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レユニオン島、バニラ香る島 [セルフィッシュ・ジャーニー]

レユニオン島(Reunion)に行ってきた。

と言っても、この島がどこにあるか、首を傾げる人が圧倒多数だろう。
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レユニオンを知らなくても、ブルボン(Bourbon)という名前はよく昔のコーヒー店名になっていたから、耳触りとしてはこちらの方がポピュラーかも知れない。

マダガスカル島の東、インド洋に浮かぶ九州ほどの大きさのレユニオン島は、16Cからフランスとイギリスに交互に植民地支配され、その度にルイ13世が名付けたブルボンという名と新名レユニオンを目まぐるしく島名として繰り返した。

気温が年間を通じて21〜28℃という寒暖差の少ない暖かい気候と長い間敷かれていた奴隷制度に基づく労働力を利用して、香りの王国フランスは、様々なエッセンシャルオイルの香料原料をここで歴史的に盛んに栽培し、質の良いエッセンシャルオイルを大量に獲得することに成功した。
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よってアロマテラピーを本気モードで勉強する時に、エッセンシャルオイルの原産地として、レユニオン島ほどテキストに頻出する地名は他になく、その度に我々生徒達は「これはどこのことなんだ?」と頭を疑問符でいっぱいにしながら必死で覚え込んだものだ。(原産地はテストに出ます)

一昨年参加したマダガスカル香料視察ツァーの時に、レユニオン島がマダガスカルのすぐ隣にあることに気付き、ああ、ここにいたかレユニオン島とはたと膝を打った参加アロマセラピストは少なくなかったはず。
しかし過酷なマダガスカルツァーの後にそこまで足を延ばそうというツワモノはおらず、どちらかといえばツワモノ系の私も後ろ髪を引かれながらすごすごと帰国した。
今年同視察ツァーがレユニオンだと知り、二つ返事で参加を決めたのは、ベクトルの同じ元マダガスカル隊員がほとんどだ。

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トイレットペーパーとカロリーメイトに僅かな緊張感が漂うも、赤い水着と希少ワインというパッキングは、フランス領という現状をふまえ、見知らぬ島へ渡るにしてはどこか楽観ムード。
顔見知りの多い今回のツァーゆえ、僅かな自由時間に想定される酒盛りの準備も入念に(笑)。

最後のモーリシャス航空プロペラ機の23キロ手荷物許容制限は、ワインボトル搭載でも我が家のパウダールームの体重計をクリアー。

やった。

心置きなく飛んでいける。
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・・・・しかし、遠い。

時差は5時間だから経度的には真裏というわけでもないのに、羽田を00:30に飛び立ってドバイ、モーリシャスでトランスファー、レユニオンのサンドニ空港着は23:00。
時差5時間をプラスするから実際には28:00、実に27時間半ほぼ半眠程度で辿り着くのである。
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そうして行き着く島は、島中に甘い香りの漂う楽園。
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ああ、旅ってだから素敵だ。




レユニオンの視察目的香料は二つ。
バニラとゼラニウムだ。

数百種類あるといわれるゼラニウム、その中でも我々が実際に出会い使用するエッセンシャルオイルとしては、ミント調の香りを持つものやスパイシーなものなど5〜6種類、特にローズと同じゲラニオールを多量に含むゼラニウム・ブルボン(Pelargonium x asperum)は、まさにレユニオンの名を抱く最高級品。
その栽培農場と蒸留ファクトリーを見学する。
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日本でよく窓下に置く、シトロネラ臭の強い虫除け目的のゼラニウムとは格段の差がある、甘いフルーツのような香しさ。

DISTILLERIE DE GERANIUMによるオイル採取率は、0.001%(300kgの花から300ccのエッセンシャルオイル採取、西島メモ)。




強烈に印象を残すのはバニラ栽培。
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研究機関CIRAD(フランス国際農業関連団体)始め、いくつかの農場とファクトリー、農協を見て回るうち、最後にはキュアリング(乾燥熟成法)はおろか、一人の奴隷の若者が編み出した感動の受粉方法まで言えるようになる。

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もともとカカオとサトウキビの栽培が盛んだったこの地に、メキシコからバニラを持ち込んで栽培し、まずはチョコレート製造を目論んだのが、レユニオンでのバニラ栽培のスタートと聞く。
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原産地のメキシコには、ラン科のバニラの受粉を助ける特殊な蜂が棲息しているが、レユニオンにはその蜂がいないため、受粉はすべて人の手によって行われる。
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サボテンの刺で行われる受粉は一つの花に2秒。
細かい仕事が得意な女性の仕事である。

めしべとおしべの間には壁のような仕切りがあるため、それを優しく倒して受粉を行う。
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なんとも気の遠くなるような、繊細で膨大な仕事だ。
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この受粉方法を考え出したのは一人の奴隷。
その成功を見ないうちに彼は病死、その数年後に奴隷制が廃止されたという逸話は、どの農園、ファクトリーでも語られるエレジーだ。
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グルメ王国フランスのスイーツ、料理に欠かせないバニラが、こうして己の夢を採取した名も無い若者の力がスタートだったこと、何時の世も強国の繁栄を支えるのは、レユニオンやマダガスカルのような安価な労働力を持つ熱帯気候の貧国であることは、香料の産地を訪れて毎回唯一気の沈むことである。
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ともあれ、Y先生と愉快な仲間達は、今回もよく食べ、よく飲み、よく語ったのである。
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両手に紅白ワインなヒト。
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九州からは薩摩焼酎を、千葉から地酒を。
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ありがとー。
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13人、バニラの島を駆け抜ける。
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軽井沢、白鯨 [マイハーベスト]

軽井沢は一足先の秋の気配。

地球の歩き方がブータンの気候を「軽井沢のよう」と評したのは言い得て妙。
まだティンプーに居るような錯覚に陥る。
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ほっこりとお鮨を食べる。
日本へ戻ってきた幸せを感じる瞬間である。
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エマ、エマ、エマ。



エマはゾンカ語(ブータンの第一言語)で唐辛子のこと。
3人はすっかりブータン料理のファンになり、それぞれ居住国に戻って、一番代表的な料理、エマダツィ(ダツィはチーズの意)再現普及に努めている。
(ブータン政府から特命は受けていない)
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ホーチミン市の二人はついに友達を集めて「エマ・ナイト」なるパーティまでやらかしたらしい。
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唐辛子の種を素手で取るので、カプサイシンが掌から大量に体内に混入するらしく、次クニは半死半生の目にあったらしい。

それでも食べたいエマダツィ。
唐辛子の刺激が、感情と記憶と欲望を果てしなく活性化する料理である。





ブータンの深い緑の山に抱かれながら海のロマンを読む。

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「白鯨」(メルヴィル著/八木敏雄訳/岩波文庫)

サマセット・モーム選世界10大小説の一つ。
間違いなくアメリカ文学の筆頭株に挙げられるだろう。

500頁×3冊。
鯨並みのこの分量を読破するのは、これはもう読書というより修行である。

過去に一度読破を断念した超大作を読書会に提起して再び挑むのは、相手がいれば簡単には引き下がるまいという退路を断つ意味もあり、前々回のテーマ本であったユニークなアメリカ文学論「ターミナルから荒れ地へ」(藤井光)の、混沌とした近代のアメリカ小説以前に文壇を席巻した白人作家達の「偉大なるアメリカ」描写の手本となったのが、このメルヴィルの「白鯨」である、との記述が頭を離れなかったからである。

おりしもグレイト・アメリカを掲げたトランプが渦中にいるその時に、アメリカという巨大なノイズを一冊の本にまとめるに要した分量と戦い、その真髄を探りながら、これからのアメリカを占う大統領選を見守るのも悪くなかろう。

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ストーリー自体はあっけない。
老エイハブが、自分の片足を奪った白鯨モービィディック捕獲に執念を燃やす航海を追う。
過去小年少女世界文学全集で抽出された内容を既にご存知の方も多いだろう。

圧巻は大長編をモザイクのように編んでいく、ありとあらゆる鯨進化学、捕鯨屠鯨風景、鯨解剖学。
そこにこれでもかと加えられるピークオッド号船上の人間模様、他捕鯨船との擦れ合い、洋上の掟。
様々な要素が無作為にストーリーに関係なく挿入されるため、読書航海は困難を極める。
この頃の米文壇巨匠達が、大きくなければアメリカではないという強迫観念に囚われていたのではないかという藤井(前出著者)の指摘は、必ずしも誇張や揶揄ではない気がする。

しかし常に「150年前の捕鯨において、何がグレイト・アメリカ的なのか」という当初の疑問を頼りに読み進めると、それが果てしない荒海の中で羅針盤代わりとなってくれる。

甲板における当時の人種間格差、しとめ鯨とはなれ鯨の所有権、大量の鯨油や竜涎香の錬金術、権力者の抹香鯨搾取、はては「白いこと」へのオマージュ。
そして大量の乗組員達を道連れにしてさえも、自分の欲望を果たそうとする老エイハブの存在。

3年間単独洋上生活という巨大、かつあらゆる機能を積み込んだ社会の縮図である捕鯨船が、今ならセンシティヴに傾きそうな、あまりにもストレートな傲慢を満載している。
しかしそれに対する悪びれなさがアメリカのアメリカたる所以で、それはきっと脈々と今に受け継がれているのだろう。

もちろんそれが今のアメリカの綻びと直結しているというつもりも無い。

しかし巨大だということ自体が他の小ささを睥睨するとしたら、畏れを知る機会は自ずから失われる。
その結果を、今のアメリカは待っているのかも知れないとは思う。



今回あえて、私は岩波文庫版八木敏雄訳を、相方は新潮文庫版田中西二郎訳を読み、訳の違いまで味わおうという趣旨であったが、量が膨大過ぎてお互いを交換して読み進めるまでには至っていない。
(つまりこの分量を2回繰り返すということである)

英語の文学を読む時に必ず考えなければならない翻訳の違い。
それを楽しむまた面白いエッセイも、この流れで入手した。
読書の面白さは、そうやって自分の興味がまたどんどん発展して広がっていくことでもある。

そのエッセイについてはまた次に記そう。




近所のスタバでランチ。
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店名のStarbucksは、ピークオッド号乗務員の唯一の良心とも言える一等航海士、スターバックが由来だという。

創業者の核たる信念が垣間見える。




















パロ、虎の巣(事件その10〜11) [セルフィッシュ・ジャーニー]

若さを羨むことは最近無くなった。

古い蛇ほど柄がいい。

名言だと思う。

しかし一旦旅に出ると、体力面はともかく、その国の懐にぐんぐん入っていこうとする息子達の好奇心と順応性には舌を巻く。
そこは羨ましいと心底思う。



遭難一歩手前の山越えを終えたばかりというのに、次クニは立ち寄ったホテルのロビーでエスニックインスツルメントバンドHAPPINESS(仮称)結成中である。
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やけに楽しそうである。
早く酒飲んで休みたいなんて思っている古い蛇は置いていかれるのである。


今回最後のAmankora、国際空港のあるパロのそれは部屋数27、the largest of all of Amankora。
針葉樹林の中に石畳を配し、ひと際洗練された高原のリゾート感を盛り上げる。
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個室の間取りはプナカとほぼ一緒の、ケリー・ヒルデザイン。
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メインダイニングもどこかイタリアンレストラン風である。
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そこで食べる、だし汁をかけたBhutanese Inaniwa Noodles。
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私だったらせめてホタテじゃなく鯛をのせタイ。
勉強になりました。


薪と松ぼっくりを美しく組み合わせたシグネチャー的ストーブが再び登場。
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ああ、高地ブータンにまた抱かれるのだなあと思う。
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パロではこの旅最大の目玉、Tiger's Nest、タクツァン僧院へのトレッキングが持ち受ける。
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人間の足で近づける道があるとは到底思えない屏風のように垂直に切り立った崖に、まるで空から舞い降りて来たように建つこの僧院を見て、比較的歩くのが好きで丈夫な自分の足に、初めて不安を覚える。

しかし、為せばなる、為さねばならぬ何事も。
そう言い聞かせて育ててきた息子の前で弱音は吐けない。



僧院は標高3200m、登山口は2100m。
途中、標高2800mの唯一のレストハウスが、高所への体調を整える場所でもあり、登山リタイア組の待ちぼうけ場所でもある。

おふくろ、そこで待っててもいいよ、と息子は予め労り(=憐れみ)の言葉をかけてくれるも、憐れまれれば憐れまれるほど、古い蛇の柄は鮮やかさを増すのを知らないな。

行くぞ。
元ガールスカウトの底力を見せてやる。
(何十年前の話だか・・)



登山口から見上げる僧院は雲の上である。
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雲上への階(きざはし)を登れるなら、普段山登りの機会など無い自分にはいい還暦記念になるだろう。

道は整備されておらず、雨季のこの時期は泥だらけでかなり滑り易い。
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朝8時に登り始めた時に着込んでいたダウンも、ほどなく脱いでひたすら前へ、前へ。
後ろを振り向いたら心が萎えそうである。

2時間近く登って、一面赤土と針葉樹の緑の中に、タルチョ(5色旗。経文が版木で印刷され、5種類の色はそれぞれに天、風、火、水、地を表す。天に近い高所まで持っていき、張り巡らすと願いが叶うとされている)が見え出し、唯一のレストハウスに到着。
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日本なら救護所でも設けられるところだろう。
結構な標高なので、軽装で登る観光客の中には体調を崩す人もいるだろうに、そういうサポート体制はほとんど整っておらず、自己責任となる可能性が大。



まだ3人余裕の表情である。
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ここで甘い紅茶(ガシャ)を飲み、さらに上へ。

レースのように垂れ下がる羊歯(?)が美しい。
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ようやく仰ぎ見るだけであった僧院が目線よりやや上までくる高度まで登ってくる。
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嬉しがってるけど、此処からがキツい。
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岩肌に張り付くように儲けられた階段を登り下る。
(せっかく登ってきたのに下るって・・・・)
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ただのスロープより階段の分、足を数10センチ上げなきゃならない。
その数10センチがもう出来ない。
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3000m超の標高で身体能力もかなり奪われていると感じる。

ここで…

事件その10:カラン、カラーン…
ダショーが3000mの谷底にカメラのキャップを落っことす。

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「いい音がしました」

さすがダショー。
精彩放つコメントである。

この谷底に落っこちてるカメラのキャップやiPhoneの類い、きっと数知れず。
何千というFind iPhoneのアイコンが奈落の底を指すであろう。




しかし、遂にコンプリーテッド!!
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……

(下りるのはさらに辛かった…)

下り道で、我々もタルチョを張り巡らし、それぞれの願いを唱える。
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次クニの願いは、そして私の思いとは。





最後の夜、ディナーにはナショナルコスチュームを着てダイニングへ、とのホテルのお計らいで、衣装が部屋に用意される。
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分からないのでテキトーに着てダイニングへ行くと、スタッフがわらわらと寄ってきてお色直しを。
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次クニはまるでお内裏様とお雛様。
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(……笑えよ…)

ブータン&Amankora、素晴らしい。

出立の朝にはご祈祷まで授けてくださった。
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事件その11:サングラスかけた坊さんのご祈祷(意味は分からない)がツボにはまって笑いを必死に堪えていたら、横でダショーも打ち震えていた…
バチあたりな二人である。



Wonderful Bhutan.
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(車のナンバープレートまで唐辛子色)

Wonderful Amankora.
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幸せの国。
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ひとまずのお別れである。
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プナカ、子宝寺(事件その8〜9) [セルフィッシュ・ジャーニー]

CertainlyはAmankoraスタッフ共通のお返事であるらしい。
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ゴとキラに身を包んだどのスタッフに何を頼んでもCertainlyが返ってくる。
一歩下がって確約する、なかなかいい英語だなあと思う。
(Tashiも長々言い訳止めて、一言これを言えば株が上がるのになあ・・・)
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この時期のブータンの昼過ぎに降り出す雨は、夜中に激しくなり朝まで残る。
なかなか外での朝食が叶わない。
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雨でもどうしても外で食事したいといえば、Certainly!と傘を差し掛けてまで用意はしてくれるのだが。

世界的パンケーキ&サニーサイドアップコレクター(自称)としては、国木であるサイプレスの林に浄化されながら食事したいけど。

フツーのサニーサイドアップ。
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フツーでないパンケーキ。
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焦げ具合とブラックベリーソースの黒光り度がハンパない。
これがブータンのパンケーキ解釈ということで承知しました。


さてその朝食のテーブルは、プナカから最後のディスティネーション、パロ(Paro)へ向かう途中に寄ることになる子宝祈願寺チミ・ラカン(Chimi Lhakhang)で大盛り上がりである。
性のタブーを超越したブータンの男性器信仰発祥の寺といわれ、参詣すると男性器形の棒で頭をペチペチされるみたいです、と本日のクニちゃん小ネタ情報。
オノマトペ的にぐっとくる。


その寺は長閑な田園風景の中の小高い丘を登り切ったところにある。
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行けば民衆に炊き出しもやっているきちんとした寺で、決して奇習というワケではない。
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古今東西、体外受精など思いもつかない時代や地域で、不妊に悩む女性に寄り添ってきたのは常に信仰であったろう。
各地に散らばる子宝祈願の寺はどの国でも枚挙に遑がない。

事件その8:Tashiは早口英語でチミラカンのご利益説明をし、その儀に及ばんとする次クニには「いい子ども達に恵まれるように祈願せよ」と言い、私の前に来てちょっと言いよどみ、「ま、あんたはフツーにGood Luckを願いなさい」みたいにまとめる。
年齢制限あるんだな、やっぱり。
(例によって寺院堂内は撮影禁止なので、衝撃映像無し)

周囲の村もそれ一色。
これだけあるともはや具象デザインにしか感じられない。
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チミ・ラカンとは犬がいない寺という意味。
ラカンが「寺」だとすると、チミだけで「犬が居ない」だろう。

どう考えても語数が足りなくないですか。
ダショー大西、俄然ブータン語に興味が湧いてきたらしい。


帰国してブータンに行ってきたというと、ほぼ100%「世界で一番幸福な国なんでしょ」と返される。
その度にどう返答していいか迷うが、この国の至る所にいる犬達を見ていると、確かにそうなんだろうと思う。
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この四肢を投げ出してその辺に転がっているのがブータン・スタイル。

どの犬も無駄に吠えたり歯を剥き出したりせず、我々と目が合えばおずおずと寄ってきて、「あのー、頭撫でてもらってもいいですか」みたいな謙虚な愛情のせがみ方をする。
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犬が人間の傍でこんなにもおっとりと生きていられるのは、そこにいる人びとがみんな愛情深く、殺生や攻撃を好まないということなんだろう。

プナカのAmankoraの吊り橋のたもとに待機している白足袋犬。
ゲストが橋を渡ると狂喜乱舞、ロッジまでのバギーを必死で追ってくる。
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ドブ好き。
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ブータン人が幸せかどうか、それを測る尺度を私は知らない。

少なくとも、他を羨まない幸せ。
他と自分を比べない幸せ。

中国とインドという強権国に挟まれながらも、観光客を制限して独自の文化を守り育てている国では、それを感じる。


チミ・ラカンでご利益を頂き、これはもう天上にも昇る思いで、再び2500mの高地パロを目指し、来る時と同じロングワインディングロードを辿る。
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早く途中のティンプーで、素敵なランチ食べましょう的なノリの中・・・

事件その9:人里離れた山道で、車のクラッチがブレイクダウン、全く動かなくなる。
例の峠手前で泥道の上り坂だが、車を捨ててとにかく峠目指して歩けとTashiに言われる。
近くの村から救援車頼んで(ジャ、JAFってブータンには無いの?)Tashi 自身は故障車とドライバーと現場に残ると言う。

それなら我々も一緒にそこに留まっていても良いのでは?と疑問抱えつつ、三人で人気の無い山道を登り出す。
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雨は降ってくる、たまに通り過ぎるトラックからは「お前ら、何やってんだ」的な罵声は飛ぶ、これじゃ遭難するわと思った頃、遂に次男が「やっぱりムリだ。(Tashiのところに)戻ろう」と決断し、私とクニちゃんは即座に声を揃えた。
「Certainly!!!!」(言ってないけど)

ランチ時間はとうに過ぎ、お腹もぺこぺこ。
道ばたの露店でキュウリの浅漬けやトウモロコシを買って食べる。
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これ、マジ、Amankoraが極秘で用意したサバイバルアトラクションかと一瞬思ったけど。
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トウモロコシは今まで食べたことが無い無類の固さと味の無さ。
露店で飼われている犬もそれは分かっているらしかった。
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Tashi はなぜ、私たちを先に歩かせたのか。

Tashi、あんたの幸福度ってなに?
チミ・ラカンのご利益はどこへ?
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プナカ、ゾンゾンゾン(事件その6〜7) [セルフィッシュ・ジャーニー]

ティンプーより1000mほど標高が低いプナカは、二毛作の稲がぞっくりと生育している田んぼに囲まれて、この時期ややむっとする蒸し暑さを感じる。
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2つの異なる自然環境のティンプーとプナカとを行き来する生活習慣が昔からあったようで、ティンプーが恒久首都となっても、冬季温暖なプナカとの2ヶ所に生活基盤をおいている人は、今でも少なくないという。

プナカでは国内最大のゾンを観る。
クニちゃんと次男の鼻息は、隣室まで聞こえ来るのである。

ゾン。
Dzong。
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(パロのゾン)

これをなんと定義すべきか。
一つの県に一つずつある寺院と地方行政の中核の建物、つまり県庁のようなものなのだが、古くはチベット軍の攻撃に供える要塞でもあり、聖人が瞑想した場でもあり、歴史と権力を思いっきり集約した、その地方で一番力こぶを入れて技術のすべてを注ぎ込んだゴージャス建造物、というようなざっくりとした解釈でいいと思う。
(次男に一蹴されそうな稚拙解説である)

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(プナカのゾン)

建築を勉強する者にとって、ブータンの建築技術の粋を集めたゾンはまさに究極のディスティネーション。

プナカのゾンは男川と女川(本当の名前はなんなんだ・・・)の合流する三角の岸にそびえ立つ堂々とした建物である。
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屋根付きの美しい橋(ザム)を渡って要塞の中に入場すると、2つの中庭を挟んで、複雑な彫刻とペイントに彩られた他に類を見ないキュンレイ(講堂)や高楼が立ち並ぶ。
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プナカ・ゾンのザムはドイツのNGOの援助で復元。

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複雑過ぎ、巨大過ぎて、美しいのかどうかという判断基準すら摩耗してくる。


こちらは全てのゾンの中で最も美しいと謂われるカーヴィングを施されたパロのゾン。
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色調も彫刻の技術も規模もそれぞれに違うが、ここに政治と宗教という最も巨大な権力を集中させて国を司ろうとするベクトルは同じ、まさにヨーロッパの豪華絢爛なカセドラルに相対した時のような気持ちになる。
無機質なマテリアルで構成されてはいるが、建築とは人の手によるものだけに、人間の感情を包容し蓄積し、後世その前に立つ者に、内包した情熱を雄弁に語りかけてくるものだと思う。



次男とクニちゃん(以下次クニと略)はゾンに夢中、こちらは、あなたのホリデーのためなら何でもしますTashiの言うように、飲むことと食べることにも専念したい。
(このTashiの枕詞が、本心でないような気がしてきたのはこの頃だったろうか?)

ゾン観光から帰ってディナーまでの一休み。
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部屋にワインを頼む。
これもホリデーの楽しみでしょう。

事件その6:白ワイン1杯飲みたいなってノリだったのに、クーラーに入ってボトルまるまる1本が届く。
滞在中の飲食全てがincludeのオールインクルーシヴシステム。
返って恐ろしや。

一人部屋だっちゅうのに。
もうすぐご飯食べにいくっちゅうのに。
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いくら私が酒飲みでも。



ささ、お待たせしました。
ブータン料理である。

次クニと私は、結果的にブータン料理に超ハマったのである。

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もともとは家庭料理、観光客に出す料理ではないブータン料理は、あらかじめ事前にオーダーしておかないと用意が無い。
どうみても欧米観光客にはハードルが高そうな、レッドスチームライスに、チリ満載の辛い煮込み総菜をかけて食べるスタイル。

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私たちはシェフが聞いてくれさえすればディナーにブータンキュイジーヌをオーダーし、どのAmankoraでも必ず一晩はそれにした。
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ついには民家へ上がり込み、家庭の主婦が作るブータン料理を振る舞われる幸運に遭遇。(Amankora、用意周到なんである)
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酒類販売の一般的でないブータンの、家庭蒸留酒アラを飲む機会にも恵まれる(万歳)。
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事件その7:あぐらをかいて円座に加わったTashiの黄色いパンツが丸見えだった。ゴの下って、夏は何も履かないのね、ホントに。
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後日談になるが、ブータン料理で一番代表的なエマダツィ(チリとチーズの煮込み)はここの奥様の作るのを見学、クニちゃんが空港の本屋で隠し撮りしたレシピを送ってくれたため、帰国後すぐの軽井沢で早速料理に及んでみた。
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なんか、違う・・

ってか、明らかに違う・・

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(これ奥様の鍋&正しいエマダツィ)

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(私の鍋&私的エマダツィ)

クニちゃんが欲しがったキッチュな打ち出しのキッチンツールもとりあえずアップする。
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私が欲しかったのは、市場でみたヤク(Yak)のソーセージとチーズ。
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ロイヤルブータンエアライン搭乗前に取り上げられるのは必須なので買えなかった。

ちなみに垂涎のヤクのカルパッチョ。
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フツーに出てきたヤクバーガー。
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固ーい・・・

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I love Bhutanese cuisine.

嗚呼。






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