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銀座、隣にご注意! [ブレンド・プロダクツ]

研修医として働いている長男から、次男の帰国祝いをやろうじゃないかと電話があった。

場所は銀座だ。
息子二人なら夏は当然焼き肉だ。
そこに可愛い長男のお嫁さんも入れて、今回は夫と5人だ。

夫と同じ、産科医として歩き始めた長男と夫は話しが弾む。
ついこの間までフランスを一緒に旅してきた次男は、私のつけていたフリクションが「臭い!」と非難轟々である。

ヴィアローム社の12のフリクションは、ネリーのアロマテラピーの集大成ともいえる原液のEOのブレンドなのだが、いかんせん、効果を最大の目的としているため、香りとしてはかなりめちゃくちゃ、というか度外視していると思う。(ネリー的には香りもOKなのかなあ?)
デトックスのMINをレシピどおり朝5カ所に擦り込んで職場に行ったが、あまりにすごい匂いなので同僚からクレームがついた、という話しを友達から聞いたことがある。
香りを度外視しているっていうことは、嗅覚からの作用も度外視しているっていうことなんだろうか。
嗅覚を使わず、EOの持つ有効成分を身体に入れることだけで効果を出すことにこだわったとすれば、ある意味、ものすごいことなんじゃないだろうか。(アロマテラピーというカテゴリーからは外れるような気がするが)

私が使っているのは、入眠やリラクゼーションに導くNERである。
これを首の後ろ、みぞおち、仙骨、両足裏の5カ所に擦り込むと、どんなに興奮していても強制的に眠りにおちる感じである。
時差で体内時計が狂いがちな旅行には必携のフリクションなのだが、確かに香りは明らかに同じ作用を持ち、ブレンドにも採用されているはずのラヴェンダーやネロリのような香しい感じではなく、どちらかというと刺激臭に近い。
これを飛行機のトイレで5カ所に擦り込み、さあ、寝るぞ、となったわけだが、NERの匂いに慣れていない隣の席の次男にはたまらなかったらしい。
「アロマの欠点だよな。」
と厳しい指摘であった。

確かに、と反省する。
香りという閉じ込めることの出来ないものを扱いながら、アロマテラピーというものは完全にパーソナルなものである。
個人がいいと思った(あるいは慣れた)香りが、その隣の個人にはたまらなく嫌なものかもしれない。
害はないが、そういう意味ではタバコの煙と同じである。

毎日、EOを嗅いでいるのでプライベートではもう鼻が(腹が、ではなく)いっぱいで、香水はほとんどつけることがない。
でも自分の体調のために使っているものでも、閉じた空間に入らなければならない時、隣と密着するシチュエーションが想定される時は気をつけなければ、と思う。

でも、NER、眠れない方にはお勧めです。
これでかなり今回の旅行は、体調管理が楽だったので。

焼き肉をたらふく食べて、ビールをさんざん飲み、つかの間糖尿食から解放され、息子達やお嫁さんの元気な顔を見て、幸せな夜であった。










乃木坂、水の茶室 [ブレンド・プロダクツ]

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晴れた!
梅雨前の貴重な晴れ間。
友達と六本木ヒルズでランチ。
6階でビルとビルがつながる場所は、こんなきもちのよい小径だ。

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ランチはグランド・ハイアットのチャイナ・ルーム。
来月の会合の下見を兼ねて。

そのあと、團設計のエンドウさんに勧められた杉本貴志さんの「水の茶室」を見に行くことにする。
TOTO乃木坂ビルの間ギャラリー。
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無数のピアノ線を伝って、オイルのようなねっとりした液体がまったりと下へ下へ。
それが壁として成り立ち、最小限の空間である茶室を形成する。
外と中は確実にピアノ線の間でつながっているのに、視覚的にも感覚的にも出入りできない閉鎖感。

外へ出て、今度は向かい側の東京ミッドタウンへ買い物に寄る。
ホールには今ギャラリーで見たばかりの水のパフォーマンスが。
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4層を貫く空間に長い長いピアノ線が下がる。
遥か上から下へ下へ。
途切れも無く伝い落ちてくる水に思わず引き込まれそうになる。

イタリア、Antos社のハンドクリームとリップクリームを買う。
この前のフットケア・クリームと同じように、手足に使うプロダクツには楽しいものが多い。

セイヨウオトギリソウ(セントジョンズワート油の原料)に蜜蝋、シアバター、オレンジEO、グレープフルーツEOをブレンドしたハンドクリームとリップクリームは、イタリアのレシピそのままのオーガニックだ。
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普段と全く違うエアポケットのような時間と場所。
それが尖った神経にやすりをかけてくれる。

アロマテラピーも、茶室も、目的はそんなところにあるのだと思う。





銀座、ふるふるしてください [ブレンド・プロダクツ]

1日がいつもの倍くらいないとだめ、という日だった。

両親学級でアロマの説明、そのあと産後2か月の赤ちゃん連れのクライアントさん(赤ちゃん、かわいかった!)、いつも通ってくださる妊娠28週になった妊婦さん(貧血、低血圧が心配です)をトリートメント、昼食は2時半。

医事課ミーティングの資料を大急ぎで作っているうち、3時に團設計のナナイ君が増築棟の設計打ち合わせにやって来、LAN工事の段取り手配、その後医事課ミーテイングは時間が無く、資料を渡して主任に一任。4時からは現場との定例があり。4時半には税理士がくることになってたのだけど、都内で人に会うことになっていたので、2つのものを頼んでも1つしか実行されない夫に定例と税理士からの決算報告・納付書受け取りを頼み、車に飛び乗り、関越から首都高へ。

首都高に乗った頃、ハンズフリーが鳴り出す。
着信番号はクリニック。
あ、やっぱり。

「税理士の先生がいらっしゃっているのだけど、院長がいません」
予感的中。
頼んだ用件の最初だけやって(それも怪しい)、2個目は完全に忘れている夫の頭だ。
決算の処理締め切りが今月末日で、納付期限が金曜で、税理士も必死なのに。
税理士に電話を変わってもらい、平謝りに謝り、納付書だけを自宅にいるおばさんに届けてもらい、サインは金曜の朝もう一度出直していただくようお願いする。
私、いつかどこかで大事故を起こしそう。いつもウェブデザイナーが心配してくれている。

思ったより首都高がすいすいだったので、税理士に謝っているうちに霞ヶ関インター。
車を銀座の駐車場に入れると、約束の時間まで30分が残っている。
忙しかった今日へのご褒美か?
こんな時間は決して無駄にせず、アロマテラピーグッズ散策に使う。

収穫はあった。
デフューザー、皆さんは何を使っていますか?

オフィキナリスで取り扱いがあるヴィ・アロームのデフューザーは2種。
ネリーさんは振動で拡散させるのもを推奨しており、その方法が一番EOの成分をダイレクトに伝えるものなのだが、何しろかなり薄いガラス製で忙しい医療現場では破損が怖いのと、理科の実験器具のようなデザインが難点で、クリニックではもうひとつのファン形式を採用している。
よく出回っているアロマポット(電熱や炎で温めて揮発させるもの)はEOの成分が加熱で変わってしまうため、香りを楽しむだけならいいのだが、インフルエンザが流行っている時にティートゥリーを拡散させて部屋を殺菌したいというような、薬用効果はほとんど期待できない。

でも!
そこで見つけたのは、白木の台にしずく型のガラス管がセットされ、ちょっと見は小さなランプのようで、モダンなチェストの上に置いたとしてもぴったりハマりそうなデザイン。
スイッチを入れると、細かい振動がふるふるとはかなげにガラスを揺らし、たちまちEOの(ゼラニウムの香りだった)いい香りが立ち上る。
何よりもいいのは、振動の音がほとんど感じられないことだ。
お値段もヴィ・アロームのファン式とほぼ同じである。

パソコンを打っているこの脇にもエリック・サティとふるふるデフューザー。
いい感じである。
仕事をすれば報われる。
そんな気がする。
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aroma drop diffuser。スイッチを入れるとオレンジ色のライトが灯り、振動が始まる。ガラスの中は白い湯気で満たされる。
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右奥から今日買ったデフューザー、ヴィ・アローム社の振動式、同社のファン式、英国フレグラント・アース社の携帯用デフューザー。

いつでもどこでも、ハイドロソル [ブレンド・プロダクツ]

今日はちょっと趣向を変えて、オフィキナリスのクライアントさんからの質問が多いハイドロソルについて。

ハイドロソルとはEOを水蒸気蒸留法で採取する際にできる芳香蒸留水のことです。
芳香植物を蒸気で蒸したり、水に入れて加熱すると、芳香成分を含んだ蒸気が沸き上がります。
この蒸気を冷却してまた液体に戻すと、濃厚な成分を含んだEOと、少量ながら同等の水溶性成分を含んだ水分が分離して採取されます。
この水分の方がハイドロソルです。

ハイドロソルは有効成分の含有量がEOに比べてかなり低いので、効果を絶対出したい!という方はかなり根気よく使わなければなりません。
その代わり不要物や毒性の含有量も相対的に低いし、オイルのようにべたつかず、親水性があり、小さな子供にも安心して使え、用途は限りなく広がります。

他社のものは内用できるかどうかわかりませんが、私がインストラクターの勉強をしたヴィ・アローム社のハイドロソルは、湧き水を使って有機植物を蒸留した最初の20ℓだけを採取したものなので3ヶ月以内なら飲むことができます。
プロヴァンスで採取されてから日本に輸入されるまでにほぼ1ヶ月が要されるとすれば、私たちの手元に届いてからは2ヶ月以内なら飲用が可能だということです。
我が家では小型のワインセラーの中でハイドロソルを保存しています。
冷蔵庫でもいいのですが、冷えすぎて香りが飛ぶような気がするからです。
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飲み方はさまざまですが、私はコントレックス500mlに10ccを入れて1日に3本飲みます。
ティーカップ1杯のお湯に5ccを入れて飲むのも暖まってお勧めです。
アルテミジア(Armoise)、ローズマリー(Romarin)は比較的飲みやすく、毒素の排出を助けます。
香りがよく、フラワージュースのようなローズゼラニウム(Geranium)も身体のバランスを整えてくれます。
すっきりしたいときはペパーミント(Menthe)もいいのですが、私の経験では少し少なめに入れたほうが飲みやすいと思います。
妊婦さんと小さなお子さんの内用は避けましょう。

ハイドロソルは化粧水としてもとても優秀です。
私はセージ(Sage)とワイルドローズ(Rose)のハイドロソルを1ヶ月おきに交代で使っています。
タイアリング(疲れ)やフェイディング(慣れ)がハイドロソルにもあるのかどうかわかりませんが、EOと有効成分が同じだとすれば同じものを使い続けることによってその効果が薄れることも、同じように起こる気がするからです。
セージのハイドロソルはものすごい匂いがするので最初顔に付けるのはかなりためらうのですが、しわ防止には一番!と、いいところを直球でついてきます。

冬場、暖房で乾燥した肌には、ローズ・ハイドロソルをローションパックすると、パックしている間中幸せな香りに包まれ、しっとり感がよみがえります。
フェイシャル用の大きめのコットンを4〜5枚に薄くはがし(できるだけ薄くはがすのがコツです。厚い方がたっぷり浸透していいような気がしますが、肌に密着しません)、ハイドロソルを含ませて顔中に張り付け15分くらい置きます。
ミイラのようにコットンを貼付けた顔は、結構怖いです。

幼児の入るお風呂にはEOでなく、ラヴェンダー(Lavender)かカモミール(Chamomile)のハイドロソルを入れます。
夜ぐずらずに、ぐっすり眠ってくれることでしょう。

紹介し出すときりがないので、今回はこのへんで。
とにかくいろんな使い方ができて楽しいし、EOより禁忌に気を遣わずに使えるのがハイドロソルです。
・・・で、いつでもどこでもハイドロソル、なのです。






クリニック、ベッカム・カプセル [ブレンド・プロダクツ]

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人ひとりがやっと入れるカプセルの中に入れられ、表面のジッパーをジャーッと閉められたときは、言葉は適切ではないかもしれないが、棺桶の中に入ったような気持ちがした。
それでも新しい体験にはプラス思考!という訳で、携帯を業者さんに渡して、写メを撮ってもらう。
それがこの写真だ。

ベッカム、ハンカチ王子というまた宣伝効果抜群のイケメン・トップアスリートたちが使っているというので有名になった米国製酸素カプセルのデモが、クリニックであった。
業者の宣伝文句をそのまま引用すれば、カプセル内に清浄な空気を注入することによって空気圧を通常の1.3倍にまで高め、酸素を通常より多く体内に取り込ませるのだと言う。

酸素が血液、体液に多く取り込まれれば何が起こるのかというと、末梢細胞に酸素が行き渡り、身体機能の向上、疲労回復、老化防止、創傷治癒のスピードアップ(皮膚の再生速度が高まるという)が期待できるというのだ。
ふうん。
まあ、理屈はそうだが、空間の酸素が多くなっただけで、それはイコール体内に取り込まれる酸素量が増えることになるんだろうかという疑問が残る。

とにもかくにも自分の身体で試して実感してみるのが一番だ、というので院長は産後の創傷治癒、疲労回復に採用の価値ありと判断したデモ機をもう一度運び込んでもらう。
業者さんも財布のひもを握っている奥さんを説得しなくては、と院長へのデモの時より必死さが増大している。

外から見ると死体バッグか簡易な棺桶のようで、げっ、この中に入るの?と普通の人は二の足を踏むだろう。
閉所恐怖症の人はダメな人が多いという。うん、そうだろう。

中に横たわり、ジッパーが閉められ、完全密閉状態になる。
空気圧計と非常用ナースコールが手渡されているので、それを握りしめる。
バルブからガス室を思わせるようなシューシューと音がし出してどきどきし、耳がきーんと痛くなる。
慌ててあくびをしたり、唾液を飲み込んだりして圧抜きをする。

あとは40分、一人の世界だ。
ぼんやり眠くなってくる頭で、ここに香りを入れることはできるのか、加圧された空気の中でEOはどう香るのだろうか、を考え、試したくなってくる。
・・・が、いつの間にか爆睡してしまう。

コンコン、と特殊ガラスの窓をノックされ、減圧も終わり行程が終了したことを知る。
ジッパーを開けてもらい、通常の世界に生還。
う〜ん、ものすごく疲れがとれた、という実感は正直薄い。

EOを持ち込むことが可能かどうかを聞くとOKとのことだったので、電池式のデフューザーにヴィアロームの「オランジェリー」を仕込み、再度カプセル・インする。
最初密閉された空間で香しいフレッシュな香りはいかんなく香ったが、加圧が頂点に達する頃はほとんど香らなくなった。(これは次に試してもらった若いセラピストの子も言っていたので間違いないと思う)
分子が圧縮されて構造が変わるのか、原理は追求しないとわからないが、アロマテラピーとコラボさせるには何らかの工夫が必要であることが分かった。

その夜は義弟夫婦と赤坂で食事し、帰宅は夜中を過ぎた。
意識はすっきり、胃のムカムカもなし。
夜遅くまで飲んで鏡を見ると、疲れたオバサン顔にがっくりくるのが常だが、その日は化粧崩れも無くまだ数時間がんばれそう(がんばれないが・・)。

これって、酸素カプセル効果?











銀座、ナツ足のお手入れ [ブレンド・プロダクツ]

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足にハイビスカスが咲いた。

アロマテラピーはエステではないのだが、健全な心身を目指していることから、健康的で清潔な外見を保ち、常に精神をニュートラルにしておくことは、セラピストの義務であると思う。
健康的で清潔な外見は、若ければさほどの努力がなくても日常のお手入れで十分なのだが、アラ50では定期的に人の手にかかることと、日々の研鑽によってようやくそれが保たれる。

銀座の行きつけの美容院で、カット、カラー、ネイル、ヘッドスパのフルコース、16時に入って終わったのは21時という長丁場であった。
その前の友達とのランチでシャンパンを2杯飲んでいたので、最初のうちはかなり「舌」好調でカラリストさんとしゃべっていたのだが、途中でガス欠状態。
ヘッドスパでは爆睡してしまった。

我々セラピストは人様の身体に触れる手には、決してマニキュアやジェルネイルをしてはいけないと厳しく言われているし、爪もかなり短く切っていなければならない。
よって流行の宝石のようなネイルは、足で楽しむしかない。
特にフラを始めてからは素足で踊るので、素爪だと何だか裸でいるようでどうも落ち着かない。
・・・で足のジェルネイルに凝り出すのである。

「今日はフラっぽくいきます」
フラを習っていることを知っている若いネイリストさんが、髪をカラーリングしてもらっている私の足下に膝まづくようにして仕事を始める。
大変な仕事だ。
身体をかがめて爪というごく小さなフィールドに、細密画のような細工を施していく。
1日に5〜6人をこなすというから、終わったら体中が緊張でかたまっていることだろう。
アロマテラピーで緩めてあげたくなる。

爪だけきれいでも、足の手入れを怠っていると角質化はどんどん進んで見られないような足になってしまうので、普段からお風呂ではヤスリや軽石を使って必ず角質を落とすようにしているが、たまに人の手にかけて徹底的にやってもらわないとどうしても行き届かない部分が残る。
で、ネイルの後は角質ケア。
ヤスリをかけてもらった後塗られたのが「キューカンバーヒールテラピー」というキュウリエキスが入ったクリームで、香りといい(キュウリの匂いって嫌いだと言う人も多いが、プロダクツに入るととても穏やかな甘い香りです)、感触といい、すっかり気に入ったので早速購入する。

チェンマイのThe Chediのスパで買ったOriental Sole Foot Creamはレモン、ミント、カンファー入りで、しかもサボテン(!)エキス入りという変わり種だったがものすごく使い心地がよく、足裏に塗るとすーっと疲れを取る成分が浸透して秀逸。残り少なくなり、もっと買ってくればよかったと後悔していたところへ見つけたキューカンバー・クリームだった。

足に塗るものは、顔に塗るものよりアレルギーなどに神経質にならなくて済む分、探すと楽しいものが沢山有るし、ある意味一番疲れにダイレクトに効く部分であり、普段ないがしろにしがちな部分でもあるので、そこにちょっと気に入ったものを使うことによってモチベーションはものすごく上がる気がする。
是非こだわりの一品を見つけていただきたいと思う。
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左:The Chedi SpaのOriental Sole Foot Cream
右:Cucumber heel therapy











日本全国、母の日 [ブレンド・プロダクツ]

先週末は日本全国、母の日・・・だったのに、すっかり忘れて(夫の母と実家の母には前もって生花が届くよう手配してあった)夫が留守なのをよいことに、またミナサンと軽井沢に出かけてしまった。
どんなに疲れていても、仕事の後夜道を1時間半飛ばせば、そこはリトリートなので・・・。

でも次の日の朝、長男のお嫁さんからメールが来て、しまった!と思う。

男の子二人だと、母の日はせいぜい彼らが小学生のうちまで。
お小遣いでコンビニに売っているおもちゃの指輪を買ってくれたり、駅前の花屋でぼったくり値のカーネーションを買ってきてくれた切ないような思い出は、遠い昔である。
中学からは反抗期が始まって、母の日なんてものはどっかにいってしまい、その後はテレビのようにらくらくホンを買ってくれる相談なんてことは絶対になく、離れて暮らしている息子たちにメールで「今日は何の日?」と振っても無視され続けたので、私には母の日はないと悟ったのだった。

ところが、長男が結婚し、お嫁さんの気遣いが届くようになっていたのに、長年の習慣ですっかり母の日を頭から除外していたのだ。
帰って受け取ったのは、ミナサンの長老ベベをモスで形どったプリザーブドフラワーで、抱きしめたいほど可愛かった。
ちなみに・・・・リスボンの次男からは月曜に「昨日は母の日だったらしい。おめでとう。」とメールが来た。
しばらくやってなかったので、母の日は「おめでとう」ではなく「ありがとう」だということが分からなかったみたいだ。長男からメールが行ったのかな?

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何だかしあわせだあ〜。
急に母の日が母の日っぽくなってきた。
でもらくらくホンやカーネーションをもらわなくても、シカトされても、子供たちが自分の道を前向きに進んでいるということだけで、母親っていうのは幸せになれるもんだと思う。
少なくとも私はここ数年ずっとそうだった。
母の日に母として参加しなくたって、いいんじゃない?
安上がりでいい母親だ。うん。
息子たちが無事育ったという達成感が、彼らが私に贈ってくれたカーネーションの大きな花束だと思っている。

カーネーションのバスオイルというのをご存知か?
日本のカーネーションはあまり香りがなく、カーネーションの匂いと言ってもぴんと来ないものだが、サンタマリア・ノヴェッラ(フィレンツェにある世界最古の薬局。EOがその昔薬局で扱われていたことがわかる)のカーネーションのバスオイルは、秀逸だ。
ジェットバスに入れると細かい泡があふれんばかりにたち、その中からカーネーションの何とも甘やかな香りが立ち上る。
私の大好きなバスオイルの一つ、是非お試しあれ。
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サンタマリア・ノヴェッラのカーネーションのバスオイルとフィレンツェで買った手描きのドクターのタイル。(ちなみに、オイルは日本でも手に入ります)









軽井沢、スパ偵察 [ブレンド・プロダクツ]

軽井沢は芽吹きの季節。
柔らかい色と若い芽の繊細さが重なり合う様は、新緑のレースの布がふんわりこの鹿島の森にかかったようだ。

老齢と認知症で話は半分も通じない両親とミナサンを連れて、山荘入りする。
脳がもはやてきぱきと機能しない二人を見ていると、長寿はめでたいなどという幻想はもはや捨てるべきだと思う。
後期高齢者などと呼ばれ、社会でも完全に邪魔者扱い。
戦後の日本を背負い、雑草のようにたくましく働いてきた両親の年代は、精神的にも身体的にも打たれ強く、ちょっとのことでは病気にならないので、結果、脳の方が先に萎縮して周囲の人間を戸惑わせる。

山荘ではフリッツ・ハンセンの揺り椅子が静かに我々を迎え入れてくれる。
何年も前からそこにあったように、ぴったりと部屋の佇まいに同化して。

山荘へ来る途中、国道から森の中へ入る道の角に、「SPA」の文字を見つける。

かねてから富裕層が骨休めに大挙して訪れるこの別荘地に、都会で大流行りの癒しチェーンが入ってこないことが不思議だった。
オフィキナリスの若いセラピストたちが山荘に遊びに来た時、冗談半分で「みんなでやろうか?」などと話し合ったものだ。

でもついに進出してきたな。
・・・で早速偵察に行ってみる。
モダンなマンションの一階、夕食を済ませ、両親たちが休んだのを見届けた後の夜10時。
Energyという120分のアロマ+フェイシャル。21,000円也。(お値段はさすが軽井沢です)

施術は若い子がぐいぐいと肩や背中の凝りを強く押してくるアロマテラピーとは名ばかりの、癒しチェーンにありがちなものだったし、ガウンの石油系のクリーニング洗剤のにおいも、時間を置きすぎてかぴかぴになり、却って肌に負担がかかりそうなフェイシャルパックも、何となく想像していた通りだった。
「何とかを取って参ります」と行って、何だかしょっちゅう施術者が出入りするのも気になったし、オイル・ブレンドもありきたりのゼラニウムとベルガモットで、終わってからも全く吸収されないべとべと感が残る品質のものだった。

それでも・・・
ノーメイク、サンダル履きで山荘から3分、就寝前にちょっと人の手にかかる贅沢気分。
親たちの世話で絶望ばかりが押し寄せてくる1日の最後に、身体を横たえる別の場所が有るという天からおりて来た蜘蛛の糸。

その糸にしがみついて施術を終え、山荘に戻る。
揺り椅子でひとり、普段は滅多に飲まない缶ビールを開ける。
深夜0時。

どんなところにも救いはあるし、たとえレベルが満たないものであっても状況によってはそれになりうる。
ビールが椅子の揺れで気持ちよく身体の中でシャッフルされるのを感じながら、長い時間そこはわたしだけの世界になる。

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山荘の揺り椅子。黒いのは妹島和世のドーナツ・スツール。

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揺り椅子と一緒にやってきた1940年代のスウェーデンの木馬。山荘の玄関ホールで静かに揺れている。残念ながら乗ることはできない。

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怖い・・・ひょうきんなクロはデジカメに大接近










広尾、アラフォー? [ブレンド・プロダクツ]

もちろん、私はアラフィフティーでございますが・・・・

放送作家の山田美保子さんによれば、アラフォーとは
「80年代に青春を過ごし、雇均法直後にバブル入社した、キャリアと結婚だけじゃイヤ」という世代のことを言うんだそうで、そのちょうど10年前、雇均法がなく、大卒女子はコネ入社するしか無かったアラ50としては、”キャリアと結婚”以上何を望むんじゃい!と大幅ツッコミを入れたくなるコトバではある。
同じ今週号の新潮で丸山タケシ氏も「あんたら、十分幸せだ!」とツッコミを代弁してくださっている。

私が子育てに必死なころ、「JJ」がブランドバッグを持ったお金持ちの女子大生ばかりを取り上げ、そんな彼女らは有名商社、航空会社にがんがん就職していき、今はアラフォーなんですね。
キャリアと結婚だけではダメで、有休目一杯の海外旅行以外に週末のプチ旅行、週2回のエステ、2日に一度のネイル、上質なワインに腕利きシェフのフレンチ・・・・
それって「幸せ」?

私が大学時代を過ごしたのは広尾にあるカソリック系の女子大だった。
当時は皇太子妃であった現在の美智子皇后の出身校で、雇均法がなく、卒業後は結婚、と決まっていた時代、一部の「良質な嫁」を欲しがるお家柄からは絶大な人気があった。(この前、TVで人気のある女子大というランキングをやっていたが選外だった、今は。)
実際、個々に卒業生がモデルのようにポーズをとったポートレートが全部掲載されるこの大学のYear Bookは、陰で何万円かの値段がついて取引されるといううわさであった。
(そういえば個人情報保護法なんてものもありませんでした。)

「シュウカツ」なんてコトバは夢にも出てこない大学生活、興味があるものはおしゃれ、ボーイフレンド、学校主催のダンスパーティ(もちろんクラシックのです)、そしてほんのちょっぴりの勉強。
おしゃれの目標になる人は、ファラ・フォーセット・メジャーズ、キャンディーズのランちゃん。
彼氏は慶応か早稲田、東大はダサイわ。
ダンスパーティが近づけば、今のようにパーティドレスなど当たり前のように売ってはいない時代、母親と必死にデザインを考えて輸入物の生地を選び、仕立て屋さんに走った。
そんな中でする勉強は、前にも書いた通り、「女の特権はメシの種にならない学問ができること」という父の言葉を鵜呑みにしてする程度なのでたかが知れていたし。
かくて一部から熱望される「小賢しくない、純潔な女性」が出来上がり、この大学の卒業式の父兄席は3つ、両親と在学中に決まったフィアンセの分。
インターネットも何も無く、そこだけのそんな世界しか知らず、でも「不幸」だと思ったことは一度も無かったような気がする。

考えてみればアロマテラピーという言葉も無く、海外旅行で免税になる香水が一番のお土産という時代だった。
前にも書いたが大学に入って始めて父に買ってもらったのはスズランの香りの「ディオリッシモ」だったが、世間ではニナ・リッチの「レール・デュ・タン」やディオール「ミス・ディオール」が全盛だったような気がする。
香水の種類も比べ物にならないほど多くのものが出回り、それよりも化学合成されていない香り、つまり植物から抽出されたままのEOすらこんなに自由に手に入る今、アラ50はそれだけで十分幸せだと思えるのだが。







ふじみ野、ジャルダン・デテ [ブレンド・プロダクツ]

一年中で一番好きな季節

ヒメシャラは若芽、道はゆるい右カーブ
犬たちはスキップ、リードはスイング

駅前ポストにエアメール、町並みはゼラニウム色
人待ち顔のロータリー、家路へ瞬くハザード

踏切の溝は4本、飛び越えるリズムは4ビート
サンダル履きの立ち話、ご機嫌斜めの角の番犬

きりりとアペリティフの白ワイン、デフューザーにジャルダン・デテ(夏の庭)
何も書いていない明日の予定欄、少し遅めの夕餉の支度

初夏の夕暮れ、大好きな時間

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道端に「ゲーテのすみれ」。
ゲーテの詩とは知らずにモーツァルトが曲を付けた歌曲は有名。













みなとみらい、ドアは開いているか [ブレンド・プロダクツ]

目の前のベイ・ブリッジは見れば見るほど華奢で、あの長さをどうやって保っているのか不思議だ。

インターコンチネンタル#2201は、ベッドルームの目の前に大観覧車、先端のアールのついたコーナーはほぼ180度横浜港を見渡せる絶景ポイントである。
そのコーナーテーブルに、新しいMac book airを置いてブログを書く。

年に一度の産婦人科医の祭典(?)、今年の日産婦学会は横浜で開催だ。
あちこちの会場で様々なテーマに基づいた学会が催され、全国各地から産科医が集合するため、同窓会も多数執り行われる。
観光を兼ね、夫人を同伴されるドクターも少なくない。

近年は遠慮させていただいていた「同伴」だが、今年は長男夫婦も新潟から来るというので久しぶりに家族でご飯でも食べましょうということで、私も急に駆り出されることとなり(・・・・ということは私が手配をさせられるということなんである)、取り急ぎ午前中の施術を終えて投宿した次第である。
もちろん、バーキンにMacを入れて・・・である。

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外出したMac book airの向こうに、ベイブリッジ。

水回りオタクである。
国の内外を問わず、ホテルに投宿するとすぐにパウダールームを写真に収め、床の高低や勾配(これで床の濡れ方やオーバーフローが決まって来るからである)、ドアの開閉方向(これは濡れてほしくない床がびちょびちょになるか、もっと大切なのは中で倒れた場合の救出ができるかどうかが決まって来るからである)を見て、参考になりそうなアイディアを見つければ小さなスケールで計測をしスケッチもする。

私の旅のバイブル、「旅はゲストルーム」の著者は浦一也さん。
世界中のホテルを旅して、どんな高級ホテルに泊まろうともまず投宿するとご自身で床を這いずり回って部屋中をスケールで計測し、それを美しいスケッチと文章で綴った著書は、客室という限られた空間から担当した建築家の意匠を読み取ることで、ホテルに泊まるという当たり前の行為が数倍楽しくなることを教えてくれる。

彼によれば(彼もすばらしい建築家でホテルの意匠を多く担当している)、ホテルをデザインする建築家の知恵がもっとも凝縮されて詰まっているのが水回り、つまりパウダールームなのだという。
水という自然物を相手に意匠と実用のせめぎ合いが、わずかコンマ1ミリ単位で展開されている。

印象深かったのは、カンボジアのシェムリアップ、AMANSARAのパウダールームだ。
もっともバスタブは独立して部屋の真ん中にどんと置いてあったので、正確にはシャワールームというべきか。
何の飾りも無いミニマリズムに貫かれたパウダールームはドアが1枚もない作りだったが、巧みに配されたわずかな床の勾配と数ミリの段差で、シャワーの水は決して脱衣する場所には飛び散らず、流れ出ず、壁一面の大きなガラスを挟んで外のプールと一体となっていた。
東南アジアへ行くと必ず出る微熱に浮かされながら、何枚もパーツスケッチを書きなぐったものだ。

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AMANSARAの水周りスケッチ。拙い・・・


・・・で話はここ、インターコンチネンタルである。
ヨットの帆型のホテルの先端部分にバスタブを持ってき、スリーフィクスチャーの大きな開口からほぼ200度以上に海が見える配置がすばらしい。
アメニティはイギリスのElemis、残念ながら天然香料を使っているプロダクツではない。
外国のバスタブはやたら大きくて足が踏ん張れずつらい姿勢で入らなければならないことが多いが、ここは完成が20年ほど前だったこともあり(天井の汚れが目立って、もうそろそろ大幅なリニューアルが行われることを願う)、バスタブは日本人サイズで入りやすい。

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ちょっとデザインは古いが、抜群のロケーションを持つインターコンチネンタルのバ スルーム。

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インターコンチネンタルのアメニティ、Elemis。トレイがトレードマークの舟形。

シャワーブースからの水をいかに外へ出さないようにするかは、水回りのデザインがどんどん部屋のインテリアと変わらないようになった昨今では、いちばん気を使うことだ。
デザインと実用のせめぎ合いは、ほとんどがここに集約されると言っても過言ではないだろう。
ここは昔ながらのサッシが使ってあり、残念ながら「あたりまえ」であった。

ただドアはお約束どおりきちんと外側に開く。
一見どうでもよさそうなこんなオタクネタは、意外なところで効力を発揮したりする。

今回のクリニックのシャワールームの改装ではデザインにもこだわって、グリーンのガラスタイルがまるで深海にいるような美しいシャワーブース二つが出来上がることになったのだが、なんとフロストガラスのドアが内開きだったのである。
さっそく設計デザインにクレームを入れる。

シャワーブースのような狭い空間においては、中で人が倒れた場合、内側に開くドアはその人体が障害になって開かなくなる。もし心筋梗塞のような一刻を争うような事態であれば、ドアを工具で外したりする余計な時間は命取りだ。
・・・でブースのドアは外開きというのが、ホテルでは常識である。
入院患者さんが使うクリニックではなおさらのこと。
設計はやり直しだ。

換気も然り。
ホテルで一般的な24時間換気をここでも利用するというプランだったのに、シャワーブースは壁で天井まで閉じられてしまい、排気口と吸気口が内外に分かれてしまっている。
これでは換気が流れず、ブース内は湯気と結露でびっしょり濡れてしまう。
こちらは出来上がってから気づいたので、無粋なバス乾燥機の追加工事か、ホテルのようにブースの壁の上部を途中で切るか迷って、工事の大変さから前者を選択せざるを得ないこととなる。回避できたはずの手間と費用が余計にかかる。
オタクの面目丸つぶれである。

夫が学会に出かけている間、観光にも買い物にも行かず、スケールとデジカメを持ってパウダールームを這い回っているのは、単純に自分の好奇心を満たすためではあるが、こんなふうに実用に応用できることもある。

外は雨。
大観覧車もそぼ降る雨に止まったまま。
長男たちとのランチまで、心行くまで誰にも邪魔されず水回りオタクになれる。
こんな時間が無性に楽しい。





千鳥が淵、惜別のとき [ブレンド・プロダクツ]

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花の宴のためのセッティング


花散らしの雨が東京に降った日、懐かしい面々が千鳥が淵に集った。
そう、一人を除いて・・・・

次男はまぐれで入った駒場にある国立大附属校で、中・高の6年間を過ごした。
男子だけの自由な校風で、とても優秀な生徒が多い学校だったので、次男はたちまち落ちこぼれたが、バスケット部に所属し良き仲間を得た。

中学時代はこの仲間達でいろいろワルイこともやらかし、親まで反省文を書かされたり、学校に謝りに行かされたりしたが、この学校に息子を通わせるお母さん達は皆、息子達を信じ、誇らしく思っているのがすてきだった。
そんな親と教師たちのの連携プレーも見事で、そんな万全の環境の中で、少年達はいきがって社会へはみ出しては叱られ、叱られてはまたはみ出して、校則の無い自由な学校生活を謳歌している、そんな学校だった。

次男も相当はみ出したが、ケイタ君はその上を行っていた。
お母さんが心を込めて作ったお弁当を持って出掛け、雀荘で食べて何食わぬ顔で帰ってくるなんて、お茶の子だった。
お母さんは学校から「風邪の具合どうですか」と言われて、初めてケイタ君が登校していないのに気付き、放校しないでくれるよう先生に頼むしかなかったと言っていた。
「まったく・・・」とケイタ君への信頼と愛情をにじませながら口を尖らせて、お母さんは嘆いてみせた。

私が自律神経をやられて外出ができなくなった時、同じバスケ部のお母さん方に声をかけて埼玉まで会いに来てくれたのも、ケイタ君のお母さんだった。
「自分も具合が悪くて外に出られなかった時、それがいちばんうれしかったから。」
と、あまり身体が丈夫でない彼女は言ってくれた。

その彼女が末期の胃ガンだと聞いたのは、次男たちがその学校を卒業して大学をも卒業する子が出始めた頃だった。
一昨年の秋、埼玉に来てくれたのとちょうど同じメンバーで、寛解状態にあった彼女を囲み、自由が丘のレストランで食事をした。

「その病院のナースったらね、余命はどれくらいか先生に聞いたの?なんてずけずけ言うのよ」
相変わらずの明るいさばさばした口調だったが、その表情を作るまでにケイタ君始め、ご家族と彼女がどれだけ辛い話し合いを重ねたのだろうと思うと、胸がつぶれる思いだった。

一軒家のそのレストランの庭には大きな桜の木が紅葉しており、その枝を見上げながら彼女はふっと優しい顔になった。
「ケイタがね、病院には自分で運転して付き添ってくれるの。あのケイタが、よ・・・」

喉元まで出かかった
「来年の春は、千鳥が淵で満開の桜を見ましょう・・・」
と言う言葉を、私はぐっと飲み込んだ。

年が明け、桜の季節が近づいて、皆と彼女に千鳥が淵の桜を見てもらおうと計画した。
しかし、それはとうとうかなわず、その夏をようやく越えた初秋に彼女は逝った。
知人の結婚式と告別式が重なり、心の中で彼女にお別れを言って、留学中の次男と連名の弔電を打った。
彼女の人柄を反映して、たくさんの友人知人が彼女を送ったという。

雨が上がり、夜桜が壮大なパノラマスケールで窓に浮かび上がる頃、話はケイタ君のお母さんの話になる。
この会ではみんな息子自慢、息子への思いを存分に話していい、という暗黙の了解がある。
他で話したら嫌味に聞こえるか、子離れしない母親と疎まれるのがせいぜいな話もここではおおっぴらにできる。
今ではいい年の息子達にはずいぶんと迷惑な話だろう。
でも誰よりもケイタ君のやんちゃな話を楽しそうに、いとおしそうにするのが彼女だったね、と。

夜半から吹き始めた北風に大きくゆすられて、桜は耐えかねたようについに花びらを舞わせ始める。
花吹雪のなかで客を送り、部屋へ戻る。

「さくら、さくら、今咲き誇る。刹那に散りゆく運命と知って・・・・・・
泣くな、友よ、惜別のとき・・・」

今夜のキャンドル、PENHALIGON'SのMalabahは、スパイシーなウッドノートを残して燃え尽きようとしている。

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千鳥が淵の窓から見た夜桜。壮大な舞台を見るよう。




千鳥が淵、たえて桜のなかりせば [ブレンド・プロダクツ]

「世の中にたえて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし」
業平さん、そのとおお~り!

またこの季節になった。
例年になく寒い冬と言われ、桜の開花は遅い、と言われていたのに、あっと言う間に満開だって?

千鳥が淵サロンは、桜の名所、千鳥が淵のお堀端にあった元フェアーモント・ホテルの跡地にある。
例年この季節は千代田区が千鳥が淵のお濠と桜をライトアップし、水と満開の桜の競演がまるで大きな能舞台のように繰り広げられる。

サロンとなっている部屋は3階で、ちょうど目の前の桜の枝と高さにパノラマビューの開口があり、居ながらにしてお花見ができるロケーションである。(ちょっと宣伝)
いつもは大事なお客様を何組かお呼びしてお花見の宴を催すのだが、難しいのはその日程である。

去年は暖冬で開花が早い、と言われていたので、3月末に設定しておおはずれ。
一番大事な大学教授夫妻を招いた宴は、桜無しの花見になってしまった。

加えて今年はサロンとしてのお花見プランも設定した。
どうやらこれは一番いい時期にあったったようだ。

今日はその準備のため、お掃除ヘルパーさんを入れ、準備に赴く。
千鳥が淵の桜は既に八、九分咲きだ。
眼下の遊歩道は溢れんばかりの見物客。
マンション住民でもセキュリティが厳しくチェックされ、通行証がなければ唯一の進入経路の鍋割坂が通れない。

夜桜は部屋の明かりを落として外のライトアップを際立たせる演出をする。
そのため、アロマキャンドルが必須のアイテムとなる。
今年はPENHALIGON'SのBlue bellを選んだ。
桜の花の匂いは幽かで単独のプロダクツは無いのだけれど、せめて優しく甘い春の到来を思わせるものを選びたい。
このキャンドルはトップノートがガルバナム、次にシクラメン、ミュゲ、ジャスミンと春の花が続き、ラストにはクローブとシナモンというスパイス系に移っていく逸品だ。

今年もまた、桜は大きな窓中を薄紅に染めている。
ヘルパーさんたちが来る間、しばし一人で森山直太郎「桜」を聞きながら窓を眺める。
♪さくら、さくら、今咲き誇る
♪刹那に散りゆく運命(さだめ)と知って・・・
今年はこのフレーズに特別な思いがある。

その話はすぐこの後書くことになろう。
さあ、掃除だ!

千鳥が淵サロン、お花見プラン。
まだ若干空きがございます。(かなり宣伝)

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千鳥が淵サロンの窓から。今週末が満開です。

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同じく窓から。お濠に浮かぶボートが楽しげ。



水戸、梅春香 [ブレンド・プロダクツ]

夜半11時過ぎ、携帯が鳴る。
この時間なら普通はみんなメールだが?
いぶかりながら出る。

「今ですね。弘道館の中を歩いているんですけど、梅が香って。それで何となくあなたに電話しようかな、なんて思って・・・・」

中学の同級生Hクンだ。
ほろ酔い加減が伝わってくる。
飲んで帰る途中なんだろう。

偕楽園だけでなく、水戸は梅にゆかりの深い町だ。
この季節、そこここに梅の香りが漂う。

梅は不思議だ。
夜、その姿が見えない時にひっそりと香る。
主張せず、しかしきりりとした美しい匂いだ。
武士の妻のようだ。

運動会で二人三脚を一緒に走った時からだっただろうか。
押し付けがましくなく、真面目な誠意に溢れたHクンの気持ちに気付いた。

高校、大学に進んでからも彼の気持ちは、ひっそりと香っていた。
まるで梅の香りのように。
でも、それに気付かない振りをして、私は結婚した。
梅の香りが、止んだ。

10年ほど前からその中学の同窓会が行われるようになり、Hクンと再会した。
3人の子供のお父さんになって、地元で暮らしていた。
控えめで、真面目で、照れくさそうに笑うところは、やっぱりHクンだった。

「すいません。こんな時間に。ボク、ちょっと酔っ払ってます。」
言わなくたって判るよ。
「それじゃ、おやすみなさい。」
ほーら、やっぱりHクンだ。
羽目を外してでしゃばることはない。
なんなんだよ?

あんなに美しい香りなのに、梅の香水、梅のEOも聞いたことがない。
姿を見せずにひっそりと香るだけで、その香りは採取されることがない。
と思っていたら、水戸に「梅春香」という香水があると知る。

今度実家に帰るときに手に入れようと思うが、梅の香りは手の届かないところにあってほしいとも思う。


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偕楽園

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水戸のおみやげ、チョコ納豆。納豆用の大豆にチョコがコーティングしてあり、おいしいです!
藁苞に入っているのがいいね!!



渋谷、エイジングな一日 [ブレンド・プロダクツ]

東京に久しぶりの大雨が降った日、デパートの外商に誘われていったお食事付き内覧会というやつで、担当から頼んでおいたものを受け取る。
HACCIというブランドの花粉カプセルとヒアルロン酸入りはちみつである。
HACCIはその名が示すとおり、はちみつを食用のみならず、美容面から捕らえたプロダクツを展開しているブランドである。

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 HACCIの花粉カプセルとヒアルロン酸入り蜂蜜パック
 蜂蜜はガラス瓶に入っており、可愛いニットのカバーが付いている。



50を過ぎて、それまで興味の無かったアンチエイジングが大きな課題か、と思い始めた頃、しかし年齢の時計をむやみやたらに巻き戻すのではなく、自然に美しく年をとる工夫をしようという考えに行き着く。
注射だ、整形だ、とお金をかければ一時の時間の逆行は叶う時代である。
でもやっぱりそれって反則っぽい。
10万以上もするブランドのアンチエイジングクリームなるものも飛ぶように売れていると聞けば、女性にとって若くありたいと思う気持ちが如何に切実か、またその心理に付け込んだいろんな狐狸が横行し、次々にいろんなワザが開発、紹介され、きりがないのも仕方が無い。

そんな中で如何に化学合成された商品や外科的な処置を行わずに、自然なものだけで美しい「年齢のしわ」を己の顔に作れるかにチャレンジするのが、アロマセラピストの使命ってもんだろ、と思う。あのしわ対策プロジェクト以来、化粧品はすべて廃棄し、スキンケアはEOとフリクションだけにしている私である。

そんな中、課題のしわ対策プロジェクトで、実行できなかったものがふたつ。
花粉を毎日食べることと、はちみつのフェイシャルパックだ。

花粉を食べる。
花粉症の方が聞いたら卒倒しそうな字面だが、さまざまな成分を含有する花粉を食することは、ヨーロッパではごく一般的なことらしい。
説明書にも「ミツバチが一生懸命集めてきたもので、スギ花粉のように有害なものでは一切ありません」とある。
ミツバチが懸命に小さな身体で何往復もして集めてきたものを取り上げることには良心が痛むが、ハチがそれほど夢中で集めるものだ、成分の有効性は推して知るべし、だ。

はちみつパックは食用のはちみつで試したが、なかなか大変なことになったので1回で打ち切りとなった。
今回のはちみつパックは、ヒアルロン酸入りというところは化学処理のにおいがするが、基本的にははちみつの有効成分を主体としたものなのだろう。
少し使い続けてみようと思う。

折りしも50代の女性をターゲットにした「HERS」が創刊となり、「いつまで”25歳”読んでるの?」と息子達に揶揄される私は早速買ってみる。

冒頭に
「これからの10年、どうしますか?」という投げかけがあり、
・あのとき、一番幸せだったと言えるのはいつか
・もう卒業したと思うことは何か
と過去に言及する質問の後、
・これだけは「ちょっとしたもの」と胸をはれることは何か
・やらずに過ごしてきたものは何か
と、過去を踏まえた上での将来への質問が続く。
雑誌そのものは500万前後のジュエリーが続けざまに出て来たたりして、いったいどんな50代をターゲットにしたのかといぶかるしかないがこれからの10年をどうするか、そう言えば考えたことがなかった。

アンチエイジングというジャンルは若かった過去を礼賛し、年老いていく事を否定する考えから来たものだ。
終わったことを取り戻そうとすることはしんどいけれど、年齢を受け入れて自分のアーカイブの上にこれからの日々を構築することは楽しい。
10年という長いスパンはなかなか難しいけれど、例えば半年先の旅行の計画に焦点を当てて体力作りや現地の情報収集、持って行く洋服の準備などをすることは、それだけで自分が小さなステップをまた一段上がる気がする。

そんな繰り返しで年をとっていきたいと思う。





軽井沢、ひとり鍋焼き [ブレンド・プロダクツ]

完全に肩透かしを喰らわされた。

重装備だ。
スタッドレスを調達し、それでも心配でチェーンも積み、薪ストーブに点火するマッチが無かったらとチャッカマンも入れ、初の冬季軽井沢山荘へ。
もし雪にハマって車を捨てなければならなくなったら一人で3匹を連れ帰るのは無理と考え、置いていかれてボー然とする2匹を泣く泣く残して一番年上のべべのみを車に乗せる。

関越は全く問題なく、かえってスタッドレスをはいているせいで横風が吹くと少ない接着面が怖い。
でも上信越に入ったら覚悟だな、と考えていたら心配で吐き気すらしてきたが、上信越も完璧OK。
でも最後の碓氷峠が・・・と固くなっていたら、それもあっさりクリア。
軽井沢の街中も両側に除雪された雪が多少残っている程度。
置いてきた2匹の悲しげな眼ばかりが脳裏に浮かんで、連れてきてやればよかったと心の中で謝りどおし。

でも、さすがに森の中の別荘地に入ると雪が深く、ようやくスタッドレスの価値が発揮される。
山荘へ着き、すぐに家中の暖房をONにし、薪ストーブに点火する。
温まるまではべべを湯たんぽ代わりに抱いているしかない。

夕闇が迫る頃、持ってきたアロマキャンドル数個すべてに灯を点す。
アヴェダのレインフォレスト、カーサのアトラスシダー。森の匂いを集めて。
今までどうして山荘にアロマキャンドルを点すことに気がつかなかったのか。
雪の山荘にこんなに似合うテイストが他にあろうか。

外はとっぷり暮れたが、雪明りで辺りが浮き上がって見える。
持ってきた具とうどんを煮込んで一人鍋焼き。
鶏肉はラッキー・べべもお相伴だ。

ちょっぴりスパイシーなレインフォレストの香りが満ちる薪ストーブ前のソファは特等席。
すでにべべが占領しているが、彼のお尻をちょっとずらして割り込み、「私がフェルメール」の扉を開ける。極上の時間が流れ始める。

明日は長男夫婦が合流する。

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▲雪の山荘にはアロマキャンドルと眠そうな犬が良く似合う。


たんご坂、ネリーさんの羊 [ブレンド・プロダクツ]

オフィキナリスの主要ブランド、ヴィ・アローム社の創始者、自然療法家のネリー・グロジャン博士が来日した。
プロヴァンスの修道院を買い取って有機栽培の芳香植物を栽培、良質なエッセンシャルオイルの製造とアロマテラピーの普及に尽くしてきた方で、大変な親日家、日本でもファンをがっちりとつかんでいる。

今回は日本での通訳を務めるわがバーグ校長の計らいで、LSAで無料講演を行うという。おりしも半年に渡っての我々のヴィ・アローム・インストラクターコースが終わったところで、修了書がネリー自身の手から渡されるのだ。

講演前の旅行の説明をスタッフがしている時から、ドアの隙間からちょこちょこ顔を出す。何とも愛嬌がある。
いざ登場。両手に持ったルームスプレーを噴霧させながら。(かっこいい!)
エキゾチック・ヴァ-ベインか、フレッシュトニックか。いずれにしてもこれから講義を聴くのだから「目を覚ませよ」という覚醒系だろう。レモン様の香りが狭い教室中に満ちる。

「トウキョウでミナサンにお会いできてコウエイです。」
知っている日本語はこれだけ、と言ってにっこりと笑う。
魅力的な方だ。
事前に乱れ飛んでいたネリー像はもっともっととんがった過激な感じだったのだが、鋭い言葉の羅列の奥のブルーの瞳にたたえられた優しい光は、聴いているものをみなネリーファンにする。
バーグ校長が通訳している間も決してじっとしてはいず、我々に向かってスプレーを吹いたり、椅子の上に胡坐をかいてみたり本当にじっとしていない駄々っ子のようだ。
蒼い眼の奥にいたずらっぽさと強さが見え隠れし、しっかりと自分の信念の上に立っているという姿勢が潔い。
自称55歳、多分それより少し上(?)であろうが、無駄のない体つきとポジティブな考えは、自著のとおり。体は人を表す、とはこのことだ。

ネリーの信念の塊、といってよいのがプロダクツの中の12のフリクションだ。
フリクションは用途に応じた原液のEOのブレンドであるが、それを直接肌に「フリクション(擦り込む)」するとしている。
一般的に(特にIFA規格では)ラヴェンダー以外のEO原液を肌に塗布してはならないというのが常識なのに、なぜ原液同士のフリクションは大丈夫なのか、というところに質問が集中する。
それに対するネリーの答えはすこぶる明解。
「私がブレンドしたんだから間違いはない。」

フランスではEOをブレンドしてクライアントに手渡すことは、医師や薬剤師のような資格を持った者にしか許されていないという。
もちろん日本でも厳密言えば、セラピストが自分でブレンドしたものをクライアントが家で使用するのに手渡すことは薬事法に引っかかるらしいが。
有資格者であり、オイルどおしの相殺効果を十分に考えた自己の長年の研究の成果がこれ(12のフリクション)なのだ、というネリーの言葉に、彼女の生きてきた道の真っ直ぐさが見てとれる。

最後にネリーから修了書を手渡される。
一人一人写真撮影にも応じてくださり、自著にサインもしてくださる。

6月末に修了生でネリーのプロヴァンスの農場を訪ねるプランが本格化した。
「6月にまた会いましょう!」とネリーは去っていった。

父の病状や、仕事の関係でかなりの努力をしなければ私は参加にこぎつけられないけれど、「行く」という気持ちさえ持てば環境は整ってくるはず。
そう信じて眠ったその夜、南プロヴァンスの農場で放し飼いになってネリーを追い求めている私達の夢を見た。
羊の格好の私達だった。(これが言いたかった!)

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新生児室、大賑わい [ブレンド・プロダクツ]

「うわあ!」

新生児室を夕方覗いて、だーっと並んだベビーコットの数にびっくり。
昨日退勤する時は4人しかいなかったのに一気に11人だ。
18床しかないクリニックなのに、1日で7人のママがお産をしたのだ。
べビたちは「ふにゃあ~」(決しておぎゃーじゃない)と声を発しながらおっとり首をかしげたり手を上げたりして、始めたばかりの肺呼吸にゆっくりゆっくり慣れようとしているかのようだ。
羊水から脱出し、初めて肺に取り込んだ空気は、どんな味でどんな匂いなのだろう。(そういえば「35歳になると羊水が腐る」なんて言った芸能人がいたそうですね、まったく・・・・)
このねずみ年のべビちゃんたちは、新生児室の匂いをいつまで覚えているのだろう。

2ヶ月ほど前の新聞に「猫だって怖くない」という見出しで、特定の嗅覚回路を切断されたマウスは猫を怖がらなくなる、という東大理学部の研究成果が載った。
これまで匂いを嗅いだ時にどのような反応をするかは後天的に決まるものだと考えられていた。
だが、実際には嗅球という匂いをキャッチして行動を起こす脳の領域の下半分の働きを止めると、猫に一度も襲われたことのない赤ちゃんマウスでも忌避行動を取り、逆に上半分の働きを止めると痛み刺激を与えて学習させないと忌避行動を起こさなかったという。

嗅覚は五感の中で一番解明が遅れている器官だ。
我々アロマセラピストは通常の成人を相手にその嗅覚を呼び起こしてセラピーをするのだが、このように生まれたばかりの赤ちゃんや、反対に老化したり、父のように認知症だったりする場合は、匂いや香りはどこまでその人を導くのだろう。

クリニックでは昼間は母児同室を、夜間はママがゆっくり休めるように新生児室でのお預かりが基本だ。
生まれたばかりのべビちゃんにはママの匂いをいっぱい嗅いで覚えてもらうため、病室での香りを拡散するデフューザーの使用は夕方から夜間に掛けてをお勧めしている。

白い病室では香りは楽しい彩りになる。
採用しているヴィ・アローム社では素敵なブレンドのデフューザー専用オイルが用意されている。
出産時の高揚が続いて眠れないママにはラヴェンダー系をお勧めすると、「本当に良く眠れました」とだいたいの方に喜んでいただける。
上のお子様が遊びに来たり、だんな様もいらっしゃる場合は、「オランジェリー」など身近な香りの柑橘系をお勧めする。特に冬場は暖かい、楽しげな香りの「トロピカル」が大人気だ。
「家でも是非この香りを」とおっしゃって、買って退院される方も少なくない。

今まで全く香りを楽しむ習慣がなかった方が、ご出産という大きな節目にその楽しさや効用に気付いてくださり、これからのご自分とご家族の人生の伴走者としてアロマを取り入れてくださるのを見るのは、セラピスト冥利に尽きる。

「香りは記憶をつかさどる」という。
ここで生まれたべビちゃんが、いつかこの日にちょっぴり嗅いだ「オランジェリー」や「トロピカル」を思い出すことはあるのだろうか。


日本橋、Vへのオマージュ [ブレンド・プロダクツ]

クリニックの仕事が終わったのが2時半。
家へ駆け戻って着替え、3時かっきりに車で飛び出す。
土曜の昼下がり、ガラガラの首都高を突っ走って一旦車を千鳥が淵に入れ、内堀通りに走り出てタクシーを捕まえる。着いたのはマンダリン・オリエンタル東京。

案内されたのはこのホテルでも最高級のプレジデンシャル・スィート。
一歩足を踏み入れると暮れていく東京のパノラマをバックに、数人の男女がソファに座り、シャンパンを飲んで繊細なつくりのカナペを手に談笑している。
心の中でしまった、と思う。
仕事の余韻を引きずっている気配をありありと残して、東京よりは確実に5℃体感温度が低い埼玉から出てきたのがバレバレの厚いタイツにブーツという出で立ちである。
お尻がむずむずするようなすわり心地ではあるが、ええい、飲んでまえ!とシャンパンをいただく。

V。
このデザイナーの大変繊細で隅々まで立体的な工夫が凝らされている洋服に魅せられて、10年来、私の生活の中の大事なシーンはすべてここの洋服で彩られてきた。
先日の長男の結婚式で着たソワレも然り。

シャネル、ディオール、サンローランとパリ・コレの重鎮達が相次いで後進にメゾンを譲り引退していく中、このVだけは今もって自分でデザインを続け、ため息の出るような美しい服を世に送り出してきたのだが、御年70ン歳、これが最後のコレクションとなった。
今日はその最後のコレクションの日本でのショーと受注の会なのである。

着物は折り紙、洋服はオブジェだ。
布を衣服に仕立てる時、着物は平面を基礎として縫い合わせ、布の色や柄、素材や合わせで粋と美を競う。
洋服は裁断から立体にに組み立てるまでがその作り手の技量で、どちらかというと建築に近いように思う。
立体としての身体と平面の布への考えという意味では、過去に三宅一生の「一枚の布」をパリコレの金字塔のように思い起こす。

日本人のなだらかな体つきには着物は実に合理的な衣装だと思うし、渋い紬を着こなして街を歩いてみたいとは思う。
しかし私は、洋服の立体感に魅せられる。
着物は何代にも渡って受け継がれるけれど、洋服は下手をしたら1シーズンで終わりだから、お金を出す価値が無い、という友人もいる。
しかし、カルダン、シャネル、ディオール、デ・ラ・レンタなどの往年のオートクチュールなどは、もうその前に何時間でも座っていたいと思わせるような立体感と布のマジック、その縫い目に織り込まれた女性であるが故の夢に圧倒されるものだ。
そんな歴史に残るようなものはもちろん買えないし、手に入るものではないが、春夏、秋冬の年2回のVのコレクションを見ることは、私にとって一時日常を忘れる至福の時間なのだ。
それもこれで終わりだと思うと(もちろんメゾンは続いていくが)寂しい。

ひととおりショーを見て、一番Vらしい1点を選び、注文を入れる。
ここで入れておかないと日本に入ってこないものもあるからだ。

エレベーターの前で渡されたお土産はLOHAS FRAGRANCEのマンダリンとラヴェンダー。日本の大麦麹を蒸留した天然アルコール使用の我が国のプロダクツ・メーカーだ。

帰りのタクシーの中でその香りを堪能しながらショーを思い起こす。
Vへのオマージュを捧げる。








自宅、とれるか?しわ、やせるか?だんな [ブレンド・プロダクツ]

夢を劈く「がーっ」という音で飛び起きた。
時計は早朝5時少し前。
ぼんやりした頭で今日が「プロジェクト」の第一日目であることを思い出す。
音は夫がフルーツピュレを作るミキサーのものだと理解する。

通っているヴィ・アローム インストラクターコースも終盤に入り、3週間以上、ネリー・グロジャン博士のプログラムを己の身体に使い、レポートを作成するという課題が課せられた。
デトックスから美容、禁煙まで、EOやハイドロソルを最大限に活用して「10の大原則」を基にネリーさんが組み立てたさまざまなプログラムの中から、私しかできない(=歳をとった者にしかできない)ものをやろう!と決めていたので、「抗しわ対策プログラム」を実践することにする。
年末年始食べ放題・飲み放題だった夫がデトックスをしたいと言い出したので、ついでにレポートが2つ書ければ、と安易に考えて、彼には「デトックス Beaucoup(ボクゥ=たくさん)プログラム」を提案する。

二人共通のレシピとして
①意識的な呼吸→毎朝晩、腹式の深呼吸を3分間行う。
②毎朝フルーツピュレのみを飲む(食べる?)。
③ローズマリーのハイドロソル入りのミネラルウォーターを毎日1.5ℓ飲む。
とし、あとはそれぞれのプログラムにしたがってEOやフリクションを取り入れることになる。

その第一日目として、昨日のうちに用意しておいたフルーツを、夫がゴルフに行く前にミキサーに突っ込んだのだ。でも5時前ですよ・・・・とほほ・・・

少しベッドでまどろんでから起き出すと、キッチン中にバナナの皮やイチゴの蔕が散乱していて、ミキサーには薄紅色のどろりとした液体が残っており、ローズマリーのハイドロソルを入れたミネラルウォーターのボトルも空になっていたので、がんばって実践していったのだなあとまずはほくそえむ。

今度は自分だ。
バナナ、キウイ、パパイヤ、イチゴをミキサーにかけて作ったピュレを飲んで、次は熱いシャワーを浴びる。
その後活気の無い顔にレシピに従ってセージのハイドロソルをパッティングする。
これはキツい。まるでオリーブの瓶詰めの液のような匂いがする。
つぎに107フリクション(アンチ・エイジングのブレンド:ローズウッド、ラヴァンジン、ゼラニウム、シダー、ローズ、サンダルウッド、ヴァーべナ)をつけて飛び上がる。顔中ぴりぴり、ぴりぴり刺激が走る。
思わず水で洗い流そうとしたが、以前これを顔につけてやはりぴりぴりしたという友人の話を思い出して、やっとのことで思いとどまる。
そのあとABOフェイス(抗しわ用ブレンド:ウィートジャーム油、セントジョンズワート油、セサミ油、ゼラニウム、ラヴェンダー、ローズウッド、ローズ)をつけ、やっと落ち着く。こちらはとても穏やかなオイルだ。

ピュレの効果か、シャワーの前後で500mlのローズマリー・ハイドロソル入り水を飲んだせいか、やたらとトイレに行きたい。

こうして「プロジェクト」は発進した。
今後折りに触れてレポートします。


赤坂、ロタンシェル [ブレンド・プロダクツ]

午前中クリニックの両親学級でアロマテラピーの講義をした後、午後、LSA(ロンドン・スクール・オブ・アロマテラピー)での「ヴィ・アローム インストラクターコース」の講義を今度は自分が受講するために東上線に飛び乗る。
英国式アロマテラピーをほぼ2年かけて勉強、IFA取得後、今度はフランス式のアロマテラピーを学ぶため、昨年秋からまたLSAに通っている。

英国式とフランス式の大きな違いは、EOを内用するかどうかである。
IFAの規格は「安全」が最優先となっており、これは日本におけるアロマテラピーの指針がまとまっていない現状の中で、医療機関の患者を対象にセラピーを行う我々にとっては、大変重要な「しばり」であることには間違いが無い。
フランス式、特にこのネリー・グロジャン博士の考え方はよりアグレッシヴで、例えばプロダクツの中の「フリクション」は原液のブレンドであるにもかかわらず、内服もし、皮膚にも希釈せずに直接塗布することを前提としている。
この方法はクリニックで勧めるのにはよほどの理解を得られた相手でないと難しく、医師の見解も聞かねばならないと思うが、自分で試すにはより深くアロマテラピーの森に分け入っていけるような好奇と期待とスリルが味わえてかなり楽しい。
身体の変調だけでなく、デトックス、痩身、美容までEOで網羅しようというのだから、それはそれでかなり踏み込んだ方法が必要になるのである。
内用を想定しているので、溶剤抽出法やCO2を使う減圧法で得られるEOは使用しない。

赤坂にあるLSA日本校の校長はアメリカの男性と結婚された素敵な日本女性である。
雑誌「STORY」にその生き方や生活が紹介された美しく前向きな姿勢は、生徒全員の憧れの的である。
(でもご子息のお話をされる時は、普通のお母さんの顔になるのがほほえましい)
その先生がこれまでのアロマテラピスト人生の中でずっと暖め続けてきたというオイルが製品化され、我々生徒にも分けていただけることになった。

なにしろ堪能な英語力で世界中の有名なアロマセラピストの通訳や翻訳を通して、日本では絶対手に入らないEOの生産者にルートを切り開いてきた方である。
単品のEOの品質と希少さは折り紙付き、12種のかなりコアなラインナップで、もう見本を嗅いだだけでどれもこれも欲しくなる。
チャクラを基本にしたオリジナルブレンドのほうは、もうさすが、と感心するばかりで、ネリーさんのフリクションと同じ原液のブレンドなのに、繊細な日本人の感覚ではこのように仕上がるのかとため息が出るようにたおやかな香りばかりだ。

ご自分が大切に使うために開発したとおっしゃり、市場に広く流通させるおつもりはないようだが、クラシックなラベルデザインも美しいEOを、頼み込んで5個譲っていただく。フランキンセンス、ベイ・ローレル、ワイルド・ラヴェンダー、ユズ、ブラックスプルース。
「L’Authentiel(ロタンシェル)」。
アロマセラピストの行き着くところは、きっとこのように自分の価値観を最大限に満足させられるEOを独自に作り上げることなのだと思う。


新宿、リリー・オブ・ザ・バレー [ブレンド・プロダクツ]

マンションのお掃除をしてもらっている合間に慌てて飛び込んだそのデパートのとあるブースの前で、私の足は完全に止まる。
自分が何を買いに此処へ来たのかなどすっかり記憶の彼方へ飛んでいる。

そこには季節を反映してか、あるいは昨今のアロマブームに乗った展開なのか、世界中の有名なアロマキャンドル・プロダクツが勢ぞろい。それもメンズのエリアで。
辞任した安倍元総理が大のアロマ好きでアロマキャンドルをバスルームに点していたというエピソードが頭をかすめる。

IFAの認定をとる勉強を通して、私のアロマ人生のベクトルは常にUKに向いている。
UKへの旅は、いつもフレグランスと骨董を追う。
日本及び東南アジアでのアロマテラピーはやはり根が浮遊している水草のようだ。
形だけのアロマテラピー、名前だけのアロマオイル(このネーミングは正しいのか?)なるものに、いつも落胆させられる。
その点で西洋医学が生まれる以前から薬効効果に注目して生活に根ざしたアロマテラピーが展開されていたUKやフランスの考え方の深さ、エッセンシャルオイル(以下EO)の質や種類のレベルの高さ、多さには圧倒されるものがある。
EOそのものは希釈したり、禁忌を理解するのに一定の知識が必要なので、なかなか取り付きにくいのが現状だが、その質の高いEOを利用して作ったプロダクツは一般の利用者にも身近なものだ。
フレグランス・プロダクツはその製造過程で多少なりとも化学合成を経るため、EOそのものの薬効は期待できないが、嗅覚による効果は絶大なものがものがある。
ロンドンにはそのプロダクツ・メーカーが数多くあり、その中でも「英国王室御用達」ともなれば、風格と品質を兼ね備えた素晴らしいものに出会える。

そのデパートのコーナーには、今まで本国でしか出会えなかった英国王室御用達の「PENHALIGON'S」や「CREED」、私の愛してやまないThe DORCHESTER(この話はいずれ書こう!)のアメニティ「FLORIS」、新しいところでは100%オーガニック素材をうたったホームプロダクトを提供する「NATURAL MAGIC」などのクラシック・キャンドルがほぼ全種類揃い、私はまるで宝の山をかき分けるように次から次へと香りを試して歩き回る。
どれもこれも吟味されたブレンドのセンスが感じられ、それを点した時の香りを想像するだけでうっとりする。
ようやく「PENHALIGON'S」のプロダクツから「Samarkand」(ジャスミン・リリー・サンダルウッド・ヴァニラ)、「Lavandula」(ラヴェンダー)、そして「Lily of the valley」(スズラン・ベルガモット・レモン・ゼラニウム他)の3つを選び出す。
パッケージもそれぞれに重厚で美しい。

「Lily of the valley」は「谷間の百合」とでも訳すのかと思って帰宅して辞書を引くと「スズラン」であることが判る。自分の無知を恥じ、スズランの香りに思いを馳せる。

男女雇用機会均等法など無かった時代。
「女の特権はメシの種にならない学問ができることだ。」と今では大失言と取られかねない父の言葉を真に受けて大学に入った私をデパートへ連れて行き、父が買ってくれた初めての香水はスズランの香りの「ディオリッシモ」だった。
身体に香りをまとうことをそこで初めて厳格な父に許された日だった。

意味を知らなかった私の元へやってきた「Lily of the valley」。
バスルームで芳香を溢れさせる小さな炎の中に、大人になりかけのあの時の私がいる。


ふじみ野、グリーンローズ・フラ [ブレンド・プロダクツ]

我ながら本当にミーハーだなあと思うことがある。

映画「フラ・ガール」は私の生まれ故郷の近く、幼い頃連れられて行き、子供心にも「なんだ、これは!」と思った記憶のある常磐ハワイアンセンターの話だというので観てみたにすぎない。

ところが松雪泰子の踊るフラに一目ぼれしてしまった。
そしてひとつひとつの所作にも手話の様な意味があることを知ってどうしてもフラを習いたくなった。

そんな私に我がクリニック内でも数人が同調してくれて、善は急げ。
先生への伝のあるスタッフがさっそく派遣を取り付けてくれ、我がクリニックのフラダンスチームが誕生した。

目標は年末のクリニック忘年会である。
毎年スタッフが色々なチームを組み、工夫を凝らした宴会芸を披露して、優勝チームは院長からおいしいお寿司をご馳走してもらえる、という他愛の無いコンクール形式が組み込まれる会だが、これが妙に盛り上がり楽しい。
今年は新生フラ・チームがお寿司よ!と皆の鼻息が荒い。

何しろ、助産師、ナース、厨房スタッフ、ヘルパー、セラピストとクリニックでそれぞれ勤務時間の違う業務をこなしながらの練習である。
全員で集まれる練習は月2回がやっとだ。
それでも最初フラの「フ」の字も知らなかったスタッフ達が、3ヶ月でどうにか1曲を踊り通せるまでになったのは、それぞれが負けず嫌いで家でかなりの独練を積んだからだろう。
チームの中で2番目に高齢(?)な私は足と手がばらばらで、若いスタッフについていくだけで汗だくだ。

フラには不思議なヒーリング感がある。
クラシック・バレエのストイックさ、フラメンコの熱さとは違って、ゆっくりとしたリズムならもちろん、4拍子に貫かれた早いテンポの曲でも、踊っていると心にゆったりとしたハワイのすがすがしい風が吹き抜けるような気がする。
その情景を皆の心に刻んでもらいたくて、練習場にはいつもデフューザーで香りを拡散させる。
いろいろな香りを試した結果、私の中では今のところヴィアロームの「トロピカル」が一番!という結論に達している。
あまりにもベタだなあと思うが、シトラスとスパイスのブレンドは甘やかな南国を彷彿とさせ、手足の所作も優雅に変える気がする。ネリーさんの命名、してやったりというところだ。

認知症の父の受診が終わると高速を飛ばしても夕方の渋滞につかまり、練習場であるふじみ野に着くのは開始時間をかなり回ってしまう。
父の病状に気落ちしてとても皆の前で笑うことなどとてもできそうにない。
今日は休んでしまおうと思いながらハンドルを握る。
家に帰るには高速を下りてその練習場の前を通らねばならない。
練習場の窓に明かりが点いているのを見たら、自然にハンドルがパーキングのほうへ切れた。

その日はマキ先生とミキミ先生がレッスンの最後にご自分達の踊りを披露してくださるという。
二人の先生の踊りは、寒くて殺風景な体育館の中にあり、しかしそこがきらめく光に溢れたポリネシアの浜辺であるかのような錯覚を私たちに与えるほど幸福感に溢れていて、思わず涙ぐみそうになる。
いつの間にかさっきまで私の胸の大半を占めていた不安や苛立ちは消えて、フラへの憧れとおおらかな愛情に全身が包まれるのを感じる。

私たちの踊る曲は「Green Rose Hula」。
大いなる愛の賛歌だと教わる。
いつかこの曲にぴったりのオイルの香りを探そうと思う。





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