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自宅、K [マイハーベスト]

通常診療を続けながら、改装工事の最後の締めの調整に走る。

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先に出勤した夫は新しい家具を見て、あれがダメだ、ここがまずい、とクレームで満ち満ちた電話をよこす。

だから最初に相談してんだろーがっ!!

怒り怒髪天を衝く。

工事を計画し、資金を調達し、アイミツをとり、業者を決定し、手配をする。
インテリアのデザインを考え、デザイン事務所に依頼し、家具を調達する。
孤軍奮闘である。

そこを飛び越して結果だけを批評するのは、そりゃー容易いさ。

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朝から飛び回って、あっという間に日が暮れる。

私はまだ帰れない。

本当なら読み終わったその日に生々しい読後感を書きたいのだが、そんなこんなで、この本を読み終えてから1週間があっという間に過ぎてしまった。

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「K」(三木卓/講談社)

同じ詩人同士の妻に先立たれた静かな悲しみが、感情の起伏を押さえて、ひたひたと満ちてくる佳作である。

しかし、その妻は、決して筆者に賢く寄り添っていた訳でもなく、万人から尊敬されるような人格者でもなく、浪費癖があり、夫を何十年も自分から遠ざけて別居を強いるような、良妻賢母のカテゴリーからも、世間一般の常識からも、遠くかけ離れた女性である。

筆者はただその指示に粛々と従い、家計のために別居の中でも精力的に執筆し、その報酬を無条件で妻に手渡し続ける。
自分は、彼女がいて欲しい時にだけ必要で、それ以外のほとんどの時間は不必要な存在なのだということも知っている。

そして、彼女を看取る瞬間、ようやく40年以上の結婚生活の中で最も自分が必要とされている時が来たと思うのである。

これは、男の静かで悲しみに満ちた勝利の咆哮である。
男は、自分をずっと支配下に置き、翻弄してきた妻へ、かくも深き慈愛のまなざしを注げるのである。

妻に先立たれた男の寂しさは、誰もが言い、書き、従ってその類いの本は無数に近く存在する。

朝から不満たらたらの夫よ。
よく聞きなさい。

その逆は、あんまり無いわよ。



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みみちゃん

最近、こちらのブログを知ってファンになったものです。この記事読んで、あ〜、夫というもの、いずこも同じ、妻の奔走もいずこも同じ、と拍手喝采しました。
プロセスを見ず結果だけで、ぐだぐだ言うな!と私もよく心で独りごちてます。
あまりに同感した記事だったので、思わずコメントしてみました。
by みみちゃん (2012-09-30 18:13) 

mana

みみちゃんへ
同士がいてよかったです。
「野党にいて批判するのは易しいが、いざ自分がやると何にもできねえだろう、◯主党!」とか言ってるくせに、です。
おまえもだよ!てね。
by mana (2012-09-30 22:23) 

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