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自宅、ツェッツル [フレグランス・ストーリー]

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明かりが戻った。

ダイニングの照明の電球が切れたのは昨年12月の初めだったから、今までどうしてたって話である。

11年前にこの家を建てた時に取り付けて以来初めての電球交換だし、取り外してみたら、細長くて持ち重りのする見た事も無い(って、今まで付いてたんだろがって話だが)クリアランプは、一目でコジマデンキには売ってないと分かって焦る。

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この照明は、ドイツの照明デザイナーIngo Maurerのデザインで、”Zettle'z"(ツェッツル=紙切れ)という名がついている。
(そのまんまだな)

円筒状のネットに、クリップで和紙を留めた長いワイヤーを自由に差し込むだけのいとも単純な仕掛けだが、初めてこれを見た時、一瞬歌舞伎の紙吹雪を想像した。
コンクリート打ちっ放しのダイニングにゴージャスなシャンデリアでもあるまいと考えた時に、その思い出を彷彿とさせてこれに決めた。

ダイニングの照明って、大事。

なぜならその明かりに吸い寄せられるように家族が集う場所を作るからだ。
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この明かりの下で、明日旅立つ新しい世界への不安と期待を友と語る夜もあるからだ。
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さて、電球探しの旅が始まる。

照明の販売元のヤマギワのHPで電球の品番を調べてネット検索するが、全く出て来る気配が無い。
東急ハンズにも切れた電球を持参して見せるも首を捻られるばかり。

ヤマギワに電話で問い合わせると、現在はこの電球が日本に無いということで(探しても見つからない訳だわ)、フロスト球の代用を紹介される。
早速取り寄せて取り付けようとすると、今度は細長い筒の奥に取り付け口があるので、素人には最後までねじ込めない。

もおおおお!

夫は業を煮やして、別な照明を買って来いと言う。
私の心も一瞬そちらに動きかけたが、この電球でいいと言ったヤマギワに電話してクレームを言うべきと思い直す。

電話するとスタッフが出張して来て1時間以上かかって取り付け、出張料5000円を徴収していった。
11年に一度とは言え、たかが電球交換に要した期間1ヶ月以上、費用が電球代と出張料で約8000円。

光の詩人インゴ・マウラーの世界に浸るのに、これが安いか高いかはユーザーの気持ち次第。

その下で過ごした11年はプライスレスだから、どんなに夫がイラつこうが私にはこの照明を今手放す事はできないと思う。



この家が年を取っていくにつれ、芸に円熟味を増していく役者を偏愛するように、私はこの家のファンになっていく。
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真新しかった頃はただのコンクリートの固まりで、新築祝いに来た義母には酷評もされたけど、思い出と好きなモノがどんどん詰まって来て、表情は豊かになる。
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家の素材に無表情なコンクリートを選ぶ醍醐味はそこにある。
美術館のように、飾るもので表情が変わっていく家にしたかった。
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夕暮れのちょっとした時に、ああ、写真撮りたいなと思う。
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何気なくドアを開けた時にNice!と思う。
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日々の生活を織り込んでアジの出てきたステージでもあり観客席でもある家に、たった一人の自画自賛ファンはそうやってアプローズを贈っている。
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