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千波湖畔、今宵屋根裏部屋で [ウッド]

12月。  
小さな私はその月に入るとすぐごそごそと屋根裏の物置にもぐりこんで、去年までのクリスマス・デコレーションやオーナメントを点検し始める。
1年に1度しか会えないトナカイやサンタ、きらきらしたキャンドルや星型のオーナメントは、私が箱を開けるのをじっと待っていてくれる。

楽しみは毎年少しずつ父にねだって新しい飾りを買ってもらうことだ。
「トナカイの角が折れた。」
「雪の結晶の飾りが2つ無い。」
と申告してデパートに連れて行ってもらうのだが、もちろん壊れたものだって大事にしまってある。はじけてしまったクラッカーの中身や、ケーキに乗っていたヒイラギの葉まで。

リビングのクリスマスの飾りつけは、小学生の私に一任されている。
たいして広くないリビングだがひとりで小学生が飾り付けるのは大仕事だ。
屋根裏から2階の部屋へ、それから1階のリビングへ、ずるずると引き摺るように箱を下ろす。
「りぼん」の付録まで入っている、大人から見ればガラクタにしか見えないそのダンボールの中にはいつの間にか母が樟脳を放り込んでいる。
箱を開けるとつんとくるその匂いは、いい匂いではなかったけれど、私にとっては一気に去年の楽しさが蘇る大切なツールだ。
カンファー(Camphor:Cinnamomum camphora)を嗅ぐと、今もあの古いダンボールを思い出してときめく。
IFAの規格では使用が禁止されているオイルなのでEOとして手にすることは無いが、私にとってクリスマスの香りはまずカンファーだ。

子供たちが育ち盛りの頃は息子から、
「今年は作らないの?」とせかされてリースを作ったり、マンション用のささやかなツリーを飾ったりしてクリスマスは一大イベントだったが、息子たちが独立してからはイギリス製のガーラントを玄関ホールの階段手すりにたらすだけになってしまった。
このガーラントにはさまざまな花々や果実やつる草に混じって沢山の豆電球が点る。
クリスマスに豆電球を点すのは、三人の賢者が御子の誕生を祝いに夜道を行くとき、その行く先を照らしたろうそくの象徴だと聞いたことがある。
我が家では人生の行く先を探すさまざまな人が迷わぬようにという願いを込めて、自分たちが寝静まった後も夜通しこのガーラントの明かりを点している。





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