば、二度とその石像に触りたくないと思ったが、その石像の居場所が彼の最後の心残りならと、何も言わずその場にあった古毛布にくるんで車に乗せて来た。

しかし、自宅にそれを置く気には到底なれなかった。

この夏、彼女はこの軽井沢の山荘に最後の居場所を定める。
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元気な頃の父が愛した、この場所に。













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