シカゴ、春はブルースにのって [セルフィッシュ・ジャーニー]
浅い春の中にその家は佇んでいる。
ミース・ファン・デル・ローエ作、ファンズワース邸。
飾りを極限まで削り落とした直線とガラスの箱のような家。
外側に、荷重を支える壁は一切無い。
つまり、視界を遮るものが無い。
プライバシー保護や断熱効果という住むための制約を排除した、その潔い最大公約数の美に惹かれて、死ぬまでに一度は見たいと願っていた家。
シカゴ市内から車で2時間弱。
ファンデーションのHPを見ると、個人で到達するのが難しい人のためにシカゴ市内から団体、プライベート両方のツァーが企画されているが、若干時期が早いのか団体ツァーは5月から、プライベートツァーもメールで打診したところガイドが旅行中とかでこちらも不可。
http://farnsworthhouse.org
やむなく到着後ホテルのコンシェルジェと交渉して、プライベートカーとドライバーを一日チャーターする。
Good morning, Mrs. Nishijima、とやって来たのは、再びあのMarkである。
一日中1対1で話さなければならないため、スペインで夏期休暇の間は英語教師をしているという、彼の品行方正で聞き取り易い英語は非常にありがたい。
ファンズワースはもとの施主である女医の名。
彼女はどうしてこのPlanoという場所を選び、ミースにデザインを託したのだろうか。
眼前を流れる小川の氾濫によって、施主が去った後4回の洪水に見舞われるも、基金の援助で修復がその度に叶っている。
秀逸な建築は、一個人の手を離れても守りたいという人が現れる、社会の財産なのだと思い知らされる。
よくぞこの季節に来たものだと自分を褒めたいくらい、歩き始めたばかりの春の気配の中に建つ瀟洒な家は軽やかで、ため息が出るほど美しい。
見学は事前申込のガイドと共に、ロケーションを楽しみながら。
碧ちゃん、ばあちゃんはやって来たよ。
レゴブロックのアーキテクチャーシリーズでこの家を組み立てて思いを馳せる(・・・ているはず)の孫への写真を一枚。
ファンズワース邸見学後その足で、シカゴ近郊、日本でも帝国ホテルの設計で有名なフランク・ロイド・ライトゆかりの村、オーク・パークへ。
ライトの自邸とスタジオ、彼がデザインした30ほどの屋敷とユニティテンプルを抱く、ライト設計の最大コレクション村である。
しかし、次男イチオシのユニティテンプルは改装工事中。残念。
自邸はさすがに彼独特の直線的なデザインがこれでもかと取り入れられ、見応えがある。
窓や照明のデザインは、日本を好んだ建築家らしく、どことなく欄間の風情。
自邸も、オークパークの町自体も本当に美しいのだが、ファンズワース邸を観た後だからだろうか、木目調の色彩がちょっぴり重い気がする。
興奮気味に2つの英語による見学を終えて、さすがに疲れる。
穏やかに疲れをいたわってくれるMarkと、このシカゴ最後の夜は、アル・カポネの酒密売店が出自という老舗ジャズハウス、Green Millに行くことにする。
Mark自身もトロンボーンやバイオリンを弾くという音楽通だ。
建築目当てで決めたシカゴ行きが、突如出発2、3日前の「ブルース聴いて来い」指令によって、もう一つの目的が出来たことは、前々記のとおりである。
飛行機の中でまさに一夜漬けで読んできた本は、大まかにまとめれば、ブルース→ジャズ→ビバップ→ロックンロール→ロックの流れをド素人にも分かるように興味深く解説しており、まさにその発祥の地シカゴにこれからのりこもうとする身は、飛行機のシートに埋もれながらかなり浮き足立ったんである。
当てずっぽうに選んだホテル(”Langham Chicago”であります)がマリーナシティの隣だったことで自分的におおいに盛り上がったことはすでに述べたが、このホテル、オールドダウンタウンのループエリアと、華やかなブランドショップが立ち並ぶマグマイルの中間に位置する繁華街リバーノースにあって、周囲はライブハウスだらけという、一人で乗り込まんとするにわかブルースブラザーズにとっても願ってもない立地。
3晩通ったどのパフォーマンスも、素人目でもレベルが高いのが分かって心から楽しめる。
今更ですが、ブルース(Blues)ってブルーノート(Blue Note=3度と7度がフラットの音階)でできた音楽ってことだったんですね・・・・
カバーチャージがどのライブハウスもだいたい10ドル前後、ワンドリンク・ワンプレートで20ドルほどだったと思うから、まあ3000円もあれば本場のブルースやジャズを聴きながら2時間近くかけてご飯が食べられるのである。
これは毎晩通うわね。
普段一人旅は慎重に、ディナーはホテルのダイニングかルームサービスで、と決めているが、ここはシカゴ、しかもホテルから徒歩3〜4分以内に、Markご推薦のライブハウスがひしめいているエリアなんである。
だいたい20:00〜と22:00〜の2部制なので、一晩に2つのライブハウスのハシゴだって可能である。
有名ライブハウス同士が、通りを挟んだ真向かいに建ってたりする。
シカゴ節ジャズはちょっと酔っぱらった脳に、実に心地良い。
あー、幸せ。
音楽とお酒。
この二つのマリアージュは、シャンパンとオペラであっても、バーボンとブルースであっても、人生の幸福度数をかなりなレベルまで引き上げてくれると思う。
ああ、普段どおりお酒が飲めたらもっと楽しかったのに、と返す返すも悔しい。
そして、突然ですが、
シカゴ・ラバー・ダックスの面々。
滞在中、ずいぶんなごまされました。
10羽ほど連れ帰ります。
ウィーンのオストロ・ダックのパクリかも知れないが、シカゴにはかようなレースがあり、それにちなんでいるのかも。
https://www.duckrace.com/chicago
私の大好きなものが詰まったシカゴで、唯一困ったところ。
それは食べ物がすべてものすごいビッグポーションだということ。
胃腸炎に悩まされつつ、ライブハウスでほんのツマミのつもりでオーダーしたチキンウィングが、クリスマスのローストチキン並みだったというエマージェンシーに近いハプニングも。
お決まりの朝食パンケーキも例外無く、大。
バターパンケーキって言ってんだから、チョコレートソースかけるなって。
あ、サニーサイドアップは卵4個じゃないかって話しも出たくらいだけど、意外にフツーだった。
夫とNYで会う前に、目一杯楽しんだ私一人のChicago。
お別れは言いません。
また来ます。
ミース・ファン・デル・ローエ作、ファンズワース邸。
飾りを極限まで削り落とした直線とガラスの箱のような家。
外側に、荷重を支える壁は一切無い。
つまり、視界を遮るものが無い。
プライバシー保護や断熱効果という住むための制約を排除した、その潔い最大公約数の美に惹かれて、死ぬまでに一度は見たいと願っていた家。
シカゴ市内から車で2時間弱。
ファンデーションのHPを見ると、個人で到達するのが難しい人のためにシカゴ市内から団体、プライベート両方のツァーが企画されているが、若干時期が早いのか団体ツァーは5月から、プライベートツァーもメールで打診したところガイドが旅行中とかでこちらも不可。
http://farnsworthhouse.org
やむなく到着後ホテルのコンシェルジェと交渉して、プライベートカーとドライバーを一日チャーターする。
Good morning, Mrs. Nishijima、とやって来たのは、再びあのMarkである。
一日中1対1で話さなければならないため、スペインで夏期休暇の間は英語教師をしているという、彼の品行方正で聞き取り易い英語は非常にありがたい。
ファンズワースはもとの施主である女医の名。
彼女はどうしてこのPlanoという場所を選び、ミースにデザインを託したのだろうか。
眼前を流れる小川の氾濫によって、施主が去った後4回の洪水に見舞われるも、基金の援助で修復がその度に叶っている。
秀逸な建築は、一個人の手を離れても守りたいという人が現れる、社会の財産なのだと思い知らされる。
よくぞこの季節に来たものだと自分を褒めたいくらい、歩き始めたばかりの春の気配の中に建つ瀟洒な家は軽やかで、ため息が出るほど美しい。
見学は事前申込のガイドと共に、ロケーションを楽しみながら。
碧ちゃん、ばあちゃんはやって来たよ。
レゴブロックのアーキテクチャーシリーズでこの家を組み立てて思いを馳せる(・・・ているはず)の孫への写真を一枚。
ファンズワース邸見学後その足で、シカゴ近郊、日本でも帝国ホテルの設計で有名なフランク・ロイド・ライトゆかりの村、オーク・パークへ。
ライトの自邸とスタジオ、彼がデザインした30ほどの屋敷とユニティテンプルを抱く、ライト設計の最大コレクション村である。
しかし、次男イチオシのユニティテンプルは改装工事中。残念。
自邸はさすがに彼独特の直線的なデザインがこれでもかと取り入れられ、見応えがある。
窓や照明のデザインは、日本を好んだ建築家らしく、どことなく欄間の風情。
自邸も、オークパークの町自体も本当に美しいのだが、ファンズワース邸を観た後だからだろうか、木目調の色彩がちょっぴり重い気がする。
興奮気味に2つの英語による見学を終えて、さすがに疲れる。
穏やかに疲れをいたわってくれるMarkと、このシカゴ最後の夜は、アル・カポネの酒密売店が出自という老舗ジャズハウス、Green Millに行くことにする。
Mark自身もトロンボーンやバイオリンを弾くという音楽通だ。
建築目当てで決めたシカゴ行きが、突如出発2、3日前の「ブルース聴いて来い」指令によって、もう一つの目的が出来たことは、前々記のとおりである。
飛行機の中でまさに一夜漬けで読んできた本は、大まかにまとめれば、ブルース→ジャズ→ビバップ→ロックンロール→ロックの流れをド素人にも分かるように興味深く解説しており、まさにその発祥の地シカゴにこれからのりこもうとする身は、飛行機のシートに埋もれながらかなり浮き足立ったんである。
当てずっぽうに選んだホテル(”Langham Chicago”であります)がマリーナシティの隣だったことで自分的におおいに盛り上がったことはすでに述べたが、このホテル、オールドダウンタウンのループエリアと、華やかなブランドショップが立ち並ぶマグマイルの中間に位置する繁華街リバーノースにあって、周囲はライブハウスだらけという、一人で乗り込まんとするにわかブルースブラザーズにとっても願ってもない立地。
3晩通ったどのパフォーマンスも、素人目でもレベルが高いのが分かって心から楽しめる。
今更ですが、ブルース(Blues)ってブルーノート(Blue Note=3度と7度がフラットの音階)でできた音楽ってことだったんですね・・・・
カバーチャージがどのライブハウスもだいたい10ドル前後、ワンドリンク・ワンプレートで20ドルほどだったと思うから、まあ3000円もあれば本場のブルースやジャズを聴きながら2時間近くかけてご飯が食べられるのである。
これは毎晩通うわね。
普段一人旅は慎重に、ディナーはホテルのダイニングかルームサービスで、と決めているが、ここはシカゴ、しかもホテルから徒歩3〜4分以内に、Markご推薦のライブハウスがひしめいているエリアなんである。
だいたい20:00〜と22:00〜の2部制なので、一晩に2つのライブハウスのハシゴだって可能である。
有名ライブハウス同士が、通りを挟んだ真向かいに建ってたりする。
シカゴ節ジャズはちょっと酔っぱらった脳に、実に心地良い。
あー、幸せ。
音楽とお酒。
この二つのマリアージュは、シャンパンとオペラであっても、バーボンとブルースであっても、人生の幸福度数をかなりなレベルまで引き上げてくれると思う。
ああ、普段どおりお酒が飲めたらもっと楽しかったのに、と返す返すも悔しい。
そして、突然ですが、
シカゴ・ラバー・ダックスの面々。
滞在中、ずいぶんなごまされました。
10羽ほど連れ帰ります。
ウィーンのオストロ・ダックのパクリかも知れないが、シカゴにはかようなレースがあり、それにちなんでいるのかも。
https://www.duckrace.com/chicago
私の大好きなものが詰まったシカゴで、唯一困ったところ。
それは食べ物がすべてものすごいビッグポーションだということ。
胃腸炎に悩まされつつ、ライブハウスでほんのツマミのつもりでオーダーしたチキンウィングが、クリスマスのローストチキン並みだったというエマージェンシーに近いハプニングも。
お決まりの朝食パンケーキも例外無く、大。
バターパンケーキって言ってんだから、チョコレートソースかけるなって。
あ、サニーサイドアップは卵4個じゃないかって話しも出たくらいだけど、意外にフツーだった。
夫とNYで会う前に、目一杯楽しんだ私一人のChicago。
お別れは言いません。
また来ます。
2015-04-23 08:42
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