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クサール・ギレン、1/8m.m. [セルフィッシュ・ジャーニー]

石と、砂と、粘土の三つが、複雑にまじり合っている土の中から、なぜとくに砂だけがふるい分けられ、独立の砂漠や砂地などになりえたのか?
(中略)
さらに奇妙なことには、それが砂であるかぎり、江之島海岸の砂であろうと、ゴビ砂漠の砂であろうと、その粒の大きさにはほとんど変化がなく、1/8m.m.を中心に、ほぼガウスの誤差曲線にちかいカーブをえがいて分布していると言うことである。
(中略)
水にしても、空気にしても、すべて流れは乱流をひきおこす。
その乱流の最小波長が、砂漠の砂の直径に、ほぼ等しいというのである。
この特性によって、砂だけが、とくに土の中から選ばれて、流れと直角の方向に吸い出される。
(中略)
砂は決して休まない。
静かに、しかし確実に、地表を犯し、亡ぼしていく・・・・
 ー安部公房「砂の女」よりー



南極大陸に続く世界で二番目に大きい砂漠、サハラに到達したいという思いはずっとあって、一昨年モロッコからのアプローチを計画していたが、アフリカ西部のエボラ出血熱の大流行で断念した。

物質の乱流の最小波長と同直径の砂が、アフリカ大陸のほぼ北半分を覆うサハラ砂漠。
その規模とは。形相とは。


チュニスを中心に、まばゆいばかりの気候に恵まれた地中海沿岸のオレンジブロッサムの生育地を巡った後、私と旅の相方は縦に長いチュニジアをひたすら陸路で南下することになった。
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チュニジアの総面積は日本の本州の半分ほどしか無いので、これまでの途上国での壮絶な陸路異動に比べれば、距離的には圧倒的に楽だ。

「ラクダ注意」
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そのすぐ後にザワつく。
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それでも一区間400〜500km単位の移動なので、途中あちこちに寄り道をして気を紛らわしながら走る。

チュニジア西端のバルコニーロックに向かう道は、アルジェリア国境までわずか8km。
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この辺になると、チュニス近郊であんなに豊かに生い茂っていたしたたるような緑は一切無く、赤褐色の砂色だけの世界になる。
しかし、まだ砂漠ではない。

1/8m.m.に砂粒が達するまでは、さらに走らなければならないのだろう。

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スターウォーズのロケ地は、当時は観光客が押し寄せたようだが、今訪れるのは我々だけだ。
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イングリッシュ・ペイシェントの舞台も然り。
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客の居ない埃だらけの土産物屋にはためく売り物のターバンの色が鮮やか。
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砂漠のキツネ、フェネックは、現地の民族にペットとして飼われているようだ。
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犬は人懐こくすり寄ってくる。
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動植物の影がほとんど無いところに来ると、妙に温かい体温が恋しくなる。
車窓に流れるどこまでも均一化された景色を追いながら、日本にいる大事な人たちを思う。

途切れ途切れになるwifiをようやく繋いだ時、知人から熊本被災の報。

私たちはここで祈るしかない。
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道は果てしない。
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潅木が点在する荒涼とした砂地やアフリカ最大の塩湖の中を、ただただ真っ直ぐな最短距離の道が何百キロも続く。
だんだん距離感が無くなってくる。
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この果てしなさこそが自分が確かめたかったもの。

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身を隠す物陰というものが一切無いため、青空トイレすら不可能というエマージェンシーな状態を慮ったビジネスもまた存在する。

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Comfortって。
Deluxeって。

冗談キツイ。

でも10ディナール(約600円)払っても、入りたいですーーー

天井の手書きのパターンも、手作り感いっぱいのペーパーホルダーも可愛い。
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この不毛の砂漠で、後始末は何処からか汲んでくる水で子供達がしてくれる。
10ディナールでは申し訳なくも思えてくる。
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チュニスから、途中トズールという砂漠の北入口の町の一泊を含め、ほぼ2日かけてようやく私たちはクサール・ギレンという、サハラ砂漠東部大砂丘の東端の町に到達する。
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大オアシスの中に、温泉やテントホテルが点在する。
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恐る恐るなテント生活は…

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ユニットバストイレ付きで、蛇口から出る水が金属臭だったとしても、床は砂だらけだとしても、この環境で、これだけのクオリティーに文句を言ったらバチがあたる。
ガールスカウト時代のテント生活の方がよっぽどキツい。
インドの2000円ホテルの方がよっぽどツライ。
蚊や虫がいっぱいだったもの。

ここは驚くほど虫がいない。
まだ盛夏前だからだろうか。


私と相方は夕陽の砂漠へ。
月の砂漠がラクダなら、夕陽の砂漠はバギーで疾走。
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さあ、これが1/8m.m.の砂。
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バギーでたどり着いたクサール(砦)で、いずれは地球の全てを侵食していくかも知れない乱流の砂を前に赤ワインの栓を抜く。
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オイ、結局やりたかったのはそれかい、って批判は甘んじて受けよう。

クレイジーなワインラヴァー二人が旅すると、まあ、こんな感じだ。
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