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自宅、パナマ運河百年の攻防 [マイハーベスト]

初夏。


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一番好きな季節。
我が家の猫の額(中庭ともいう)は、一面メキシコマンネンソウの黄色で埋め尽くされる。

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ミナサン(トイプー3匹)は、網戸の下から自由にリビングと水庭を出入りしている。
コンクリートの壁に覆われた我が家の中と外がひと続きになるのは、わずかにこの季節と初秋の数日だけだ。

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クロのプサイも始まった。
(プサイ族をご存じない方はこちらへ。http://ameblo.jp/reonunit/entry-10045218527.html 他人様のブログを勝手に拝借しています)
腹部冷却システムとも言うべきこの独特のスタイルは、もはや夏の風物詩である。

この季節、普通なら外へ外へと心と足が向いていくものなのだが、今年はなぜか読書に明け暮れている。
仕事の合間は、英会話とフラを習いに都内へ出向く以外、すべて本で埋めていると言っても過言ではない。

私の場合、これはあんまりいい兆候ではない。

目の前の大きな考えたくない問題を追い出すべく、脳の容量を読書で満たそうとしているに過ぎないからだ。
必然的に、日常から全くかけ離れたテーマに食いつくことになる。
こういう時、題材は日常から遠ければ遠いほど効果は増す。


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『パナマ運河 百年の攻防〜1904年建設から返還まで』(山本厚子著 藤原書店)

遠いほどいいっていっても離れ過ぎだろー。

私もそう思う。

恥ずかしながら読み出すまではスエズ運河と混同していたくらいだから。

海に囲まれている小さな国に育つと、一方の海からもう一方の海に抜けるための運河の価値というものは、軍隊の参謀にでもならない限り、一生考えることも無く終わるのではないかと思う。

ただの船の通路である運河に、なぜ戦争まで伴った利権争いが勃発するのか。
全長たったの70km、埼玉から千葉までのほどの距離の運河に、列強各国がこぞって触手を伸ばす意味とは。

運河建設の苦労話を期待して取り組んだ本だが、テーマはむしろそちらにあり、山本五十六や野口英世まで登場する史実の解説には、正直ついていくことが難しい。


当時隆盛を誇ったヨーロッパやイギリスにあっては、太平洋に浮かぶ黄金の国ジパングや数千年の歴史を持つ極東の大国支那に到達するには、南北に大きく横たわるアメリカ大陸を跨がなければならない。
コロンブスもそこで力尽きてしまった。
(バスコ・ダ・ガマは逆回り。賢い。)

1513年、スペイン人のバスコ・ヌニェス・デ・バルボアが、南北のアメリカ大陸のウェストの一番細いくびれにあたる、パナマのジャングルを切り開いた陸路をたどって太平洋に到達する。

大西洋と太平洋を結ぶというと、どうしてもウェストのような横の経路を想像しがちだが、パナマ運河は、実は北に大西洋、南に太平洋が位置する南北の通路である。

いずれにせよ、その最も陸地の掘削が少なくて済む部分が、それ以後、二つの大きな海を結ぶ運河建設のルートとして、ありとあらゆる利権の台風の目となったのは間違いが無い。

スエズ運河で大成功をおさめたレセップスを頭に抱き、果てはギュスターブ・エッフェル(エッフェル塔の建築者)まで動員したフランスが、まず建設に着手するが失敗。
そうやすやすと欧州各国に足元を通り抜けられて東洋の秘宝を手にされるわけにはいかないと、アメリカがその後10年をかけて運河を完成させるあたりは、そこに絡んだ何人かの日本人の存在もあって、一気に読める。

運河というものは、海から海へ両海面を水平に水路でつなぐものと思っていたら、閘門式(こうもんしき)運河という、いくつかの水門を開閉させることにより、その中の船舶を26mも上下させて航行させる、いわば船のエレベーターともいうべきパナマ運河のシステムには、興味のシナプスを鷲掴みにされる。

完璧に著者の意図を読み込んだとは言えないが、日々の憂鬱を忘れさせる効果は絶大。

いつか夫婦揃ってリタイア後の生活を楽しむ日が来たら、是非ともこの運河を航行してみたいと思わせる。




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