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クリニック、秋の日 [クリニック・シンドローム]

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リビングのピクチャーウィンドウからの日射しが、秋色になった。
テラスに多い被さるアキニレが、直、黄色くなり始めるだろう。

先日のマジョラム、イランイラン、スイートミントのブレンドが大人気である。
それだけクライアントさんがこのブログを読んでくださっているんだなあと思うと、ありがたいし、また書く責任も重く感じる。

そんな気持ちであえて書こう。

昨日、医事課のスタッフ二人が患者様のおうちを訪ねた。
未収の治療費を回収するためである。

その方の治療費が発生したのは4月である。
緊急の事態だったため、ご家族も動転しているだろうとあえて治療費の請求を後日に、ということでお約束をした。
クリニックの病衣もお貸しした。

その後、1ヶ月経っても一向に治療費を払いにいらっしゃる気配がない。
搬送先の病院からは「回復されて退院されました」との報告書が届いているので、お元気になられたのは間違いが無いと思う。

クリニックにはその方の自己負担金7000円ほどが宙に浮いたままだ。
医事課スタッフが何度か催促の電話をした。
その度に
「給料日まではお金が無い」
「土曜だったら主人が払いに行く」
というようなお話だった。
もちろんどの土曜日にもいらっしゃることはなかった。

国保、社保の保険機関は、未収金が発生した場合、内容証明付きの督促状を出すか、自宅へ回収に行くように、と医療機関に全責任を押し付けている。
医療機関がこのようなモンスター・ペイシェントのために泣き寝入りしていることは、このごろようやくマスコミで取り上げられるようになった。

私はいつも不思議に思う。
レストランで無銭飲食をすれば詐欺罪(なんですよ!)で捕まるのに、病院の治療費を踏み倒した場合はなぜ罪にならないのだろう。

この患者様はまた昨日も「土曜に主人が行きます」との回答だったので、私が自宅まで回収しにいくよう命じたのだ。
たかが7000円なのだが、お金の多寡ではない。
気持ちの問題だ。
何だか、私の中で何かがぷちんと切れたのだ。
クリニック始まって以来、初めてのことである。

スタッフは、回収金と、よれよれの病衣を持って帰ってきた。
もちろん、退院してすぐなら7000円を用意できないこともあろう。
でも5ヶ月経っているのである。
その気さえあれば、用意はできるはず。
たったこれだけのものを車で10分ほどのクリニックに持ってこられないのか、あの緊急事態を救ったクリニックに何の気持ちも沸かないのか、と情けなくなった。

この方はそれでも電話がつながるだけましだった。
督促の電話もいっさいつながらない方、保険も使えなくなっている方、住所にもいつのまにかいなくなっている方、赤ちゃんを産んでから出産費用が無いと悪びれもせずに言う方。

もちろん命を救うのが最優先だ。
救急の場合は特に治療費のことなど言い出しにくい現場の雰囲気もある。

もちろんほとんどの方がきちんと後で支払いに来てくださり、「あの時はありがとうございました」とおっしゃってくださる。

でもこのような方も増えつつあるのが悲しい現状だ。
お金の取り立てなんてしたことがなかったが、「しかたない」とあきらめるのももう限界だ。
私の中で切れたもの、それは心の中の鍵だったのだ。
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