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自宅、帝国ホテルの不思議 [マイハーベスト]

ちょっと贅沢なホテルに泊まって「ああ、幸せ」と思えるのは、ホテル仕様のリネンに触れる瞬間だ。
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ピンと張ったベッドシーツ。
パウダールームにたっぷりと積まれた大小のタオル類。

「ホテルの格はリネンの枚数に比例する」と書いたのは、ホテル紀行文を得意とする建築家、浦一也氏だ。
何度手を洗っても、何度シャワーを浴びても、新しいタオルがふんだんにある。
夕刻のターンダウンでは、また新しいものが用意される。
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洗濯機をまわす回数や干す場所が気になる自宅ではできない贅沢。
(環境に配慮してタオル交換を辞退するリクエストも受け付ける、と表示しているリーズナブルなホテルも最近はある。本来消費する贅沢とエコロジーとは対極の部分なのだと思う。)

ホテルリネン、それらは顔を埋めても特定の香りがせず、ただ弾力と繊維の匂いが海馬に伝わるだけだ。
香り好きが高じて職業になってしまった自分なので、あらゆるものに香りをつけようとする現代において、その匂いのニュートラルさがどれだけ貴重なものかはよく判る。

最近読んだ『帝国ホテルの不思議』でも一番感動したのはそんな部分だ。
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客室の掃除をする客室課スタッフは、前泊した客の”痕跡”を一切残さないことに全神経を集中させる。
徹底した掃除はもちろんだが、匂いも決して残してはならない。

匂いは数秒後には慢性化して感じなくなってしまうから、ドアを開けた瞬間が勝負。
嗅覚に全神経を集中して、もし何らかの”痕跡”が残っているようなら即座に脱臭器を稼働させ、チェックイン前に消臭スプレーを定期的に撒くという。

自宅ではありがちな柔軟仕上げ剤の香りすら付いていないリネンの無臭。(特別な匂いが付いていないという意味で)
確かに私はそのことにこそ、自分だけがそのホテルに迎えられたような錯覚と幸せを受け止めるのだ。

ハードたる容れ物や設備は徹底的にマニュアルに沿って均一化・無個性化させ、その中で行われるサービスはとことんパーソナルで柔軟な多様性を持たせる。
サービス業の極意は、そんなところにあるのだろうか。

享受したホテルの幸せを日常に針の先ほどでも感じたいと、我が家では10年以上も前から新宿のパークハイアットのタオル類を取り寄せて使っている。

このたび5年毎の買い替えというわけで、3代目のそのタオルたちを我が家に迎える。
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奥が新品で、手前が5年使ったものだ。
ホテル仕様だけあって、5年のヘビーユースで退色はすれど決してへたらないし、真っ白でロゴ無しの潔さも気に入っている。

値段はちょっと張るが、日本の普通のバスタオル(130㎝弱×70㎝弱)に比べ、160㎝×80㎝と大判で地厚。
匂いの面ではさすがにニュートラルにする訳にはいかないが、このタオルでシャワー後に濡れた身体を包み込む感触を知ってしまうと、他のものは使えなくなる。

ホテルリネンのささやかな贅沢を日常に。

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エステイ・ローダーの香水、『ホワイト・リネン』はもうちょっとパキっとした香りを期待してたが、私にはちょっと甘め。
リネンの香りにイメージを重ねた視点には拍手を送りたい。









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