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ふじみ野、わたしを離さないで [マイハーベスト]

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タイを離れる時、従兄が持たせてくれた蘭の花を玄関に飾る。

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白いそれだけを、カレン族の美しい篭に入れてみる。

タイ北西部、ミャンマーとの国境付近の山岳地帯に位置する”Sop Moei"(ソップモエ)という地域には、ポー・カレンという少数民族が、未だ電気の無い、世の中の情報から隔離された小さな社会を営んでいる。

妊婦や乳幼児の栄養失調、薬という概念を持たないがゆえの疾病の放置という問題に対応すべく、彼らが生み出す精巧な篭細工や織物を売って現金を得、薬や食料費に当てる取り組みのフラッグショップで購入。
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詳しくはSop Moei Arts/ソップモエアーツ www.sopmoeiarts.infoのウェブサイトへ。
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美しい日曜という日が、年にほんの1、2回ある。

こんな日こそ、どこへも出かけず、家中を開け放し、ソファの上を南から北へと通り抜ける風にほおを撫でられながら心ゆくまで本を読む。
これ以上の贅沢が他にあろうかと思う。

1989年、『日の名残り』で英国最大の文学賞であるブッカー賞を受賞し、一躍国際的作家の仲間入りを果たしたカズオ・イシグロを初めて手に取る。

『わたしを離さないで(原題:Never Let Me Go)』(カズオ・イシグロ/土屋政雄訳 早川書房)
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最近映画化もされた作品である。

介護人キャシーの、淡々として自制の効いた語り口で語られる、ヘールシャムという”ある人々から見れば”恵まれた環境の中で繰り広げられる若い男女の他愛のない日常。
それは、ともすれば途中で読むのを止めてしまいそうになるほどありきたりで、『ライ麦畑でつかまえて』的である。

でも所々に顔を出す、「保護官」「提供」「展示館」というその光景に似つかわしくない言葉が、どうもここが単なる楽しい学園などではないのだということを暗示し、一掴み一掴み読み手の心を物語へ引きずり込んでいく。

語り口があまりに整然として理知的なので(原文を読めるだけの英語力が無いのが残念である。原文で読んでもこう感じるのだろうか)、次第に露になっていく登場人物たちが負わされている宿命を、「残酷な」というありきたりの形容詞で表していいのだろうか、もしかすると当然のようにこんな口調で語られる日がそこまで来ているのだろうかという思いに、足元がざわつく。

本当に偶然に、昨日のベルリッツでは、すでに現実となっているペットのこの世界について意見を交換したばかりである。

何と言っても、イシグロのテーマの選択眼と構成の巧みさが光る。



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