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中野坂上、てふてふイン・ワンダーランド [フレグランス・ストーリー]

『てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った』

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いや、その光景を見たように思ったのは錯覚だったのだろうか。
アジア大陸とサハリン島の狭間にあるという韃靼海峡など、見たことがあるはずも無いのに。

小学校の教科書に載っていた安西冬樹の一行詩は、てふてふという、蝶が必死で羽ばたくような語感と共に私の意識を外に連れ出し、海峡の鳥瞰図を鮮やかに脳裏に描いてみせる。

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いや、フエキといったら糊だったはず。

結局は人差し指でそれを塗りたくるのに、黄色いボトルから、付属のヘラで指を汚さぬように半透明のクリーム状の糊を掻き出すご丁寧な快感を、手のひらに伸ばす。

なぜなら、これはハンドクリームだから。

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いや、ここは来たことがあるはず。

青梅街道と山手通りがクロスする中野坂上の交差点。

4つの角に、同じようなコンクリートとガラスで出来た高いビルはそびえ、自分は以前そのどこの穴から這い出て来たのか判らない。
4本の道は同じようになだらかな下り坂で、東西南北に向かっている。

必死で友達に方向を聞くために電話しようとするが、携帯のボタンを押し間違えてばかりいて一向に繋がらない。
灼熱の太陽がコンクリートに反射して、夢と現の狭間の海峡を溢れさせてしまう。

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アリス・イン・ワンダーランド。

いや、観たくて仕方なくDVD買ってみたが、ジョニー・デップ様扮するハッターは何のためにわざわざ登場させたのかすら、さっぱり判らない。

猪熊教授が講義するルイス・キャロルの、真逆に進んでいく時間がそこには無い。

アリスは自分の頬をつねっても目覚めることが出来ず、煙草を吸う芋虫が成長したてふてふを肩にとまらせて、韃靼海峡へと船出するのだ。


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