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軽井沢、山荘の一日 [フレグランス・ストーリー]

朝、ぼんやりと開けた薄目の視界に、何かが映り込む。
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窓際のベッドから寝たまま見上げることができる、屋根を覆って軒先から垂れ下がり出したクロトウヒの一枝。
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実に付いたヤニが朝の冷気を浴びてガラス玉のように光っており、クリスマスの飾りのようだ。

土と草と湿気が混ざった朝の匂いは、子どもの頃ガールスカウトのキャンプでホームシックになった記憶を呼び覚ます。

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エイヤっと起きて、フルーツとハーブティとヨーグルトの朝食。

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「涼しくてほっとするわー。今日は何するの?」

午前中は先日読んだ『日の名残り』のDVDを観るんである。
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筋が分かっているという強みで、思い切って字幕を消して全編を観てみると、実際には半分もリスニングはできていないけど、字幕を見ない分、ダーリントン・ホールやコーンウォールの風景を存分に堪能する。
映画ではスティーブンスは「泣かない」んだなあ。

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「ん?おかん、また雷でっせ!」

昨日と同じように、かっきり時計が12時を回ると森の向こうに雷鳴が轟き出す。
あれよあれよと言う間にその音が近づいて来て・・・

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バケツをひっくり返したような豪雨に、山荘が叩かれ出す。

あちこちの窓を閉め回り、TVもPCも切り、その後はひたすらミナサンとソファに潜り込んで本を読む。

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「お茶持って来てくれん?」

ミナサンの山荘の楽しみ方もこなれてきたような気がする。


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