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自宅、ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス [マイハーベスト]

じみへん?



お笑い芸人さんが受賞した今年の芥川賞。

それをイマイチ評価できなかったので(私が評価しなくても大勢に影響はないが)、受賞を逃した候補作品を読んでみたくなり、出版を待つ。

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「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」(溝口悠生著/新潮社)


バイク、ロック、放浪、そして恋。

もう絵に描いたような青春のシグネチャー。
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それを書いているのは30過ぎの普通のサラリーマン、妻子あり。

この不変のギャップの構造と、なぜ今これかという必然性という点が、受賞を取りこぼした理由かもしれない。


高校、大学時代の男の子の突き抜けた無鉄砲さ、ハンパないやさぐれぶり、そしてそこから抜け出す時のエネルギーと面白いくらいの人生のどんでん返しは、息子二人を見ていて、女には真似ができないと、ずっとずっとうらやましかった。

私の10代はと言えば、たとえそのような爆発的なエネルギーが無くてもコツコツと努力して成就していくタイプでもなかったので、父や周囲の価値観の中に属する存在に甘んじてひたすら時間を浪費し、青臭くもなく、輝いてもいない。

もちろん、不良の音楽とされたロックの歴史に燦然と輝く「ジミヘン」が何たるかもよく知らない。

男の人が青春(この言葉もセピア色だ)を呼び起こして書く文学が、巷に溢れてはいるのに、一つ一つ違った匂いがし、いちいちきゅんと胸が締め付けられるような気がするのは、従来の音を破壊して自分の生き方を音楽に写し取ったジミ・ヘンドリクスの炸裂音のように、水面に浮上しようとするその時期の青年の藻掻きや足掻きが、時代を振り返るそれぞれの指標としてキラリと輝くからだ。

不良であったことは、だから必要で、ステキなのだ。

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常識や固定概念を壊す意図から生まれたロックは、そういう男子の破壊的なエネルギーに素材としてぴったりリンクし、多くの男性が(まあ、女性も多いだろうが)若い日のカオスをそこに重ねる。

その味付けは、自分の今。

平凡な、けれど平穏な人生を歩んでいる人ほど、その時浮き上がろうと水を必死で掻いた自分の力を、甘酸っぱく、いとおしく思うのだ。

過去の日々を思い起こすトリガーとしてジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスを選んだセンスがいい。
嫌味のない、しかし才能の奥行きを感じさせる文章力も好感が持てる。

結論。

火花より私の心にスパークしたのは、ジミヘンでした。

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