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六本木、長女たち [マイハーベスト]

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べっちゃんとメグが朝の散歩に庭へ出てローズマリーの茂みをくぐり抜けるので、遊びに飽きて部屋へ戻って来た二匹の華奢な体躯からえも言われぬハーバルな香りが立ち上る。

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いい季節になった・・・と言いたいところだが、暑すぎるだろーここ2、3日。

息子達が幼稚園の頃、山形の北村山公立病院に同時に派遣となってほぼ寝食・子育てを共にした大学医局の先生の奥様達とは、夫達がそれぞれの居場所を定め、子どもたちが独立した今もお付き合いが続いている。
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「会おうよ」と決まった2週間前は5月の爽やかな風が吹き渡る頃だったので、どこかおしゃれなガーデンテラスでランチがいい、ということでグランドハイアットのテラス席を予約したのだが、本日東京はまさかの30℃越え。
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それでもテラス席で頑張るツワモノもいたけど、オバサン3人は這々の体で涼しいバー席への移動をお願いする。

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ボリューミィでしかも手を抜いてないハイクオリティのサンデーブランチに舌鼓を打ちつつ、ロゼの冷やしたシャンパンを1本を空けてとりとめなくしゃべり続ける。

12:00集合、2回場所を変えて解散は21:00。
実に9時間しゃべり倒す。
よくぞ女に生まれけり、である。

五十女が集まれば必ず行き着くテーマは親の介護と結婚しない娘。
ある意味、今、最もトレンドなテーマ。

二人に会うために六本木に到着する寸前に読み終えたのが、まさにその濃厚なエキスを掬い上げ、世に問うたこの本であった。

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「長女たち」(篠田節子/新潮社)

自分の介護をさせるために娘の結婚を阻む認知症の母親との葛藤を描いた「家守娘」。
父親を孤独死させた重荷を背負いながら亡き恩師の後を継いで、ヒマラヤの貧村へ医療活動に出向く女医を追う「ミッション」。
自分が生き残るために長女の身体の一部を当然のこととして提供させようとする母への憎悪を究極まで描いた「ファーストレディ」。

最初に生まれたがゆえに、しかも世話や介護を担える女性というだけで、決して長男や他の弟妹には託されない、親の人生の反芻と当然の介護の期待によって自分の人生をかき乱される長女という存在。

2年前に亡くなった母をありがたいと思うのは、認知症という病魔に絡めとられていく底なし沼のような恐怖を自覚しながらも、長女である私に徹底的に迷惑をかけさせない意志を貫き通して旅立っていったことだ。
母は薄れゆく認識の中で、自分に襲いかかる病魔から必死に私の人生を守ってくれたように思う。

3章に分かれた本著の中で一番印象に残ったのは、2章の「ミッション」。
文化に取り残された山村で、村人の誤った食生活を正して寿命を延ばそうと先進医療を持ち込んで啓蒙活動に従事する「長女」が、敗北する瞬間。

村人の短命の原因は、高塩分・高脂肪の日常食。
働きつつあっけなく40代、50代で死んでいくことを前提に世代が上手に交代している村においては、先進国家が悪とするその食習慣こそが彼らの生活の知恵だったかも知れない。

当然のように病人の寿命を延ばすそうとNPOの医師達が先進国の価値観と医療をその村に持ち込んだ結果、仕事ができぬまま苦しみながら生き長らえている老人が増える。
村民の寿命が数年延長したというデータは、実は医師側の自己満足に過ぎず、村民には何の意味もなくむしろ迷惑である。

そのうちに村に入った医療関係者が次々に謎の死を遂げる。

村を去る女医は、その仕事のために父を孤独死させる結果を招いた人生にどう折り合いをつけるのか。

ただ長生きをすることが本当に幸せなのか。

長寿国日本の問題の縮図がそこにある。



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