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自宅、小さいおうち [マイハーベスト]

私がデスクのパソコンに向かっているその脇のソファは、べっちゃんの定位置なのである。

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「おかあさん、今日はボクのこと書く?」

出たがりの家系である。
書いたぜ。

昔は結構やったものだが、目が悪くなってここ数年しなくなった「本1冊一晩一気読み」を久々に敢行する。

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『小さいおうち』(中島京子 文藝春秋)。

言わずと知れた今年の直木賞受賞作品だ。

実はこの本、受賞前から雑誌の書評を読んで、「読みたい本」にリストアップしてあったのだ。
何故かというと、この題名が私のよく知っている本に似ていたからである。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/11/5/1151060.html
似ていた、というか同名。

『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン作 石井桃子訳 岩波書店)。

絵本は、のどかなカントリー・サイドに建っていた”ちいさいおうち”が、近隣に押し寄せる開発に脅かされるような話だったと思う。(手元に無く定かではないが)

しかし、これは昭和の初め、「女中さん」という言葉がまだ偏見も持たれずに生き生きと使われていた頃の、その女中さんから見た、奉公している家族の話である。

・・・というとどうしても「家政婦は見た」的な構図を思い浮かべてしまうが、家政婦でもお手伝いさんでもない、「頭のよい」女中さんという存在がご主人(特に奥様というポジション)に対し、どういう気持ちを抱き、どういう振る舞いをするかということが、昭和初期の何とも穏やかで上品な東京の山の手言葉に彩られ描かれている。

だって「奥様」は藍媚茶(あいこびちゃ)の縞単衣に柿渋色の名古屋帯を締め(装いの涼しさが伝わってくる)、香蘭社のティーカップを持ち、「タキちゃんもお相伴してちょうだいな」と言うんである。
そうすると女中のタキは「滅相もございません」と返事するんである。
(私も一度でいいから、タメ口サツさんにそう言われてみたいものである。)

なんと、なんと優雅ではないか。

これがとんでもなくお金持ちの家かというと、題名が示すように、当時の山の手中流の「小さいおうち」で繰り広げられる光景なんである。

ストーリーそのものよりも、その言葉遣いから伝わってくるその時代のたおやかさ、「奥様」の美しさ、育ちの良さにすっかり参ってしまい、夜中3時を過ぎるまで本から離れられず。

日本に夏が巡り来るたびに語られるあの戦争でさえ、この「小さいおうち」の品(ひん)を損なうことはできなかったのである。

バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」との関連も、ちょっと後付けっぽくはあるが、細い糸を辿って最後に結ばれる。

ご一読を。






 






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