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銀座、風邪の入り口 [ハーバル]

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連休最後の日、渋滞を避けて夜出発しようとした軽井沢は、昼過ぎからみぞれ、そしてすぐに雪が降りしきるようになる。
夜まで待ったら碓氷峠は凍結してしまう!と、大急ぎで支度をし、山荘中のゴミをトランクに詰め、泣き叫ぶ(いつも帰るときはこう)ミナサンを積んで出発。
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軽井沢の客全員が同じ思いだったらしく、もうプリンス通りから大渋滞。
上信越、関越ともずうっと渋滞。
へとへとに疲れた。

その辺りから体調不良。
筋肉痛と鼻水。
カットとカラーリングにサロンを予約していた休診日の朝は胃もむかむかする。

来たか。
周りに風邪引きさん、多かったもの。

千鳥が淵の掃除もしなければならなかったので、葛根湯を飲み、シャワー後にローレル(Laurel:Laurus nobils)を擦り込んで出かける。
食欲が無くて、朝フルーツピュレを飲んだだけで、掃除を終え、サロンへそのままなだれ込む。

カラーリングの後に必ずヘッドスパをしてもらうのだが、その頃には何だか両手もしびれて来る。
馴染みののセラピスト、ホンダさんが肩をほぐしてくれながら今日の体調を尋ねてくれる。
「もう風邪の入り口で、胃が気持ち悪くて・・・」
と訴えると
「じゃあ、今日は効用重視で・・」
とスイートマージョラム(Marjoram:Origanum majorana)とカモミール(Chamomile:Chamaemelum nobilis)をブレンドしてもらうことにする。
カモミールはあまりに強い香りが敬遠されて、私も自分の施術では滅多に使わないオイルだ。
でも今日はその加温効果が筋肉の鈍痛にぴったりなように思える。

ホンダさんのゆっくりとした首筋や肩のツボ押しとヘッドスパでかなり筋肉がほぐれる。
だが、手のしびれは最高潮。出されたハーブティのカップも持てない。
自分でもどうしたんだろうとパニックの一歩手前になり、どきどきする。
そしてふと朝からフルーツピュレ以外何も食べていないことに気付き、低血糖に陥っているのだと自分で納得する。

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「これ、よかったら。ニュージーランドのマヌカ・ハニーのハーブキャンディです。私はこれでのどの痛みは治ってしまいます。」
とホンダさんが小さなキャンディを二つ、手のひらに乗せてくれる。
まるで私の低血糖を見透かしたように。

ありがとう!
まるで砂漠で一杯の水を差し出されたような気持ちになる。

急いでキャンディをほおばり、ピンチを切り抜ける。
マヌカの濃い甘さがじんわりと身体に染み通っていく感じがする。

ホンダさんの私物なんであろう。
筋肉痛と言う訴えに短絡的に強い圧をかけること無くほぐしてくれた判断にも感謝。

こんなセラピストに私もなりたいと思う。

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お人好し。
いつも女番長メグにドつかれているのに、メグが車酔いすると必死に私に訴えるクロ。

石坂ゴルフ倶楽部、崩れ落ちそうな心 [ハーバル]

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ああ。
また130なんていうスコアを叩き出してしまった。

そうは見えないらしいが、些細なことで落ち込むタイプだ。
出来ると思ったことが出来なかった時、人前で失敗した時は特に落ち込む。
ゴルフはそれが束になって降り掛かってくる鬼門だ。
だから余計に遠離ってまたヘタになるという悪循環を繰り返す。

年に一度のクリニック主催のコンペは、どうあがいても逃げる訳にはいかない。
そのあとの祝勝会の最後で挨拶もしなければならない。
最悪だ。

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一緒に回ったのは義弟や会計事務所の所長さんで、気心の知れた人たちだったので楽しいには楽しかったのだが。
・・・というか口では冗談飛ばしながらも、自分のミスショットの重大さに本当は膝から崩れ落ちそうだったのだ。

挨拶もしどろもどろになり、とても二次会までなんか行ける気分ではなく、夫を送り出してからしばし、ぼーぜんとする。

憂鬱というのでもなく、悲しい訳でもなく、ことごとく自分のすることがウマく行かなくて自信を無くす。
こんな時は、ベルガモットやローズ、ジャスミンに慰めてもらいたくはない。

お湯をはったバスタブにリツェアクベバ(Litsea Cubeva:Litsea cubeva)を少量溶かし込んでみる。
スパイシーでレモンのような鮮明感がある。
倒れていた心がようやく起き上がってくるような気がする。

普段はそのずぼらさが鼻につく夫の、神経の図太さを見習いたい。




六本木、らんぽちっくな夕暮れ [ハーバル]

日曜午後遅く、パーキングを探して迷い込む。
ちょうど六本木ヒルズと西麻布交差点の中間ぐらい。
そこに、呼ばれたかのように・・・
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表通りの華やかさとはまるで無縁の澱んだ薄暗がり。
この界隈だけ、昭和で時が止まっているようだ。
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ひかりはいつ。
光は、いつ?と読めなくもない。

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スーツケースが打ち捨てられている。
誰が、何のために、中に何が。

江戸川乱歩の舞台設定のようだ。
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視線を上に向ければ、そびえ立つヒルズが、時は平成であることを誇示しているのに。

通り一本向こうはけやき坂で、ちょっと落ち目と言いつつも一世を風靡した「今」が存在している。
でもこの界隈はそんなバブルを細い横目で見つつ、時代に取り残されてったのだろうか。
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そのとおり!
イヌの顔も可愛くなくて、昭和の激動を背負っているかのようだ。

ヒサコおばちゃんちの押し入れのほこりのような、パチュリ(Patchouli:Pogostemon patcuouli)の匂いをこの情景の中にふと嗅いだような錯覚を起こす。

昭和の家には、空気清浄機も除菌スプレーも無く、隅や奥には澱のようにほこりの匂いが見つかったものだ。

一瞬、セピア色の夢を見たような不思議な夕暮れ。


自宅、出発前 [ハーバル]

何やら大きな段ボール箱が届く。
?????
大体、買い物の時間を惜しんでツーハンでモノを取り寄せるのは自分なので、覚えの無いその箱に疑問。

「あー、オレオレ!(詐欺?)お前の旅行のためにいろいろ買ってやったよ」

えーっ、そんな(大きな)お世話、結構ですのに。
オンナ一人旅はいかに荷物の重量を少なくするかが悩みどころですのに!

まずはこれ。
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はい。
もちろん飛行機の中でエコノミー症候群にならないよう、足に巻いた小さなエアバッグが作動するもの。
ウィーンウィーンとやってたら隣の人、訝るだろうなあ。
どうせなら両足欲しいなあ、なんて。

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旅は乾燥との戦いでもある。
機内でもホテルで寝る時もマスクをしているおかしな女房のためなんでしょう。
ペットボトルで手軽に加湿できるグッズ。
ええ、ええ、確かに必要かもしれません。

その他、携帯用ウォシュレット、トランクの中を整理するためのポーチ類、などなど。
ま、確かにあれば便利だろうけど、無くても今まで大丈夫だったものばかりだ。
正直、500グラムでも荷物を軽くしたい現状においては、お気持ちだけ頂いて行きたいんだが。

でもなあ・・・
働いてる自分にわんこ3匹を押し付けてパリに行ってきますという女房に文句も嫌みも言わずに、購入してくれたものだもんなあ。
私の一人旅を一番おもしろがっているのはコイツかも知れない。

急に寒くなったのと(外は木枯らしですぜ・・・)忙しさで免疫が落ち、喉が痛んでちょっと熱っぽい。
一旦旅支度に入れたローレル(Laurel:Laurus nobilis)をごそごそジップロックから取り出し、セントジョンズワート油で希釈して鎖骨下と脇の下に塗り込む。
こんな状態に海外でなった時の私のレスキューなのだが、もう家でカードを切ってしまった。

あと数日、怒濤のような日々を乗り切ったら出発である。



軽井沢、夏の終わりに [ハーバル]

土曜の仕事を終えてから、夫と副院長と3人で軽井沢へ来た。
夏の最後、お疲れさん会である。
夜は飲みながら、いろんな話しをした。
クリニックも10年、いろんなことがあった。

そして本日は豪雨続きのあとの、ありがたさ倍増の晴天。
3人でゴルフに出る。
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ネットで手に入れたばかりのクロマックスは日光が当たるとキラキラ光り、グリーンのアンジュレーションをころころと色が転がっていく様は見ていて楽しい。

何だかゴルフギアが急速におしゃれになってきた気がする。
オッサンがするものと相場が決まっていて、ウェアもあか抜けなく、10年前開業と同時に始まったクリニック主催のコンペのために始めたゴルフの、どうしても夢中になれなかった原因はそこにある。(多分、他にもある。才能とか・・)

しかしゴルフ、今やギャルも姫もすなるもの、ギアもウェアもきらきらぴかぴか、コースはフロリダかカハラかだと今月号の25ansはおっしゃっている。
接待オヤジの汗と欲にまみれた白黒テリアやペンギンマークは、いきなりパリス・ヒルトン級の奔放なミニスカートやスワロフスキーをちりばめたトップスに席巻されつつある。
あ、ゴルフってこういうのもありだったの、という感覚がかなり新鮮だったりする。
それならば、毎年のコンペでの低迷ぶりを払拭するにはそういう可愛いギャルゴルフグッズで(ミニスカは無理だが)、萎えていく身体と気持ちをリフトアップさせるしか無い。

3人でのんびりラウンドしたあとは、山荘のお風呂にゆっくり浸かり、明日からくる筋肉痛に備えてラヴェンダー(Lavender:Lavandula officinalis)を首筋と肩にたっぷり擦り込む。
それでもまだ日の高い3時半。

ラヴェンダーの香りに引き込まれるように、3匹と午後の昼寝である。








列島、亜熱帯化(汗) [ハーバル]

クリニックで仕事をしていると、空が一転にわかにかき曇り、雷鳴轟き、滝のような豪雨が駐車場のアスファルトを殴りつける。
そんな日がここ数日続いている。

まるで東南アジアの雨期のようだ。
私が子供の頃は(遠い昔だ)、真夏でも30℃を超す日は1週間ほどで、それも31℃とか32℃とかのかわいらしいもんだった。
クーラーも一家に一台、お客様が来る部屋くらいしか入っておらず、昼間はその部屋に入らせてもらって、夜の暑さは扇風機か団扇(!)で何とか凌げたものだ。

ところが!
今や35℃だって当たり前で騒ぐ気もしない。
加えて今年は湿度が異常に高いのと、続く豪雨で日本列島すべてお疲れ気味である。

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我が家のおイヌ様達もすっかりばてばてである。
一昨年の夏、夫が3匹を散歩に連れ出そうとしたら、暑いの大嫌いのベベが玄関前でう○ちをしてさっさと家の中に戻ってしまい、夫のプライドがいたく傷つけられた。以来、散歩はすべて私の仕事になった。
一日中エアコンに当たりっぱなしなのでさぞ外に出かけたかろうと、仕事が終わった夕暮れ遅くに連れ出そうとするが、みんな気乗りのしない顔である。
それでも無理矢理連れ出すと、10分も歩かないうちに、べべが先頭を切って自宅の方向にまっしぐらに走り出す。
それにつられたように他の2匹も走り出すので、まるで犬ぞりレースだ。
私だけが大汗をかいてはあはあぜいぜい、誰の運動かと腹が立つ。

一日に1.5ℓ飲むことにしているコントレックスに、夏はペパーミント(Peppermint:Mentha piperita)のハイドロソルを入れている。
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熱を下げ、疲れ切った胃や肝臓をいたわってくれるうえ、その清涼感のある香りでうだる暑さを吹き飛ばしてくれる。
夏以外はあまり使わないペパーミントのハイドロソルだが、今は小さなワインクーラーの上客である。







日本全国、父の日、R50・もう二度と妻は口説かれない [ハーバル]

すっきり晴れた日曜日、夫は早々と起き出し、一人でコーヒーを入れ、一人で残り物のご飯を食べ、いつものようにゴルフに出て行った。
父の日の今日も何も変わりはしない。

我が家は、ずっとずっと母子家庭だった。
よって父の日、というのは、母の日以上に「無い」ものだった。

無給で、毎日のアルバイトで生活費を稼ぐしかなかった当時の医局制度のもとでは、それは仕方のないことで、特に私と学生結婚をしてしまった夫は、国家試験に通るとすぐ長男も生まれ、当直で生活費を稼がなければならないという宿命を背負わされたのだ。
そのためにあきらめたものは、彼にとってとてつもなく大きなものだったが、そのことに対しての後悔の気持ちを私は今もって彼にぶつけられたことはない。

最近、超メタボな夫の宿命とも言うべき血糖値が上がったままになってきた。
完璧、糖尿予備軍だ。
このままでは下肢切断、失明、心筋梗塞と恐ろしい合併症になるのを待つばかりだ。

一計を案じ、厨房主任アカシさん(管理栄養士)に糖尿食の献立を作ってもらい、仕事でなかなか料理に手が回らない私に代わり、ヘルパーさんを頼んでその食事を実践することになった。

ところがである。
周囲の心配と配慮と工夫を見事に蹴っ飛ばして、ヘルパーさんが来ない休診日にはゴルフに出かけて飲みたいだけ飲んでくる、それ以外にもなんとか会、なんとかの集まりと称して飲みに出かける。
苦言を呈せば、「オレの血糖値なんて正常に毛の生えたくらいのもんだ」と訳の分からぬ言い訳をする。
ついに私は切れた。

初めて机の向かい側の夫のPCにメールを送る。
 私はあなたが片足を失っても杖には絶対ならない。
 私はあなたがR50コンピレーションを贈ってくれても二度と口説かれない。
 自分と家族とクリニックと患者様に責任を持てないなら、道ばたでのたれ死んでも私は知らない。
 反論があるなら、半年で10キロ痩せ、血糖値を正常に戻してから言ってくれ。
 それすらできないのなら、「正論」を口にする資格なんか無いんだ、と。

かなり本気だった。
これで彼が怒って、別れる、と言うのならそうするつもりだった。

次の日から夫は長らくほったらかしにしておいたランニングマシーンで走るようになる。
ゴルフの後の飲み会でも参加はするが飲まないで帰るようになる。
そして返信メールが来た。

「いろいろ反論したいことはあるが、お前の言う通り、半年で10キロ痩せ、血糖値を正常に戻したら言うことにする。もう一度・・・」

さあ、今日ぐらいはゴルフから帰った彼と食事に行こうか。
息子たちから音沙汰もないだろう。
血糖値降下作用のあるガーリック(Garlic:Allium sativum)のたっぷり入ったパスタでも・・・

・・・とここまで書いてアップしてあったのだが、ゴルフから帰った夫には、うれしいプレゼントが届いていた。
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POTTY(おまる)PUT-TER。 アメリカ人てほんとにおばかな(potty)もの考えるなあ。

長男夫婦から新潟のお酒とこれが・・・・。
二人で大笑いして、早速セットしてみる。
夫はお嫁さんからの手紙を読んで心底うれしそうだ。








骨董通り、フリッツ・ハンセンの揺り椅子 [ハーバル]

骨董通りに面した狭い階段を上がり、部屋の真ん中に静かに佇んでいるその椅子を一目見た時、すぐにそこに抱かれて眠りたい思った。

一進一退の父の病状、クリニックのメンテのトラブル、たるみがちなスタッフの指揮系統、増築への嫌がらせの匿名電話・・・・
体力的な疲労よりも、自分の脳が一片ずつ削いでいかれるような心の摩耗は、気力も心身のバランスも奪い去っていく。

休診日だが午前中は月末の決済に向けて駆け込みのデータ入力をした後、自分でもリミットだと感じ、行きつけのアロマテラピーサロンに電話する。
運良くキャンセルが出て夕方から施術を受けられることになり、雨が降り出した高速を走って青山へ向かう。

普段アロマテラピーを受ける時間ができたときは、うれしくてるんるんしながら飛んでいくのだが、今日は青山まで行くのすら億劫に思うほどである。

骨董通りの外れの駐車場から、サロンへ行く途中にアンティークの北欧家具を扱うその小さな店はあった。

12畳くらいの部屋の真ん中に静か揺れていたのはフリッツ・ハンセン社の1940年代のロッキングチェアで、何のてらいも無い北欧家具らしいシンプルな白木の椅子だった。
使い込まれて丸くすり減ったアーム、生成りの張り地の隅のほつれ。
その佇まいのすべてが無性に優しく、素朴で、攻撃性がない。
一目見て、今の私にはこれが必要、と直感した。
購入を決め、自宅ではなく軽井沢の山荘に送ってくれるよう手配した。

サロンではなじみのセラピストが私の顔を一目見て「お痩せになりましたね」と言った。
何も言わず彼女が一番に選び出したのはメリッサ(Melissa:Melissa officinalis)だった。

香りはレモン様で皮膚刺激があり、日光に当たるとシミを作る。
アレルギーなど免疫系等に効果を発揮すると言われているが、高価で禁忌が厳しいので、身体的な症状には同じような作用を持つ他のオイルで十分代用でき、私は滅多にクライアントさんの施術に使うことは無い。(先日湿布にはしてみましたが)

いつもならウッド系の重いブレンドが好みの私だが、今日は重く、濃い香りは体が受け付けなかった。
この日のブレンドはメリッサ、ローズゼラニウム、ベルガモット。
どれも心身のバランスを整え、沈んだ心に作用するものばかりだ。
あえて同量でブレンドしてもらい、どの香りが強調されるのか知りたかった。

疲弊した気持ちに、この香りはどん欲に吸収された。
フレグランス・ノートはメリッサが終始頭一つリードした。
すっきりとはしているが、決して冷たくはなく、むしろ温めて心を解き放つ。
いつまでもいつまでもベッドに横たわってこの香りを嗅いでいたかった。
今の私にメリッサを選んだセラピストに脱帽だった。

心は明日のクライアントさんに向かい始めた。
同じ並びのショコラティエ、「Mon Loire」でオレンジピールとチョコに浸したマンゴーチップ(おいしいです)をクライアントさんのために買って、激しくなり始めた雨の中を、フリッツ・ハンセンの椅子に揺られる日を夢見ながら帰途についた。







ふじみ野天狗、小さなトガちゃん [ハーバル]

6年前、面接にやってきたその子は、おびえた迷子の子犬のような目をしていて、顔を赤らめながら「パートで雇ってください」と消え入るような声で言った。

当直をさせようとすると「一人ではできません」。
患者さんの前でも顔を赤らめてうつむく。
「もっと自信を持て!もっと声を大きく!」
院長がぶち切れそうになることも何回かあった。

その彼女が、実は大好きな彼の後を追って山形から埼玉に出て来たということを知ったのは、雇用から半年ほど経ってからである。
いつもおどおどしているような彼女のどこにそんな情熱があるのだろう?
一見、「今時の若い子は・・・」とも言われかねないようなその背景がちっともはすっぱな感じに思えなかったのは、日頃の彼女の謙虚すぎるまじめな勤務態度のせいだった。

できるようになった週2日の当直にも音をあげなかった。
後から入った正看や助産師や次々と常勤になっていっても、パートに甘んじ、給料を上げてくれとか、待遇を良くしてくれというような要求も一切しなかった。
でも年に一度の職員旅行の後で、クリニックで私の姿を見るとこれまた喜んだ子犬のように駆け寄って来て、「楽しい旅行をありがとうございました!」と言うのも彼女だった。

准看はなかなか常勤になれないのが現状だが、勤続5年が過ぎた年末に彼女を常勤に上げようと院長と話し合い、婦長から通達した。
返って来た答えは意外なものであった。
「来春に彼が山形に帰るので、自分も一緒に故郷へ帰ります。常勤は辞退します。」
黙って半年後のその時まで常勤に居座ってしまうこともできたのに、そんな中途半端なずるいことができないのがトガちゃんだった。

細くて、小さくて、いつも自分の存在を消してしまいたいような、よく見ないといるのかいないのかわからないようなトガちゃんが、またまた彼の後を追って故郷へ逆戻りするという意地を見せた。
それならば、と同僚のナースがみんなに呼びかけて一人一人の写真にメッセージを書いたアルバムを作った。
メッセージに一番多く書かれていた言葉は「絶対幸せになってね!」という言葉だった。
みんながトガちゃんはここからお嫁に行くと思っていたし、みんなで彼女の幸せを見届けたかったのだ。
彼の顔は見たことが無いけど、こんないたいけなトガちゃんを山形へ連れて行ってしまう、それならその彼が必ずトガちゃんをお嫁さんにしてね、というみんなの気持ちは真剣だった。

普通パートさんの退職時にはオフィシャルな送別会はしないのだが、今回はみんながお金を出し合い、送別会を企画した。
院長も外来診療の合間に、トガちゃんに送る思い出の写真を満載したスライドを作成したりして、その夜ふじみ野の居酒屋さんで20人以上のスタッフが彼女を送った。

スタッフ同士でまたトガちゃんと積もる話もあるだろうと、院長と二人早々に店を後にする。
家に帰り、この頃飲んだ後にはお決まりのフェンネル(Fennel:Foeniculim vulgare)・ティーを入れる。
セリ科のキャラウェイと同様、消化促進には素晴らしい効果が期待できる。
エストロゲン作用もあり、私のように更年期の障害がある場合は、毎日続けて飲むことをお勧めしているティーである。

われわれ雇用側にとっては職場は永遠の居場所だが、スタッフにとっては一過性の人生の通り道であることも多い。
いろんなスタッフが以前の生活に区切りをつけて入ってきては、また違う人生を歩むために出ていく。
われわれはその繰返しを傍観しているしかない。
そこに私情を入れてしまうと裏切られることも多く、10年も雇用側に立っていればそれぞれのスタッフに過剰な感情移入をしないほうが楽だと学習する。

でも小さなトガちゃんは、そんなわれわれの学習がどんなに味気ないものかを教えてくれた。
私も院長も、実の娘を手放したような寂しさとこれから戦っていくのである。













クリニック、春が来て・・・ [ハーバル]

エプロン、長靴、スコップ・・・・な〜んだ?

お掃除のタケウチさんと厨房のアカシさんは、この出で立ちで朝から大はりきりである

白い曲線を描くクリニックの中庭には、設計の團先生肝いりの竹が植わっていて、毎年春になると何本ものタケノコが顔を出す。
白い玉砂利の隙間から細いトンガリ頭が出るか出ないかのうちに掘り起こさないと固くなって食べられなくなってしまう!というので、この季節になると皆うずうずし出す。

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 中庭のタケノコ掘り。ギャラリーもいる。

タケノコは放っておくと増えて建物の土台を痛めるので、どんどん掘ってください、と設計事務所から言われているから黙っていればいいものを、またその掘り出しに院長が口を挟むからややこしい。
「あれとこれは掘っちゃだめって院長が・・・」とアカシさんが口を尖らせる。
どれがよくて、どれが悪いんだか・・・
朝っぱらから、おばさんたちのタケノコ掘りに、白衣姿の院長があれこれ指図している図を想像するだけでオカシイ。

掘ったタケノコはアカシさんの手にかかり、患者さんのお食事に季節感いっぱいの筍ご飯として再デビューを果たす。

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 ピンクのリボンは「院長の許可」が出たタケノコ。

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 「こんなん、採れましたぁ!」by アカシ

春の嵐が関東を通り過ぎた夜、クリニックでは遅い花見の宴が催される。
花見といってもクリニックの2階のラウンジでご馳走を食べてちょいと飲むだけ。

アカシさんの筍ご飯は、醤油やごま油で甘辛く炒め煮た筍の皮がまぶしてあり、絶品。
彼女が、うるさい院長に内緒でクリニックの敷地の隅に植えた山椒の若芽も乗っていて、香ばしいったらない。
他に食べるものがいっぱいあるのに、うちでとれたものだという愛おしさも手伝って何度もお代わりをして食べ、帰りにおにぎりにもしてもらって持ち帰る。

ドクターとナースの日常は戦場のようである。
生命の尊さと危うさがいつも背中合わせの真剣勝負だ。

でもその中のこんな平和な時間の存在は、毎朝まだ私が夢の中にいる6時前にクリニックに通ってきて、ご飯を作ったり、院内をくまなく見回ってお掃除をする、アカシさんやタケウチさんのような職員によって支えられている。
規定の勤務時間かっきりに出退勤するドライなスタッフもいるが、彼女たちのように規定を超えて心で仕事をする職員たちに支えられてクリニックはここまで歩んで来れたのだと思う。

家に帰るとさすがに胃が重く、ケプケプしている。
鼓脹にはキャラウェイ(Caraway:Carum carvi)が一番、というネリー説を思い出す。
お湯を沸かし、蜂蜜にキャラウェイのEOを2、3滴落としたものに注ぎ込み、グロッグを作る。
寝る前、TVを観ながらこれをゆっくりマグカップ1杯。
フランス式のEOの内用はクライアントさんには勧めることができないが、時折こうして自分で楽しみながら試してみる。

セリ科の強烈な香りも、まさに春そのものである。



PC DEPOT、バーキンにMac book Air [ハーバル]

もうっ!

午後レセプトを点検しだした頃から頭が痛い。
半分は見ようと思った入院レセプトを3分の1で打ち切り、夫と食事に行く。
お蕎麦屋さんで熱燗を1合飲んで、軽いおつまみを食べたら少し元気が出る。

帰り道、夫がPC DEPOTに寄ろうと言う。
普段だったら絶対近寄りもしない店である。

何度言ってもネットもメールもやらなかった夫は、今もって携帯のメールアドレスを持たないので、連絡できる確率はかなり少ない。
自分たちの生活に携帯メールという手段がどんなに深く入り込んでいるか、彼と生活しているとその不便さで気付く。

その彼が自著の改訂作業でどうしてもPC メールを開設せざるを得なくなり、秘書役のイトウさんや出入りの業者をさんざん煩わせて、自分のPCにその環境を整えた。
台頭してきたイーモバイルというやつである。
どこででもネットが繋がるというその環境が、私もうらやましくなって来、彼はこんなに便利なものを海外へ持ち歩くため、より軽量のPCが欲しくなってきたこの頃である。
また折りしも毎月の銀行相手のPC作業が、先方のアクセス改定で、現在の私のWindows Meでは役に立たなくなっていたのである!

PC音痴の2人が誰の助けも借りずにPCを2台買おうというのが考えてみれば無謀だったのである。

欲しい機種が決まり、それではお金を払ってお終い、という家電製品を買うようなわけにいかないのがPCだ。
設定もデータ移行もできない私たちはすべてPC DEPOTが頼りなので、そのオプションサービスも頼まなければならない。

2人それぞれ設定と移行して欲しいものが異なり、またそのオプションプランも何種類もあるので、半分酔っ払った頭には何度聞いても染みとおって行かない。 
2時間以上も突っ立ったまま、店員さんの説明を聞いているうちに、だんだん気分が悪くなってくる。
もともと風邪を引きかけて具合が悪かったのに、異次元の世界の説明を必死で理解しようとしているうちに、急速にテンションと血圧が下がってきたらしい。
椅子に座らせてもらう。

8時が閉店という店内で9時過ぎの交渉を重ねている我々の他に客は誰も居ない。
スタッフだけが勢ぞろいで必死にあっちの手続き、こっちの会計と四苦八苦だ。

ようやく(完璧に手続きができたのかどうかはまだ不明だが)店を出た時は10時。
夫は超小型のPanasonic のノートパソコン、私はA4の封筒から滑り出てくるCMを見てから欲しかったMac book Airに。
Windowsからの移行は冒険だが、バーキン35にあれを入れて出かけたいという見栄と衝動が勝った。
ミナサンがお腹をすかせて待っているだろうと家路を急ぐ。

待ちかねたように飛び出してくるミナサンにまずご飯。
頭ずきずきを何とか緩和すべく、バスオイルにラヴェンダーとメリッサ(Melissa:Melissa officinalis)を選ぶ。
メリッサは非常に高価なオイルなので、かなり逼迫したレスキューにしか使えない。
アレルギーや神経の鎮静には一番に上げられるオイルだが、風邪による体の痛みにもそのレモン様の香りと相俟って作用する。
ラヴェンダーはずきずきした痛みに、メリッサは疲れきった神経と関節の鈍痛に、湯気と皮膚を通して染みとおっていく。

お風呂から上がり、「弾丸トラベラー」でマリエが死海に浮かぶのより英語が達者であることに羨望し、バーキンにMac book Airを入れるのも楽じゃないと思いながら、就寝。

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ご飯、まだですかー



クリニック、査定したのは誰だ! [ハーバル]

「査定したのは誰だっ!産科医なのかっ!」

出た!
院長18番の禁句。

電話の向こうで支払い基金の係員がどぎまぎしているのが目に見えるようだ。
もちろん誰が査定したかなんて言える訳が無い。

診療報酬の請求は、毎月の医事課の一番重要な仕事だ。
クリニックの経営に直接関わる仕事ゆえ、月初めには私も入って課内全員で点検をし、漏れ、ミスが無いかどうかレセプトを1枚1枚点検してから医師会に提出、保険者分を請求する。

それでもさまざまなルールが猫の目のように変わる基準に照らして、合致しないものについては、返戻といって保険者からレセプトが戻される。
ほとんどが資格違いなどのケアレスミスだが、中にはいろんな資料を引いてもどうしても査定に納得のいかないものもある。
返戻はそのまま受け入れ、反論はしない、という医療機関もあるが、それだとどんどん目減りしていく(査定は減額だけで増額は無い。オカシイ!)のと、どうして返戻されたかを調べることは、帰ってきた答案の間違いを見直しすることと同じで、医事課のスキルアップにものすごく役立つので、わがクリニックでは毎月スタッフが順番でその見直しに当っている。

スタッフが自分の力が及ばないと感じる返戻が時折あり、そういう時は院長(夫)に上申する。
院長が見直して間違いに気付き、医事課が頭をコツンとやられることもあるし、院長が改めて調べてもやはりこちらに間違いはないと思えるものもたまにあったりする。
「支払い基金に電話しろ!」
院長の指示が飛ぶ。

先ずは医事課が「査定の理由を教えてください。」というスタンスで当るが、たまに「査定した先生は3週間後(!)でないと来ないので、それまで待ってください。」などと思い切り適当にあしらわれることもある。
そんな時である。
「俺に代われ。」
院長節炸裂の瞬間である。
手を動かしながら、取り次いだ医事課全員の耳がダンボになっている。

こんなことは年に一度か二度あるかないかのレアケースのレセプトに多い。
一時問題になった必要でない処置や薬剤投与を乱発した悪徳医師たちのおかげで、レセプトの査定は針の穴をくぐらせるように厳しくなった。この病名でこの施術や処置は認められませんと突き返される。

しかし、レアケースということは医師側も前例が無いため渾身をこめて治療に当っているということで、その命を助けようという自分の必死な処置を、あっさり減額査定した医師よ、同じ産科医ならなぜ判らないんだ!というところが院長の琴線らしい。
あくどく、やってもいない処置を施したことにして請求したどこぞの医師と一緒にするな、というのが彼の怒りの本音だ。

この返戻のセットアップと修正にかける労力は半端でなく、限りなく面倒で、それでどれほどが認められるかというと、交渉に費やした時間と電話代と送付する切手代のほうが高かったりして皆で苦笑いすることもある。
支払い基金や国保連合も一医師の「大いなる情熱」にいちいち付き合ってはいられないだろう。

でも、自分は間違ったことをしていない。
自分はその時持てる力を最大限に使って小さな命を救ったのだ、危険な産婦を救ったのだ、という院長の仕事への自負は、「査定されたんだから仕方なかろう」という一般の考えをはるかに上回るものだ。

家では脱皮し続け、だらしなさにもほどがある、とイラつく相手だが、こと治療への情熱と自信に関しては心から拍手を送りたくなる。
口で言うのは悔しいので、私にできるのははタイ好きの彼の入るお風呂にレモングラス(Lemon grass:Cymbopogon citratus)入れてあげることぐらいだ。
レモングラスはThe ORIENTALのアメニティにも反映されたタイの代表的な香りで、頭脳を明晰化させ、リフレッシュさせ、毒素を排出させる。

これでとりあえず怒りを浄化させ、頭脳をはっきりさせて、またがんばってね!という私からのメッセージととってもらえれば嬉しい。


自宅、ネット・デ・ニース [ハーバル]

「なんで?」

布団の中で悶絶しながら自問自答する。
だって今日は何ヶ月ぶりかの「何も予定の入っていない」日曜日なのだ。
なのに、こんなに早く眼が覚めてしまうなんて・・・

どこへも出かけなくていい日曜が来たら、思いっきり寝坊しようと思っていた。
昨晩は遂にその日が来た!とうれしくて寝そびれたほどだ。
だから眠りについてからまだ4時間くらいしか経っていない。
なのに・・・・

6時半、夫がゴルフに出かけるガレージのシャッター音は夢への回帰を完全に阻止。
よおし!と3匹とともにベッドから脱出する。

まずは夫がつけっ放しにしていったあらゆるもの(階段の照明、パウダールームの照明、夫のベッドサイドランプ・・・)のスイッチを切る。
男ってみんなこうなんだろうか。
私が急死したらうちの電気代、パンクするだろうな。

それから習慣化したフルーツピュレ作り。
バナナ、キウイ、マンゴー、あまおう(イチゴ)。
うまいっっ!

新聞を読んで、時事番組をちょっと観て、わんこたちの散歩。
黄砂だか埃だか知らないけれど、グレーのべべと真っ黒なクロはいいとして、ミルクティー色のメグは、足はもちろんお腹までどす黒く汚れる。
「腹黒メグ」と一人笑いしながら、バスルームで3匹のシャンプー。メグに顔を引っかかれる。

陽がかーっと明るくなってきて、洗濯機を2回回す。
夫のズボン下はいつも靴下が付いたままかごに入れられている。
・・・・脱皮している。

そして久しぶりに家でPCに向かう。
6月のプロヴァンス研修旅行につなげて、留学がちょうどその時期修了する次男をニースに誘ってちょっぴり「豪遊」しようと、ニースのホテル選びをネットで始める。
「ニースなら是非ネグレスコにしなさい」という人は多いが、どうもクラシックかつ重厚すぎて気分が重い。
もっともっとコートダジュールらしく、明るく、陽気なところ!
・・・で近ツリのサイトからLa Perousのsee view terasseに予約を入れる。
期待してるよぉぉぉ!

・・・と書くととても手馴れて簡単に予約が完了したように思えるが、なんとなんと・・・
こんなにネットで海外のホテルを予約するのが大変だとは・・
パスワード、予約ナンバー、何とかナンバー、個人情報をどんだけ入れたことか。
う~ん、これでほんとに紺碧の海を臨むsee view terasseが手に入るんだろうか?

時計を見るとすでに4時!
ほぼ半日をホテル予約に費やした形だ。
まずい!
老眼を駆使した結果はがちがちの肩に顕著に現れている。
首が後ろに回らない。去年盛大に転んで以来、頚椎はヘルニア気味だ。

洗面器に熱い湯をはる。
ダイレクトにEOを浸透させるとっておきの手段で勝負に出る。
ラヴェンダーとスイートマジョラム(Marjoram sweet:Origanum majorana)を5滴ずつお湯に落とす。
浮き上がっているオイルをそっと沁みこませる様にハンカチ大のガーゼをその上に浮かべる。
ガーゼを軽く絞ったらがちんがちんの両肩と後ろ首筋にのせる。

お湯の温かさとスイートマジョラムの引赤作用で、両肩がじんわりと暖まりながらほどけていくのがわかる。
ふんわりと肩が軽くなる。ラヴェンダーが鎮痛し、鎮静してくれ、同時に気持ちがほぐれていくのを感じる。

しばらくそのまま寝転がってニースの写真マガジンを眺めて、再び「よおし!」と立ち上がる。
朝乾した抜け殻(?)を回収しに2階へ上がる。

夕闇が濃い。


080310.jpg
 脱皮後。



私室、ドント ディスターブ [ハーバル]

日中の気温30℃のバンコクから4℃の成田に降り立ち、怒涛の1週間が過ぎた。

それはそうだ。
インストラクターコース修了試験が控えていることも、給与計算をしなければならないことも、「プロジェクト」のレポートをまとめなければならないことも、みんなわかっていたはずだ。
それに目をつぶって飛び出したんである。
ツケが回って当然なんである。

旅支度はいまだに大きなトランクに詰められて、パウダールームに鎮座ましましている。
分け歩くお土産と洗濯物をようやく引っ張り出しただけだ。

仕事の合間合間にレポートをまとめる。
3週間の抗しわ対策のだ。
セージ・ハイドロソル、フリクション107、ABOフェイスのトリオはいい!
これまで使っていた化粧水と美容液は廃止してこのセットに取り替えることにする。
残念ながらしわが無くなったという報告はできないが(年のほうが強かった?)、乾燥は確実に無くなったと思う。
使用前、使用後の自分の写真を添付すべきかどうか迷う。
夫が「添付したら落とされるぞ」と言うくらい、酷い写真だけれど。

夕食時に夫がおいしそうにビールを飲むのを睨みつつ、お酒は我慢だ。
お酒を飲んだら最後、夜中の試験勉強は放棄されてしまう。
襲ってくる睡魔と闘いながら、10のゴールデン・ルールズや禁忌を書き殴る。(書かないと覚えないタチ)
私、何と戦っているんだろう。

給与計算は20日過ぎの2大ハードワークのひとつだ。
社労士相手に打打発止。
だいぶ時間を超過する。
私、医療法人からは一銭ももらってないのに。

午前中は毎日マタニティの施術。
水曜には午前中クリニックでアロマの説明、都内へ飛び出しインストラクターコースの最後の講義と修了試験を終え、とんぼ返りでフラの練習。
木曜は夫の足の悪い母を銀座に連れ出し、ベージュ東京で食事。
エトセトラ、エトセトラ・・・・

ふうう。
ようやく土曜が終わる。
明日日曜も振込みの入力をしなければ間に合わないが、とりあえず午前中はゆっくりだ。
精神的にグラウンディング(着地)ができない時はヴェチバー(Vetiver:Vetiveria zizanoides)が助けだ。
土臭く、単体で嗅ぐと嫌な顔をされるオイルのひとつだが、私は好きだ。
グラウンディングできない時が多いせいだろうか。
ベッドに入る前の5分間、ヴェチバーをデフューザーに入れ、高速回転させる。
そのぶんだけでベッドルームは落ち着いたうす茶色の世界になる。

Don't disturb.
今夜はゆっくり眠ろう。


▲リスボン、ラパ・パレスのDon't disturbは赤いリボン。緑のリボンを出しておくと「掃除してください」。


▲チェンマイのTHE CHEDIのDon't disturbは木彫りの人の顔が「しーっっ!」と指を口に当てているタグ。銭湯の下足札のようだ。


▲サムイ島、THE LIBRARYはマグネット・プレート。Don't disturbは2種類。分ける意味は不明。


自宅、3日でおおっ! [ハーバル]

3日ですでに効果は出始めた、と感じる。
決してブログをおもしろくしようとしているわけではありませんが。

私の「抗しわメニュー」は以下。
①毎朝3分間の腹式呼吸
②朝はフルーツピュレのみ
③ローズマリーかセージのハイドロソル入りミネラルウォーターを1.5リットル飲む
④朝晩セージ・ハイドロソル、107フリクション、ABOフェイスのトリートメント
⑤一日1食しっかり食べる
⑥毎朝自分に微笑みかける
⑦毎日20分間以上のウォーキング
⑧蜂蜜フェイシャルパック(ローズマリー・ローズウッド)
⑨スチームバス(ローズマリー・ローズウッド・サンダルウッド)
⑩小麦胚芽油を小さじ1杯飲む
⑪毎晩0時前に就寝する
ピュレと水で毒素排出、EOとブレンドプロダクツで皮膚トリートメントを狙う。

メニューに繰り返し出てくるローズマリーとセージ(Sage:Salvia officinalis)はスキンケアにかかせないオイルだ。ローズマリーもセージも十字軍の騎士が使い始めたというくらい歴史が古いオイルで、特にローズマリーは宮廷の美女達が争って求めた若返りの水、「ハンガリー水」の主原料である。

セージのほうは、私の年代だとS&Gの「Scarborough Fair」の一節、「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム・・」を思い出すのではなかろうか。
ネリー・グロジャン博士はEOの使用も少量かブレンドであれば、とすぐれた皮膚再生力のために使用を勧めているが、ケトンの含有量が多いのでIFAでは使用が認められていないオイルだ。
・・・なので上記のようにハイドロソルを使うことにする。

始めて3日めの朝だ。
ピュレを飲んで鏡の前に立つ。
身体が軽く感じ、実父の介護でくさくさしていた気持ちが消え、仕事への意欲が湧くのを感じる。
頭の中ではなぜかエルガーの「威風堂々」がエンドレスでリフレイン、これはヤバい!と思う。躁状態になったのか?と一瞬怖くなったが、昨日、ヴィアロームのクラスメート(みんなもそれぞれ「プロジェクト」を始めている)に聞くと、皆同じだった。(威風堂々は違うと思うが・・)
やった!

鏡の中の自分に向かって微笑みかける、というのは、スピリチュアル系苦手の私にとっては少し抵抗のあるレシピであったが、どうしてどうして・・・・
この動作によって、しわのある自分の顔を好きになることが、しわを美しく見せる第一歩だと思い知る。自分の顔を好きならなければ微笑みかけることはできないのだ。
普段意外に自分の顔というものに注意を向けていないかもついでに思い知る。

始める前は暖房の乾燥で、顔にがびがびの皮を一枚貼り付けているような感があったが、3日めでその感触が取れる。
期待できる!と確信する。

夫のほうはピュレと水は続けているものの、昨日も宴会でだいぶご酩酊。レポートも書いてくれない。
そんな気がしたけど、すでに挫折か?!



有楽町、そしてIFA試験が終わった [ハーバル]

IFAの試験が終わったらアロマでしょう!

なりふり構わず勉強してきたのは、この日のためだ。
息子達が独立して空き部屋となった空間で彼らの机に夜通し向かい、気がつくと東の空が初夏の早い朝日でうっすらと明るくなっていた日が最後の1ヶ月で幾日あったろう。
でも!
それもその日午後3時で終わるのだ。

終わったらすぐ飛び込もうと、有楽町にできた新しいネイルとアロマテラピーのサロンに予約を入れる。
にんじんを鼻先にぶらさげられた馬は試験に向かって突進したのだが・・・
結果は散々。
出題予想が大きく外れ、あんなに頭に詰め込んだ知識がただただ重いだけ。

失意のうちにとぼとぼ歩いてサロンへ。
熟年体型の近所のおばさんのような人がトリートメントルームへオイルケースを抱えて入ってきたので、ちょっと引く。
いやいや、私が入ってきたっておんなじだ、と気を取り直して彼女と向かい合う。
コンサルが始まる。

「お困りの症状はありますか?」
「更年期なのでその諸症状にはずっと悩まされています。」
「では、これらをブレンドしてリンパドレナージュをしますね。」
え?
そこに出された3つのボトルを呆然とみつめる。
クラリセージ、フェンネル、サイプレスって・・・
あまりにも昨日までめくっていた教科書どおりだ。
・・・というかフルーツジュースを作るのにみかんとオレンジとネーブルを入れるようなものじゃないか。
それにむくみやセリュライトもなく、リンパドレナージュにする意味がわからない。
「えーっと、これでは香りがちょっと・・・」
とささやかな抵抗を試みるが、
「じゃあ、サイプレスの代わりに・・」
とゼラニウムが出た。
おおっ!またまた更年期のマニュアルどおりだ。

女性ホルモンに関わる症状へのオイルがいくつかある。
その中でも、クラリセージ(Crary Sage:Salvia sclarea)の主成分アンドロステノールの分子構造を化学の時間に見せてもらった時の衝撃は忘れられない。
エストラジオール(E2=エストロゲン)の分子構造とそっくりなのだ。
産婦人科という舞台をバックにアロマテラピーに飛び込んだ自分の選択が間違っていなかったと確信した瞬間だった。

あきらめてベッドに体を横たえ、施術が始まる。
数分で飛び起きて「私と代わってご覧!」と言いたくなる。
そりゃあセラピストとしてはIFAを受験したばかりの駆け出しだ。
でもクライアントとしては色々な国のさまざまなスパやサロンで恥ずかしげも無く身体を晒してきた私だ。
彼女の手の動きが自信が無くおどおどしていることぐらいすぐわかる。
苦痛の80分が過ぎる。
IFA惨敗に加えてこの仕打ちは何だろうかとがっくりくる。

着替えた私の前に、彼女がお茶と名刺を持ってくる。
その名刺に「IFA認定セラピスト」と刷られているのを見てティーカップを落としそうになる。
彼女ですら通った試験に自分は通らないかもしれない、と思うと泣ける。
そしてさっきの自分の思い上がりを恥じる。

IFAは2ヵ月後合格していることがわかったが、あのサロンにはそれきり行っていない。












また埼玉、挙式は目前 [ハーバル]

フラダンスのレッスン後、仲間と飲んでいたら帰宅はシンデレラ。
夫はとっくに就寝していて、夫のベッドに仕方なく同衾していた3匹が喜び勇んで飛び出してきた。(誰かと一緒に寝たいのでとりあえず先に寝たほうのベッドに入ることになっているらしい=3匹間のきまり)

机の上の紙に「これに筆を入れてくれ」と夫の字がある。
明後日に迫った披露宴の謝辞の下書きだ。
「そんなもの」という顔をしているくせに本当はとても気になっているんだ、とおかしくなる。

ありきたりの出席者への御礼の言葉のあと、
「私は大学勤務時代は当直や学会でほとんど家に帰れず、仕事に夢中で家庭を顧みない父親でした。息子達はほとんど母子家庭のような状態で育ち、大学へ入ってからは二人とも家を離れて一人暮らしを始めたので、息子達と過ごす時間は本当に少なかった。ネットもメールもしない私は離れている息子達との連絡手段も無く、私と同じ道を選んだ長男のことさえ、何を考えているのか、何をしているのかわからなかった。父親としては失格でした。」
と続いた。

親には親の人生がまた、ある。
長男が家庭を拒絶していたころ、夫自身も人生の選択を迫られていたし、しかも体調も最悪だった。もともと強くない肝臓が悲鳴を上げていたのだ。

そこから夫は24時間、365日、開設した自分の診療所を守り続けて現在に至っている。
その背中を見ているからこそ長男は同じ道を選んだのだろうし、リスボンに留学中の二男も好きな勉強に没頭できる。
息子達との会話の機会を作れなかった夫は裏からのサポート役に徹してきたのだと思う。

この謝辞は長男自身への夫のメッセージだ。
夫はここでしか長男に自分の気持ちを伝えることができないのだ。

体重が3桁にあとちょっと、という躯体にトリートメントを施すのは大仕事だ。
夫のトリートメントには必ずローズマリー(Rosemarry:Rosmarinus officinalis)をブレンドする。
肝臓にはローズマリー!と学校で繰り返し習ったので、それ以後「海のしずく」という美しい名前とはうらはらに、私にとっては結構パワフルなオイルとしてインプットされているのだ。

今晩は久しぶりに夫にトリートメントをしよう、と思う。


ガットフォセへ・・・パチュリの香りに封をして・・ [ハーバル]

 ▼サムイ島 The Library


東シナ海に浮かぶ島で、ルネ・モーリス・ガットフォセの「アロマテラピー」を紐解いた。
時はタイの雨季。雨が真っ赤なプールに落ちる音を聞きながら、一日ひたすらページをめくる。

「1937年、アロマテラピーの歴史が幕を開ける」
帯の言葉はセンセーショナルな胸騒ぎを掻き立ててやまない。

―しかしながら、心に残り、最も大切で、さらに最も驚かされるのは、自然界には全てのものに香りがあるにも関わらず、今日に至るまでそれがなぜなのかを誰も探索しなかったことである―
ガットフォセのこの視点は、4人の医師たちと行った、精油(エッセンシャルオイル)を用いての気の遠くなるような数の臨床例を経て、効果の一定の結論に繋がっていく。

でも私が最も感動したのは、彼の次の言葉だった。
―私たちは最初のステップの完成度についての幻想は無い。誤りや見落としもあるだろう。しかし、それは自然の成り行きである。今日の真実は、明日の胚なのである―
偉大なる業績を修めた後にその成果に対しての限界を悟り、課題の多くは時が解決するであろうという彼の希望の先にあった現代のアロマテラピーの一端に、今自分が立っているということに気づいたからだ。

その島での休日から数ヶ月。
私よりもずっと深いアロマテラピーの理解者であった(偶然にも)ウェブデザイナーの協力を得て、お互い思い入れが強すぎてなかなか進まなかったオフィキナリスのHP(http://www.n-officinalis.com/)は、幾重の試行錯誤を重ねてようやくアップの日を迎えた。
今の気持ちを香りでたとえるなら、華やかで豪華なジャスミンやローズではない。
古い図書館の書庫の中のような静かなパチュリ(Patchouli:Pogostamon patchouli)。時間の埃。
1937年から降り積もった時間の中に、ようやく今入り込んだような気がする。


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