骨董通り、フリッツ・ハンセンの揺り椅子 [ハーバル]
骨董通りに面した狭い階段を上がり、部屋の真ん中に静かに佇んでいるその椅子を一目見た時、すぐにそこに抱かれて眠りたい思った。
一進一退の父の病状、クリニックのメンテのトラブル、たるみがちなスタッフの指揮系統、増築への嫌がらせの匿名電話・・・・
体力的な疲労よりも、自分の脳が一片ずつ削いでいかれるような心の摩耗は、気力も心身のバランスも奪い去っていく。
休診日だが午前中は月末の決済に向けて駆け込みのデータ入力をした後、自分でもリミットだと感じ、行きつけのアロマテラピーサロンに電話する。
運良くキャンセルが出て夕方から施術を受けられることになり、雨が降り出した高速を走って青山へ向かう。
普段アロマテラピーを受ける時間ができたときは、うれしくてるんるんしながら飛んでいくのだが、今日は青山まで行くのすら億劫に思うほどである。
骨董通りの外れの駐車場から、サロンへ行く途中にアンティークの北欧家具を扱うその小さな店はあった。
12畳くらいの部屋の真ん中に静か揺れていたのはフリッツ・ハンセン社の1940年代のロッキングチェアで、何のてらいも無い北欧家具らしいシンプルな白木の椅子だった。
使い込まれて丸くすり減ったアーム、生成りの張り地の隅のほつれ。
その佇まいのすべてが無性に優しく、素朴で、攻撃性がない。
一目見て、今の私にはこれが必要、と直感した。
購入を決め、自宅ではなく軽井沢の山荘に送ってくれるよう手配した。
サロンではなじみのセラピストが私の顔を一目見て「お痩せになりましたね」と言った。
何も言わず彼女が一番に選び出したのはメリッサ(Melissa:Melissa officinalis)だった。
香りはレモン様で皮膚刺激があり、日光に当たるとシミを作る。
アレルギーなど免疫系等に効果を発揮すると言われているが、高価で禁忌が厳しいので、身体的な症状には同じような作用を持つ他のオイルで十分代用でき、私は滅多にクライアントさんの施術に使うことは無い。(先日湿布にはしてみましたが)
いつもならウッド系の重いブレンドが好みの私だが、今日は重く、濃い香りは体が受け付けなかった。
この日のブレンドはメリッサ、ローズゼラニウム、ベルガモット。
どれも心身のバランスを整え、沈んだ心に作用するものばかりだ。
あえて同量でブレンドしてもらい、どの香りが強調されるのか知りたかった。
疲弊した気持ちに、この香りはどん欲に吸収された。
フレグランス・ノートはメリッサが終始頭一つリードした。
すっきりとはしているが、決して冷たくはなく、むしろ温めて心を解き放つ。
いつまでもいつまでもベッドに横たわってこの香りを嗅いでいたかった。
今の私にメリッサを選んだセラピストに脱帽だった。
心は明日のクライアントさんに向かい始めた。
同じ並びのショコラティエ、「Mon Loire」でオレンジピールとチョコに浸したマンゴーチップ(おいしいです)をクライアントさんのために買って、激しくなり始めた雨の中を、フリッツ・ハンセンの椅子に揺られる日を夢見ながら帰途についた。
一進一退の父の病状、クリニックのメンテのトラブル、たるみがちなスタッフの指揮系統、増築への嫌がらせの匿名電話・・・・
体力的な疲労よりも、自分の脳が一片ずつ削いでいかれるような心の摩耗は、気力も心身のバランスも奪い去っていく。
休診日だが午前中は月末の決済に向けて駆け込みのデータ入力をした後、自分でもリミットだと感じ、行きつけのアロマテラピーサロンに電話する。
運良くキャンセルが出て夕方から施術を受けられることになり、雨が降り出した高速を走って青山へ向かう。
普段アロマテラピーを受ける時間ができたときは、うれしくてるんるんしながら飛んでいくのだが、今日は青山まで行くのすら億劫に思うほどである。
骨董通りの外れの駐車場から、サロンへ行く途中にアンティークの北欧家具を扱うその小さな店はあった。
12畳くらいの部屋の真ん中に静か揺れていたのはフリッツ・ハンセン社の1940年代のロッキングチェアで、何のてらいも無い北欧家具らしいシンプルな白木の椅子だった。
使い込まれて丸くすり減ったアーム、生成りの張り地の隅のほつれ。
その佇まいのすべてが無性に優しく、素朴で、攻撃性がない。
一目見て、今の私にはこれが必要、と直感した。
購入を決め、自宅ではなく軽井沢の山荘に送ってくれるよう手配した。
サロンではなじみのセラピストが私の顔を一目見て「お痩せになりましたね」と言った。
何も言わず彼女が一番に選び出したのはメリッサ(Melissa:Melissa officinalis)だった。
香りはレモン様で皮膚刺激があり、日光に当たるとシミを作る。
アレルギーなど免疫系等に効果を発揮すると言われているが、高価で禁忌が厳しいので、身体的な症状には同じような作用を持つ他のオイルで十分代用でき、私は滅多にクライアントさんの施術に使うことは無い。(先日湿布にはしてみましたが)
いつもならウッド系の重いブレンドが好みの私だが、今日は重く、濃い香りは体が受け付けなかった。
この日のブレンドはメリッサ、ローズゼラニウム、ベルガモット。
どれも心身のバランスを整え、沈んだ心に作用するものばかりだ。
あえて同量でブレンドしてもらい、どの香りが強調されるのか知りたかった。
疲弊した気持ちに、この香りはどん欲に吸収された。
フレグランス・ノートはメリッサが終始頭一つリードした。
すっきりとはしているが、決して冷たくはなく、むしろ温めて心を解き放つ。
いつまでもいつまでもベッドに横たわってこの香りを嗅いでいたかった。
今の私にメリッサを選んだセラピストに脱帽だった。
心は明日のクライアントさんに向かい始めた。
同じ並びのショコラティエ、「Mon Loire」でオレンジピールとチョコに浸したマンゴーチップ(おいしいです)をクライアントさんのために買って、激しくなり始めた雨の中を、フリッツ・ハンセンの椅子に揺られる日を夢見ながら帰途についた。
2008-04-24 23:05
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コメント(2)
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お久しぶりです。
いつもブログ楽しみに♪拝見しております。
凄く素敵な関係ですね。
相手の方も、同じ職業とわかりつつ
さりげなくいい方向へ持っていけるようにしてくれる。
職人ですね~。
前の前の会社で、私の尊敬する方
(今は亡くなってしまいましたが)
プロとはさりげなく押し付けがましくなく出来ること。
プロになりなさい。
と言われたことを思い出します。
その方は大きな会社の社長ながら(オレンジの袋の会社です
(の会社はその子会社でした)
腰の低い、何百分の一社員でも名前を覚えてくださっていた
素敵な方でした。思い出しました~。
GWお気に入りの椅子に揺られる日はあるのでしょうか?
がんばってくださーい。
もうすぐフランスも待っていますしね。
by アライ (2008-04-27 20:26)
アライさん、いつも見てくださってありがとうございます。
そうですよねえ。
私もクライアントさんがセラピストだったら結構やりにくいかも、と思ったりしますね。やりにくいか、盛り上がるか、どっちかですよね。
「プロとはさりげなく押し付けがましくなくできること」
う〜ん、これも座右の銘入りですね。
重い言葉だと思います。
私なんて端から見たらどんな仕事してるんだろー、と恥ずかしくなりますね。
すてきな社長さんですね。
GWはどこかにお出かけでしょうか。
お供は何の香りでしょうか・・・・
by mana (2008-04-27 21:08)