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自宅、沈黙の春 [マイハーベスト]

専門書と実用書オンリーの夫とは、傾向が違いすぎて読書について話し合うことはあまり無い。
これは結構寂しいことだ。

ところが先日、読みかけの本があまりにショックだったので、白ワインが血流に溶けていくがままに、
「今読んでる『沈黙の春』って本にさー、」
と切り出すと、いつもならふーんと彼の鼻先で回れ右して帰ってくるベクトルが、
「それ、なんていう人が書いた?」
といきなりボールドになったので驚く。

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「沈黙の春」(レイチェル・カーソン/青樹簗一訳/新潮社)

本著は、動物学を専攻したレイチェル・ルイス・カーソン女史が1962年に出版した「Silent Spring」の全訳である。
私がちょうど小学校に上がる年、日本は除虫菊をコイル状にした「キンチョーの夏」の煙が各家の縁側に立ちのぼる、一見のどかな、しかし社会は高度成長のアクセルをグンと踏んで猛スピードでばく進していた頃である。

日本で「公害」「農薬禍」という言葉が騒がれ出したのはその10数年後、そのはるか以前からカーソン女史は、人間の生活を向上させるために開発された、例えば殺虫剤のような化学薬品の数々が、人間の快適さと引き換えに、小さく弱い動植物を殺傷し、それが食物連鎖を基盤とした地球の生命体のバランスやサイクルを破壊しつつあることに警鐘を鳴らし続けた。

夫は高校の化学の授業で、課題図書となっていたこの本を「読まされた」というのである。

それほどの”古典”でありながら、今の地球の現状にこの提言はピタリと当てはまるばかりか、放射能という地上最悪の汚染物質を拡散させてしまった今日の日本の心に鋭く突き刺さる。

土を汚し、罪の無い小動物を殺し、しいては人間の生命を脅かすのは、化学薬品や放射能そのものよりも、自分たちの豊かさや快適さだけを追い求めた他ならぬ人間の欲であることを忘れまい。

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9日早朝、一人突然旅立った母との別れに、庭にあふれるほどに咲き乱れたアナベルを両腕いっぱいに摘む。

庭いじりと白い花をこよなく愛した母にしてあげられることが、今はもう、これしかない。



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