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クリニック、査定したのは誰だ! [ハーバル]

「査定したのは誰だっ!産科医なのかっ!」

出た!
院長18番の禁句。

電話の向こうで支払い基金の係員がどぎまぎしているのが目に見えるようだ。
もちろん誰が査定したかなんて言える訳が無い。

診療報酬の請求は、毎月の医事課の一番重要な仕事だ。
クリニックの経営に直接関わる仕事ゆえ、月初めには私も入って課内全員で点検をし、漏れ、ミスが無いかどうかレセプトを1枚1枚点検してから医師会に提出、保険者分を請求する。

それでもさまざまなルールが猫の目のように変わる基準に照らして、合致しないものについては、返戻といって保険者からレセプトが戻される。
ほとんどが資格違いなどのケアレスミスだが、中にはいろんな資料を引いてもどうしても査定に納得のいかないものもある。
返戻はそのまま受け入れ、反論はしない、という医療機関もあるが、それだとどんどん目減りしていく(査定は減額だけで増額は無い。オカシイ!)のと、どうして返戻されたかを調べることは、帰ってきた答案の間違いを見直しすることと同じで、医事課のスキルアップにものすごく役立つので、わがクリニックでは毎月スタッフが順番でその見直しに当っている。

スタッフが自分の力が及ばないと感じる返戻が時折あり、そういう時は院長(夫)に上申する。
院長が見直して間違いに気付き、医事課が頭をコツンとやられることもあるし、院長が改めて調べてもやはりこちらに間違いはないと思えるものもたまにあったりする。
「支払い基金に電話しろ!」
院長の指示が飛ぶ。

先ずは医事課が「査定の理由を教えてください。」というスタンスで当るが、たまに「査定した先生は3週間後(!)でないと来ないので、それまで待ってください。」などと思い切り適当にあしらわれることもある。
そんな時である。
「俺に代われ。」
院長節炸裂の瞬間である。
手を動かしながら、取り次いだ医事課全員の耳がダンボになっている。

こんなことは年に一度か二度あるかないかのレアケースのレセプトに多い。
一時問題になった必要でない処置や薬剤投与を乱発した悪徳医師たちのおかげで、レセプトの査定は針の穴をくぐらせるように厳しくなった。この病名でこの施術や処置は認められませんと突き返される。

しかし、レアケースということは医師側も前例が無いため渾身をこめて治療に当っているということで、その命を助けようという自分の必死な処置を、あっさり減額査定した医師よ、同じ産科医ならなぜ判らないんだ!というところが院長の琴線らしい。
あくどく、やってもいない処置を施したことにして請求したどこぞの医師と一緒にするな、というのが彼の怒りの本音だ。

この返戻のセットアップと修正にかける労力は半端でなく、限りなく面倒で、それでどれほどが認められるかというと、交渉に費やした時間と電話代と送付する切手代のほうが高かったりして皆で苦笑いすることもある。
支払い基金や国保連合も一医師の「大いなる情熱」にいちいち付き合ってはいられないだろう。

でも、自分は間違ったことをしていない。
自分はその時持てる力を最大限に使って小さな命を救ったのだ、危険な産婦を救ったのだ、という院長の仕事への自負は、「査定されたんだから仕方なかろう」という一般の考えをはるかに上回るものだ。

家では脱皮し続け、だらしなさにもほどがある、とイラつく相手だが、こと治療への情熱と自信に関しては心から拍手を送りたくなる。
口で言うのは悔しいので、私にできるのははタイ好きの彼の入るお風呂にレモングラス(Lemon grass:Cymbopogon citratus)入れてあげることぐらいだ。
レモングラスはThe ORIENTALのアメニティにも反映されたタイの代表的な香りで、頭脳を明晰化させ、リフレッシュさせ、毒素を排出させる。

これでとりあえず怒りを浄化させ、頭脳をはっきりさせて、またがんばってね!という私からのメッセージととってもらえれば嬉しい。


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