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自宅、日本語を書く部屋 [マイハーベスト]

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他界を知らずに亡母へ寄せられた年賀状宛に、それぞれ逝去の通知を出したら、そのうちの何人かの方からご丁寧な自筆のお手紙を頂いた。
主に退職後30年近く通い続けた俳句と聖書の勉強のお仲間の方々であった。
こつこつとあきらめずに重ねる勉強の量で周りから慕われていた母の様子を文面で知り、嬉しかった。

「これは一番大事なの」と言ってくれていた米寿にプレゼントしたカーディガンと一緒に、それらの書簡を大切にしまう。
あと数年で私も母が好きな勉強を始めた歳に到達する。

こちら、勉強の量を想像するだけで身が引き締まる。

リービ英雄。
本名リービ・ヒデオ・イアン。
ヒデオは父の友人の日本人が名付けた本名だが、日本人の血は流れていないという。

読んだ本は「日本語を書く部屋」(岩波現代文庫)
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国境、越境という言葉を随所で感じる。
日本語を母国語としない(両親はそれぞれ東欧系ユダヤ人とポーランド人)人物が書く日本文学というジャンルが非常に興味深い。

プリンストン大学で柿本人麻呂を研究。
「日本語は美しいから、僕も日本語で書きたくな」り、他国から日本へ「越境」して多くの外国人がそうするように英語でそれを表現したなら、それは日本語の英訳に過ぎないから、日本語で「原作」を僕は書くのだ、という理由は至極もっともだが、誰もが出来るワザではない。

その彼の日本文学を生み出す背景と思想、大学での講義などをまとめたのが本著である。

日本あるいは日本文学界の排他性、西洋と非西洋の段差。
日本ともう一つの母国を行き来する立場ゆえ生まれる視点や考えは、「単一民族」をどきりとさせる。

数か国を行き来するが故の彼のアイデンティティへの固執や、高度な異質性をはらんだ日本語の感じ方、常にボーダーを意識した切り口を本著では楽しみたい。

海に囲まれた島国で一民族だけが理解する言語に「越境」してきた頭脳明晰な黒船を、我々がどう迎えるかが問われているように思う。

千夜千冊でも。
http://1000ya.isis.ne.jp/0408.html

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