コ・サムイ、任務完了 [セルフィッシュ・ジャーニー]
まあまあ、4泊もあるのよ、どうしましょう。
休みを取らない日本人の中でも断トツに休まない産科医の家族、リゾートアイランドでのたった4泊の休日に完璧オタオタである。
お隣のデッキチェアのドイツ人家族なんて、2週間の休暇だそうである。
せっかくのスイートジャクージも、我々一家にかかっては間違った使われ方である。
孫たちは、ベトナムからやってきたアニキにべったりである。
だって面倒くさがってテキトーな受け答えをするばあちゃんと違って、ちゃんと大人扱いしてくれるんだもの。
テキトーなばあちゃん。
↓
毎日真っ赤なプールで遊んでは、プールサイドでビール&ワインランチ。
こんな贅沢ゆるされるんだろうか。
・・・と、勤労の日々が恋しくなり始める頃、休暇の終わりは容赦なくやってくる。
It's the time to leave.
プールサイドに運ばれたアイスキューブのように瞬く間に溶け消えた平均的日本人一家の休暇。
今度みんなで会えるのはいつだろう。
思えば今の孫たちと同じくらいの息子たちを連れて、まだ元気だった両親と共に、我々一家はサムイ島と反対側のインド洋に浮かぶプーケット島に初めての一家海外旅行を決行した。
30年近くも前のことである。
まだ海外の学会に頻回出かけて旅行慣れしていた夫がすべてプロデュースして、私は幼子を抱いて訳もわからずついていくだけだったが、夜の誰もいないプールで子供たちにシュノーケリングの練習をさせたり、ヤモリを追いかけながら母が持ってきたカップラーメンをすすったり、人生で一番楽しかった旅行として私の記憶の中では鮮明である。
そんな旅でも日常でも息子たちを本当によく面倒見てくれた母も逝ってしまった。
孫たちと夫が疲れ切って早寝した最後の夜に、二人の息子と3人で語らう時間が思いがけず10数年ぶりで訪れる。
小さなフィンをつけてパトンビーチの入り江を泳ぎ回っていた小麦色のわんぱく坊主たちが今、成長して、傍にいる。
当直ばかりの夫だったので、我が家はいつも3人の母子家庭のようだったし、夫が長い入院生活を送ったこともあった。
相談する相手がいなかったので、家族の行き先はとりあえず一人で決断した。
いつもいつも夫の分まで頑張らなければと、息子たちにはワンマン(ワンウーマン?)だと非難されつつも、張りつめた、それなりのゴッドかあちゃんだったと思う。
でも、もう肩の荷を降ろそう。
息子たちは立派に成長して、気持ちや体力が下り坂に差し掛かった私の傍に、こうして居てくれる。
こんなに愛おしい夜はない。
例えどんなにそうは思わない人からバッシングを受けようとも、母親としての達成感という心の灯火を、私は生涯の道行きとして生きていきたい。
あのプーケットが、両親と我々一家が揃って出かけた最初で最後の旅行だったように、みんな心のどこかでこれが全員揃う最後の旅行かも知れないと感じてるこの旅をプロデュースするのは、ゴッドかあちゃんの最後の務めだった。
ちょっと仕事が・・・と躊躇したホーチミン市在住の次男も、つべこべ言うな、次は無いぞと一喝して呼び寄せた。
任務完了。
かあちゃんは今、本当に幸せだよ、みんな。
2014-08-18 17:36
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コメント(2)
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すごーくジーンときてしまいました。
N家最高!ゴッドかあちゃん最高!
by ふじみ野房子 (2014-08-20 13:14)
ふじみ野房子さん。いつも読んでくださってありがとうございます。
35年の家族の歴史は決して楽しいことばかりではなかったけれど、今は心穏やかです。母親になってよかったと思います。
by mana (2014-08-22 08:48)